……………


「あー!楽しかったね、ジョセフィーヌ!」

あぁ……そうだな…



ヤバい。

ますます何をお願いすればいいかわからなくなってきた…

何ならいいんだ?

何をお願いすれば…変に思われないんだ?

だんだんコイツの金銭感覚がおかしいのか、俺の財布が寒い事に今更気づいたのかわからなくなってきた。



「じゃ!やっとだけどプレゼント買いに…」


「あっ。ビッキーじゃないですか」

「……ッ…」


聞き覚えのある高めの男性の声。

振り返ると、食品売り場から一組の男女がこちらに向かって歩いて来ていた。


「キャァ!リッキー!こんな所で巡り会えるなんてぇ!!!」

サラ「私もいるけど」

「アンタはどうでもいい!」

リッキー「あ、ジョセフィーヌ。貴方もいたんですね」

「だからなんでお前も『ジョセフィーヌ』なんだ」


現れたのは同じく買い物袋を持ったリッキーとサラだった。

周りの客が二度見してしまう程の美男美女カップルに見られがちだが、こちらは別に付き合っているわけではない。


「何してるの?」

「今日は俺とサラが買い出しの当番で、晩ご飯の材料を買いに来てたんです。ふたりは今日はいらないんでしたよね?」

「ごめんね、リッキー!一緒に食べられなくて!今度ふたりだけでランチに行こうね」

「お前…隣に彼氏がいるのに」


相変わらずリッキーへの好意に、冗談とわかっていてもなんとなく面白くなさそうなジムの表情。


「あっ」

そこでその顔を見るなり、リッキーはこそこそと彼を女性達から少し離れた場所へ連れ出した。


「で?誕生日プレゼントは決まったんですか?」

「いや…まだ…」

「まだ決まってないんですか?そろそろ買いに行く時間でしょう?」

「それが…上限が200円なんだ…」

「上限200円!?少なっ!うまい棒20本しか買えないじゃないですか!」



隠れるように話している男性陣の背中を見て、ビッキーは不思議そうな顔でサラに話しかける。


「何話してるのかな?あのふたり」

「男がコソコソしてんだからエロい話でもしてんでしょ。あ、それより今日はジョセフィーヌの誕生日なんじゃないの?プレゼント買ってあげた?」


「あ、そうそう!それがちょっと長引いちゃったの!ねぇ、ジョセフィーヌ!」


リッキーと話していたジムの背中を無理やり引っ張り出し、強引にこちらを向かせたビッキー。


「イッテ!何すんだ!」

「早くしないと日が暮れちゃうよ!プレゼント買いに行こう!」

「あっ…そうだなっ…えっと…」


慌ててリッキーに目線を向けて助けを求める。



えっ。そんな…一年に一度のプレゼントを俺が勝手に決めるなんて無理ですよ!

どうしよう。

えっと…


リッキーは慌てて次にサラの元へ向かい、ビッキーに聞こえない程度に小声で話し始める。


「サラ…あの…女性が恋人に一番プレゼントしたいものって何ですか?」

「は?何よ突然。知らないわよ。人それぞれでしょ、そんなの」

「そんな事言わないで。じゃぁ、サラがあげたい物は何ですか?」

「恋人いないからわかんない」

「じゃ…その…恋人が俺と仮定してッ…///」

「…………。」




なんかリッキーが必死にサラと交渉してるな…

思い切って女性の意見を聞き出そうって事か。



「ちょっと?ジョセフィーヌ聞いてる?」

「あぁっ……あ、ビッキー。朝から思ってたけど、今日は一段と可愛いな…///」

「…ッ…!いきなり何を言い出すの!?///」


時間稼ぎとはいえ、焦れば俺も口からこんな言葉が出るのか。

少しこっぱずかしいが、ビッキーも照れてワタワタしている。

今のうちに…!早く!リッキー…

あ、サラもアイツに何か耳打ちを…


…………あれ?


リッキー…泣いてる?

あっ。地面に跪いた。

どうしたんだ、一体!


「ビ…ビッキーちゃん。…ちょっとタイム」

「かわっ…可愛いなんて…可愛いなんていつもの事でしょ///何よ今更…ぶつぶつぶつ…」

「………。(聞いていない)」



ジムはとりあえず余韻に浸っているビッキーをそっとして、問題のサラに話しかけた。


「おい、サラ。リッキーと何話したんだ?」

「え?何って…俺にプレゼントをするなら何を渡したいかっていきなり訊かれて」

「あぁっ…で?なんて答えたんだ!?」

「ふでばこ」


「えっ…ふでばこ?」





サラのクールな表情は一変。

急に頬を染め、荷物を持っていない左手をあてて気持ち悪い笑みを浮かべた。


「だってリッキー、ふでばことか凄く似合うじゃない?三角定規とかコンパスとか。そしたら突然泣き出しちゃって」


※サラのイメージ
ふでばこ=小学生の持ち物
(断じてペンケースではなくふでばこ)


ジム「お前、いい加減コイツを子ども扱いするのやめてあげろよ!
本当は内緒にしてくれって言われてるけどな!
コイツしょっちゅう俺の部屋に来ては隅っこでずっと泣いてるから、なんか俺が泣かしたみたいな気分になって気の毒なんだよ!」

「冗談に決まってるでしょ。でも反応が面白いからやめられなくて。
隅っこで泣いてるなんてますます可愛くて良いじゃない」

「飼い主の異常を嗅ぎつけて、知らない猫が次々と俺の部屋に入ってくるんだよ!」





「もうっ!(はぁと)今日ならジョセフィーヌに何でも買ってあげる!(はぁとはぁと)
ねぇ、何が欲しい?何が欲しい?何が欲しい!??」


気がつくとデレモードのスイッチが入ったビッキーが背後に。

先程の素直な「可愛い」が余程嬉しかったのか、周りの声が聞こえておらず、問答無用でジムの背中を再び強く引っ張った。


「痛い!痛い!痛い!」

サラ「そういえばアンタ昔、グラビアアイドルのボリー・T・マサラーニャ・キモスのヌード写真集欲しがってたじゃない。あれは?」

「サラッ!いつの話してんだ!?やめろ!」

ビッキー「え?グラ…何?」

「いやっ!違う!聞くな!」


〜♪


「…あ。俺の携帯だ」



From:ナイジェル
添付:なし
件名:RE:RE:RE:RE:RE
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お誕生日おめでとう
プレゼントにお前が欲しがってたボビー送っといたから

END
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ジム「『送っといたから』じゃねーよ!!いるかそんなプレゼント!」


アナウンス『ピンポンパンポーン。

迷子のお知らせを致します。

バイク運転センターからお越しのジョセフィーヌ君。

バイク運転センターからお越しのジョセフィーヌ君。

お連れ様がお待ちで御座います』



「「………。」」



サラ「…ジョセフィーヌ君。お連れのボビー様がお待ちですよ」




「だからジムだっつってんだろーがぁぁ!!!」


ガシッ!


「…ッ!!」


ジムはそれと同時にビッキーの肩を突然ギュッと強く掴んだ。


「ビッキーッ!!」

「…はっ…はい!?////」



普段より気迫が感じられる彼氏に、ますます頬を染めるビッキー。

心臓の鼓動が止まらないっ…!

ダメよッ…////こんな所で!!照←








「きゅるるんにゃんこマカロンケーキを買ってくれ!!!」













ビッキー「……………は…?」







ピンポンパンポーン…


悲しく背後にアナウンス終了を告げる音楽が流れた。


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