……………


一台のシルバーの自動車は見た事もない街路を駆け抜ける。

外はみるみるうちに暗くなり、ライトをつけないと走れない程だ。



「すみません、これからどこへ向かうんですか?」

「私達の本部よ!もうっすーっごく楽しいイベントが始まるんだから!」


助手席に座っているビッキーが嬉しそうに後部座席に座っているエマと雨宮を見る。


「ビッキー、危ないわよ。ちゃんと座ってなさい」

「はーい!」


運転しているサラに注意され、彼女はひねくれる様子もなく前を向いて座り直す。


「その『始まる』とは何ですか?僕達、何も聞かされてないのですが」

「エマちゃんが男の人を怖いと思わないようにする為のトレーニングよ!
今日で大人の階段を3段飛ばしくらいの勢いで登っちゃうんだから!」

「大人のかい…!?待ってください、それは高校生に許されるイベントなんですか?彼女はまだ…」

「大丈夫よ、雨宮君。エマちゃんの貞操はちゃんと私達が守ってあげるから」

「て…貞操って…」


言葉を聞き入れた雨宮の顔は不安そのもの。

そしてその隣で何もわかっておらず、目をパチクリさせているエマ。

バックミラーにそのふたりの顔が映って、サラは小さく笑った。
























「着いたよ!さ、降りて降りて!」



車を走らせて30分。

ようやく目的地のウィンディラン本部へ到着したようだ。

話には聞いていたが、思ったよりも立派で大きな建物。

いつも七音に振り回されているジムさん達。

テレビ等、メディアで見ている限り結構な有名人であるが、プライベートでしか交流がなく、実際の仕事現場を目にしたのはこれが初めてだった。

人が良く、割と呼んだらすぐに来てくれる人達だからとても身近に感じていたが、実際は思っている以上に凄い人達なのかもしれない、

そう感じた。

真っ先にシートベルトを外して車を降りたのはビッキーで、彼女はエマを引きずるように車から降ろした。


「あのっ…ここ…」

「大丈夫大丈夫!さ、行こっ!」


門の前に立ってみたが、立派な門という印象だけで特に変わった様子はない。

これから何が始まるというのだろうか。



「さ、心の準備はいい!?エマちゃん!」

「…?」

雨宮「聞こえてないですよ」



「それじゃ!扉、オープンッ!!」




ガチャン!


ギギギギギギ…!



大きな扉が開き、中から眩い光がっ…


これは…!?






「「いらっしゃいませ!」」




エマ「……ッ…!」

雨宮「…なっ…!?」

ビッキー「キャー!かっこいいー!!!」

サラ「フフッ」



扉の向こうには飾り付けられたキラキラの室内が。

そしてスーツ等、正装した男性達の姿が見えてきた。


「ハァーイ、いらっしゃいませ!ようこそホストクラブ『Fender Kiss』へ!

当クラブNo.1ホスト、NAOTOでーす☆」

「No.2のRICKYです!趣味は猫のノミ取りです」

「No.3のKANADEですぅ。好きなキャラクターはミッフィーちゃんだよぉ」

「熱血担当、KYOSUKEっす!」

「あ、彼はウチのお父さん、CLOUDYね!」

「イケメン担当、BOBBYさっ☆」

「ダンディ担当、NIGELだ」

「ジミーです」



*.。:*+゜☆゜+*:.。.*:+☆.。:*+゜゜+*:.。.★:.。.

「「どうぞ心ゆくまでお楽しみください!」」

*.。:*+゜☆゜+*:.。.*:+☆.。:*+゜゜+*:.。.★:.。.










「「…………。」」




開いた口が塞がらない雨宮。

エマは驚いて、いつの間にか背の高いサラの後ろに隠れてしまう。



「あのっ…何なんですか?これ…」

「見ての通りホストクラブよー!
ウチらの男達って、中身は置いといて顔はまぁまぁなメンバーが揃ってるじゃない!?(一匹を除いて)
一回やらせてみたかったんだよね!ホストクラブ(^O^)」


テンションの高いビッキーに、ズレた眼鏡を戻す動作すら雨宮は忘れてしまっている。


「それはっ…見ればわかります。
今日はエマの男性恐怖症を克服する企画が行われる予定だったのでしょう?それがこれなんですか?」

「ホストクラブって、言うなれば男女の憩いの場みたいなものじゃない?
エマちゃんもそういう大人の馴れ初めを経験すれば、男と喋る事なんてチョロいって事に気づくんじゃないかしら」

「…………。」


なんとも艶っぽく笑う大人の金髪お姉さんに固まってしまう。

彼の答えはもちろん…


「な…何を考えているのですか、貴方達は!!
先程もお話した通り彼女はまだ17です!ホストクラブの入館許可は18歳以上です!」

「お遊びのクラブなんだから、歳なんて関係ないよ!雨宮君!」

「いや、いけません!僕は認めません!エマ、帰るぞ!」

「ッ…」

「そんな怖い顔したら彼女もビックリするでしょ。貴方だって一応男なんだから」


彼の気迫に言葉はわからなくてもサラの後ろに必死に隠れるエマ。

隠れる彼女の頭を優しく撫でる。


「ッ…わかりました。とりあえず僕達は帰ります。
他の方々で楽しむ分には十分構いませ…」


「あーれー?雨宮君、もしかして自分は関係ないと思ってるぅ?」

「…はい?」



突然意味深な言葉を投げかけ、ビッキーが彼の周りをグルグル回り始める。

一体なんなんだ……ん?


前に立っているサラが、唐突にゆっくりと手を振り上げた。

それは僕には何かの合図の前兆にしか見えなくて…












「やりなさい」









「…えっ!?ちょ!何ですか!?アアアアアッ!!」


あっという間にホスト軍団が雨宮に群がった。


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