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……………
ふたりがやってきたのは、ビッキーによく荷物持ちとしてお供させられる大型ショッピングモールだ。
家具家電、食料品、衣類、欲しい物は大抵この場所で調達出来る生活にかかせないスポット。
本日は日曜日という事もあり、来客も普段より多い気がする。
「じゃ!早速ジョセフィーヌの誕生日プレゼントから買いに行こうか!」
(来たっ。どうしよう…えっと…)
「あぁ…俺のは後からでいいよ。荷物になるし。先に晩ご飯の買い出しをしよう」
「そう?じゃ、そうしよ!」
彼氏の提案に特に気にする様子もなく、ビッキーは食料品売り場に直行する。
とりあえず一時助かった。
早速買い物カートを押して、本日ふたりだけの晩ご飯の材料の買い出しだ。
「たこ焼きとお好み焼き、どっちがいい?」
「なんで関西の食べ物限定なんだ?どっちでもいいけど…」
「じゃ、たこ焼きね!くいだおれ太郎のたこ焼き」
「くいだおれ太郎をたこ焼きに入れるな。たこを入れろ」
マズいな。こうしている間にも俺のタイムリミットは刻々と近づいている。
ビッキーがたこを選んでいる間に、適当に周りからそれっぽい物を…!
ジムは辺りを見渡し、何か良さげな商品を探す。
何か…良い物っ…来てくれ!
なんでもいいから!
「あっ!ビッキーちゃんだ!やほーいっ!」
ジム「…………。」
買い物カゴをブインブイン振り回して、店内とは思えないスピードでこちらまで走ってくる男。
見覚えのあるライトグリーンの髪色。
(いやいや、なんでもいいとは言ったけどッ!!)
もう名前を紹介する事さえ面倒臭い美空七音だ。
見知らぬオッサンにカゴがぶつかりそうになりながらもそれを華麗に避け、そして俺達の元までやってきた。
「あ!ジョセフィーヌもいたんだ!デート?」
ジム「なんでお前も『ジョセフィーヌ』なんだ。見ればわかるだろ、買い物だ」
「ビッキーちゃん、今日は超絶に可愛いね!僕と2階ゲーセンでプリクラ撮らない?」
ジム「おい。話振っておいて無視か」
しかし今日の美空はなんだかどこか物足りない。
いつもセットで隣にいる雨宮君の姿がないからだ。
美空がカゴを持ってひとりで買い物なんて珍しい光景だな。
「今日はひとりなの?雨宮君は?」
「事務所だよ。皆で学校の宿題やってたんだけど面倒になっちゃったから、ミヤ君と僕のノートをすり替えて、この辺でナンパでもしようかなって思って!」
氏名:雨宮 律
と書いてあるノートを振り回し、そして手荒くそれをバッグに戻す。
今頃、雨宮君は七音のノートとは知らずに必死に問題を解いているのだろう。可哀相に。
「で!?ジムさんどうなの?」
心の中で手を合わせていると、そこでようやく美空はジムに話しかけてきた。
「は?どうって何がだ?」
「決まってるじゃん!今日誕生日だからお金払ってエッ……ムゴッ!」
「わぁっ!美空君、あっちに玉ねぎが売ってるよー、スッゲー ・∀・!見に行こうぜ!」
美空を脇に抱えて超特急のごとく走り出すジム。
ビッキー「…アイツ、そんなに玉ねぎ好きだったっけ?」
・
・
・
「ゲホッゲホッ!もう、苦しいじゃん!何すんの!?」
「馬鹿かお前は!お前の作戦まんま実行するとか思ってんの?やるわけないだろ!そんな最低な要求!」
「あ、そっか!恋人だから別にお金払わなくてもヤらせてもらえるもんね」
「だから!公共の場でそういうデリカシーのない事を言うな!」
ひとりの男性が男子高校生を小脇に抱えて玉ねぎコーナーの前で喚いている光景は、周りの客からすれば不審者以外の何者でもない。
少しは周りの目も気にしたのか辺りをキョロキョロ見ていると、美空は抱えられたまま上目遣いで訊いてきた。
「…で?プレゼントは決まったの?」
「いや…まだだ」
「ふーん。じゃ、もうコレでいいんじゃない?」
「誕生日プレゼントに玉ねぎ一個買ってくれなんて逆に失礼だろ。超ド貧乏カップルじゃん」
「ジムさんも優柔不断だなぁ。好きな人から強請られれば、ビッキーちゃんだって何でも嬉しいに決まってるって!」
ヒョイッと腕からすり抜けて離れた美空。
「そんなもんか?」
「そんなもんだって!彼女にとってはこのたまねぎ一個でも高級なお皿一枚でも、
『買ってあげられた』って事実が大事なんだから、どっちも同じように嬉しい事だと思うよ?」
「んん…」
「ま!せいぜい頑張ってよ!じゃ、僕はナンパで忙しいからこの辺で失礼しまーす」
わざとらしく敬礼をして立ち去る調子のいい男子高校生。
アイツもたまには良い事言うんだな。
その言い方は超生意気だけど。
アナウンス『ピンポンパンポーン。
迷子のお知らせを致します。
日本からお越しのミソラ ナオト君。
日本からお越しのミソラ ナオト君。
お連れ様がお待ちで御座います』
…雨宮君にサボりがバレたな。
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