11


……………

こうしてウィンディラン本部で始まった、なんちゃってホストクラブ「Fender Kiss」

とりあえずサラとビッキーは怯えるエマをテーブルの中心席に座らせる。

そして派手な衣装に身を包んだ男性達へ彼女を取り囲んで座るように指示。


「あ…あのっ…」

「大丈夫大丈夫、エマちゃん!」

「それじゃ手始めに。エマちゃんはあの音楽ヤンキーだけには免疫があるみたいだから、NAOTOが彼女の右に座りなさい」

「本当に!?僕が隣に座っちゃっていいの!?イエーイ☆」

ビッキー「そして左はジミー、アンタよ!七音君の至らない行動を発見次第、すぐに止める係!」

ジミー「行動を止める係が必要なら、そんな危険人物を隣に配置するなよな…。ま、その係は他の連中には任せられそうにないし俺がやるか」

「アンタだったら大した男とは見られないだろうから案外平気だったりして!」

「うるさい」


とりあえず、エマの隣に男達を座らせる。

紫色のいかにもホスト感溢れるスーツを着たNAOTOを右側に。

黒のスーツを着たジミーは左側に。

そしてそれを囲うように他のメンバーが適当に並んで座った。


「エマちゃん、よろしく」

「…ッ…!」


とりあえず握手をしようと手を差し出したジミーだが、エマは驚いてNAOTO側に寄ってしまう。


「あのっ……わっ…わた…し…///」


ジミー「ほらぁ!ビッキー見てみろ!俺はやっぱり大した男に見られたぞ!よっしゃ!」

NAOTO「うわー…ジョニーさん怖がられて喜んでる。引くわー…」

「ジミーだ、あ、間違った。ジムだ」




「よし。じゃスタートという事ですし。まず最初に乾杯でもしましょうか」


そこでナンバー2のRICKYが席を立ち、冷蔵庫からオレンジジュースのペットボトルを持ってきた。


ナイジェル「ジュースで乾杯なんて盛り上がらねーな。酒はねーのか?」

リッキー「今日は大半未成年なんですからこれで我慢してください。バヤリース美味しいですよ」

サラ「物足りないわね。リッキー、冷蔵庫に私の名前が書いてあるボトルがあったでしょ?持ってきて」

リッキー「話聞いてました?この儚げな少女にボジョレーを飲ませる気ですか、貴方は」

サラ「バヤリース味だから大丈夫よ」

リッキー「大丈夫ではありません」

彼はコップを並べ、ひとつずつ丁寧にオレンジジュースを注いでいく。


「それじゃ!エマちゃんの男性恐怖症克服と、今後の健やかな成長を願って、カンパーイ!」

「「カンパーイ!」」


ノリノリの奴もいればそうではない奴もいる中、12人は盛大に乾杯をした。

ホストクラブ「Fender Kiss」の本格始動だ。


ジュースを一気に飲み終えたビッキーは豪快に口元を手で拭い、早速ジミーを人差し指でさす。


「それじゃ、エマちゃんを男に少しずつ馴れさせる事から始めなきゃね!ジョージー、とりあえず何か質問をしなさい!」

「ジムだ。あぁ、そうだな…」

「くれぐれも『スリーサイズいくつ?』とか『おさわりOK?』など、行き過ぎた質問はしないように!」

「そんな質問するわけないだろ!そうだな、じゃぁ…」


携帯を開き文字を打ち込み始める噛ませ犬ホストのジミー。




『ェマたん、ドコならおさわり〇к!?』




ビッキー「言ったそばからナァ二質問しとんじゃ、コルァアッ!」

ジミー「ちょっ!俺じゃねーよ!七音、いきなりなんて事訊いてんだ!?」

美空「えー?こんなお店だったらこれは挨拶でしょ?」

ジミー「店じゃねぇ!あぁごめんな、エマちゃん。ビックリしただろ?」

「…ヒャッ!」


ジミー「それでも『おさわり〇к? 』とか訊いてくる奴の後ろに隠れるんだ…。まぁいい」



『エマちゃん、歳いくつ?』





ピーッ!





「…え?」


ジミーがようやく質問をした途端、部屋に鳴り響いたのは大きな笛の音。

それはサラが吹いたホイッスルの音だった。


無言のまま、差し出されたのは…



「イエローカード」

「え!?なんで?」

「初対面の女性にいきなり年齢を訊くなんてセクハラ以外の何ものでもないわよ。恥を知りなさい」

「はぁっ!?」


イエローカードをおでこに貼られ、次は退場と忠告される。

ったく、容赦ないな。

とりあえず、次はもう少し考えて訊かないとな。

うーん。

そうだなぁ…


悩んだ挙げ句、ジミーは再び携帯を打ち出した。


『趣味は何?』





ピ――――――ッ!!




ジミー「え、なんでぇ!?」


第2の警笛が鳴り、ジムは思わずサラの顔を見た。

またも無言のまま取り出されたのは


2枚目のイエローカードだ。


「だからなんで!?趣味を訊いただけじゃん!どこがダメなんだよ!?」

「初対面の女性のプライベートを覗こうなんて、セクハラ以外の何ものでもないわよ。恥を知りなさい」

「いくらなんでもガード固すぎるだろ!じゃぁ何なら訊いていいんだよ!?」

「色々あるじゃない。『元気ですか?』『はい、元気です』とか」

「なんで小学生の健康観察的な質問しか許されねんだ!馬鹿か、お前は!」

美空「はい、元気です!」

「お前には訊いとらんわ!」


ベタッと2枚目のイエローカードをおでこに貼られ、大した活躍もなくジミーは退場となった。


「全く。女心もわからないようじゃ、いつまで経ってもモテ期なんて来ないわよ。

それじゃ次は…誰にしようか…」


サラは周りを見回し、ある2人組が目に留まった。


「男っぽくない顔つきの人なら案外平気なんじゃない?」

「そうね。じゃぁリッキーと雪之原君、行ってみる?」


美空「え!?僕まだ脱落になってないじゃん!」

「2人1組。要するに連帯責任よ。ジミーが退場になった時点で貴方も負け組だから。
貴方はジミーと仲良く隅っこで泣きはらしてなさい」

「えー、そんなー!もう終わりぃ!?」


部屋の隅に追いやられた泣きはらし組のジミーとNAOTO。

それに入れ替わってエマの隣に座ったのは、当クラブトップクラスのイケメンコンビ。

右側白のスーツがKANADE、左側青のスーツがRICKYだ。


「エマちゃん、よろしくね」

「よろしくぅ」


「……ッ…//////!」



ふたりが隣に来た途端、眩しいくらいのキラキラオーラが彼女を襲う。

右を向いても左を向いても、広がるのは自分とは無縁の美しい世界。

こんな人達にここまで近寄られた事がなくて、どうしたらいいのかわからなくなってしまう。


「……あがッ…は……アッ…////」



耳まで真っ赤になるエマだが、それに気づかず早速ふたりは話題を振り始めた。


『俺達、動物が好きなんだ。俺は猫が好きで反対側のユキ君はウサギが好き。エマちゃんは好きな動物とかいる?』

「……ッ…あうっ…////…あ…///」


リッキーが見せた携帯の画面にも、ソワソワして震えてしまっている。


リッキー「あは。ちょっと動物の話はいきなりすぎましたかね?」

サラ「いいわよ。女の子って大抵動物好きだし」

ジミー「なんでソイツはあっさりOKなの!?贔屓だろ、贔屓!」


緊張している様子のエマに雪之原もヘラッと笑い、やんわりと携帯を打ち込み始める。


『エマっち、ウサギみたいで可愛いよぉ(^O^)檻に入れて一日中ニンジンスティック食べさせたぁい』

サラ「あら、面白い発想ね」

ジミー「なんでだよ!?明らかに俺よりアウトだろ!サディストの発言だよ、今の!」





「……ぅ…ぇっ…そのッ////」


「うーん。やっぱりまだ緊張してますね。緊張を解く方法…そうだなぁ…」


RICKY『人っていう字を手に3回書いて飲み込むと緊張しないって言うよ。ちょっとマッキー持ってくるね』

ジミー「大体合ってるけどマッキーで書くな!指で書くんだよ!」

KANADE『あ、じゃぁ書いたら僕が食べてあげるよぉ。ウサギの君はニンジンスティックしか食べられないからねぇ』

ジミー「お前が食ったら意味ねーから!可愛い顔してS発言はやめろ!」




あーもう!ダメだ、ダメだ!!


そう言って立ち上がったのはもちろん脱落ルームに追いやられたジミーだ。

彼は勢いよく床から立ち上がり、KANADEとRICKYをソファーから引き離す。


「え、何するんですか!?」

「お前らには見えないのか!?エマちゃん、怯え過ぎて涙でオレンジジュースの量が倍に増えてるだろ!」

「ええ〜。僕はバニーガールの衣装を着せて檻に入れてニンジンを食べさせたいと、ちょこっと思っただけだよぉ」

「ヘラヘラ笑いながらそんな事考えてるのか!?ちょっとは自分のイメージ考えろ!」




こうしてWイケメンコンビもあっという間に退却させられ、再びエマの両脇は空いている状態になった。



ビッキー「リッキーの登場シーンをカットさせるなんて、アイツ後で終身刑ね!

さて…じゃぁ次は誰にしようかなー」



自称イケメン担当「ビッキーちぉああああん☆僕が君の隣で夜な夜なボジョレーを注いでやりた…」




ガシャァァァァン!



「ひゃっ!」


物凄いグーパンチの音。

そこで丁度空いているエマの左側に、殴り飛ばされたBOBBYがすっぽりと収まった。


「エマちゃん大丈夫!?怖いね、こんなのいきなり飛んで来て!」

ボビー「いやっ…君に飛ばされたんだけれども…」

「まいいや、コイツで!じゃぁあと右側は日晴君座りなよ!」

日晴「え、俺っすか?いいっすけどボビーさんとセットっすか…」

「熱血担当の割に君全然喋らないじゃん!ボビーがウザいから、皆君に注目してくれるよ!」

ボビー「さりげに失礼だね、君達ふたり共」


という訳で3ターン目、3度目の正直として召還されたのはBOBBYとKYOS…




サラ「レッドカード」



BOBBY「えええ!?なんでだい!まだ何もしてないじゃないか!あっ!もしかして僕のホストタイツが美しすぎるから嫉妬してるのかい!?」

サラ「いや、なんか顔がイライラするから」

ジミー「俺以上に酷評すぎるだろ!何?ボビーは存在がレッドカードなのか!?」



「…ッ…?」


そこでビッキーはエマのある異変に気がついた。


「あれ?エマちゃん、もしかして…ボビーは大丈夫なの?」


全員「「…え?」」


そう言われてみると彼女は日晴を避けるように、ボビー側に寄って座っているのだ。

この光景…見た事ある。

もしかして…


咄嗟にビッキーは美空に向かって手招きをした。


「NAOTO君、来て!」

「え!ビッキーちゃんに誘われちゃうなんてドキドキするなぁ」

「いいから!」


言われた通りやってきたNAOTOを、試しにBOBBYと入れ替わる形でソファーに座らせてみた。

エマの反応は…


「……?」


特に何も変わらない。

もう一度同じ場所にBOBBYを置いても…


「……?」


反応はない。

試しに同じ場所にRICKYを置いてみると…


「ヒャァッ…!/////…ご…ごめんな…さいッ…////」



おやおやおや?


BOBBYを置き…
「……?」

NAOTOを置き…
「……?」

RICKYを置き…
「ヤァッ!///」

NAOTOを置き…
「……?」

ジミーを置き…
「ヒャァッ!///」

BOBBYを置き…
「……?」

間を置き…
「………。」

KANADEを置き…
「キャッ///!」

NAOTOを置き…
「……?」



おやおやおやおやおやおや?





「つまりエマちゃんにとって、ボビーと七音は同じ顔に見えてるって事ね」








「……………ッ…!這這這這這這這煤v



サラの現実味を帯びた一言で、一気にNAOTOの顔色が真っ青になる。


「そ…そんなぁっ」



バサッ。

倒れるNAOTOを後ろからCLOUDYがタイミングよく支えた。

彼は懐から貧血の薬を取り出し、にこりと笑って部屋の外へ出る。



「「…………。」」


あのNAOTOが…血が足りなくなって気絶した…。


あの何をやっても何を言っても全く通用しないNAOTOが…ものの数秒で気を失った。



初めて目の当たりにする光景に一同の目が

「・ ・」

になる。



「だから君達しれっと失礼だろう!もしかしたら僕が七音君に似て見えているのかもしれないというのに!」

リッキー「それもそれでショックですよ」




サラはゴホンッと咳払いをして、改めてBOBBYの顔を見る。


「でもこれは男に慣れる絶好のチャンスよ!BOBBY、とりあえずなんでもいいから会話しなさい」

「オッケイ☆サラちゃん!」


ついにサラからBOBBYに活動許可が下りた。

早速指が何本にも見えるスピードで、彼は携帯を打ち込み始める。


『僕の美しい金色全身タイツと顔のイケメンさに恐怖すら忘れたんだね!さすがレディわかっているよ!』


「………?」


その文字を読んでもエマは目をパチクリとさせているだけ。

他の男性と接した時のように怖がっている気配はない。


『いいよいいよ☆僕の美しさに酔いしれたまえ!』



ジミー「おいおい、本当に大丈夫なのか」

ビッキー「脱落者は黙ってなさい!」

ジミー「…はい」



『さて、僕の美しさが十分伝わった所で、僕のファンクラブ入会方法についてなんだけど』



「……へ…な…」


「ん?なんだい?」



「へんな…かお…」





「…………ッ!!!!!!!這這這這這這這煤v


彼女の極自然に出てきたその一言で、一気にBOBBYの顔が紫色に変色する。


「そ…そんなぁっ」



バサッ。

倒れるBOBBYを後ろからCLOUDYがタイミングよく支えた。

彼は懐からBOBBYの保険証を取り出し、にこりと笑って部屋の外へ出る。



「「…………。」」


あのBOBBYが…ストレスとショックで気絶した…。


あの何をやっても何を言っても全く死なないBOBBYが…一瞬で気を失い病院に運ばれた。



初めて目の当たりにする光景に一同の目が

「〈〇〉〈〇〉カッ」

になる。





ビッキー「きゃぁぁっ!エマちゃん凄いっ!ついにBOBBYを倒したぁ!」

サラ「やっぱり無垢は無敵なのね!よくやってくれたわ!」


日晴「目的の趣旨が変わってるっすよ。てか、あれ?もしかしてBOBBYさんが連れて行かれたって事は…」






ヒョイッ!


まるで子犬みたいに、後ろからジミーに抱きかかえられるKYOSUKE。

そのまま向かうのは…


「エエエッ!ちょっと待ってくださいよ!俺まだエマさんに一言も喋ってないすよ!?おかしいじゃないっすか!ちょっと!ねぇ、ちょっと!」


脱落スペースへ直行。

抱えられてキャンキャン吠えているワンコを見ながら、ビッキーとサラはまったりした顔を見せる。


「相変わらず、外見の割にパンチ弱いよね」

「いいんじゃない?可愛いじゃない、ミニチュアダックスみたいで」


- 480 -

*PREV  NEXT#


ページ: