……………

一週間後。

久々にアメリカへ帰国する為に飛行機に乗り込む。

日本も居心地が良いけど、やっぱり時々どうしようもなく母国に帰りたくなってしまう。

はぁ…。

日本とアメリカがもう少し近かったらなぁ。


クール便に自分が日本で購入した食料を乗せた。

日本の食べ物は新鮮だし美味しいし綺麗だし、何より安全だ。

食べ物だけだったらアメリカより断然日本の方が好き。

生鮮食品も全部。

バレルさん用に日本で買ったキャベツやニンジン、野菜がたくさん摂取出来るスープの素、魚の缶詰めなども乗せる。

…ちゃんと食べてくれるかな。

あ。お兄ちゃんに東京のお菓子買ってこいって言われてたの忘れてた。

まぁいいや。


色んな思いを胸にアメリカに帰国。

居られるのはたったの2日だけ。

それでも帰ってきたくなっちゃう。

彼と出会ってからは余計にそう思うようになったの。



……………



飛行機で数時間。

ようやくアメリカへ帰ってきた。

空港で預けていた荷物を受け取り、入口付近でタクシーを止める。


「どこまでですか?」

「ウィンディランレース会場までお願いします」


さすがにこんな大荷物を抱えて歩いたり、公共の乗り物には乗りにくい。

お金がかかるけど自分を甘やかしてタクシーに乗り込み、食品とお土産を入れた荷物を乗せた。

まずはお兄ちゃんの所に私物を置きに行かなくちゃ。

今日もウィンディランの本部にお泊まりさせてもらう予定だった。

いつも泊めてもらってるから悪いと思ったが、兄や他の方からも来て欲しいと頼まれ、一日だけ。






*****


ナイジェル『ローラちゃん?来て欲しいな。ここにいるのは気の強い鬼みてーな女ばっかだから癒やしが欲し……イタタタ!』

リッキー『来て欲しいです!ローラさんのお料理美味しかったですし、癒やしが……痛い!痛いですって!』

ボビー『ローラちゅぁーん。そんなに僕に会いたいのかい?いいさ、僕はいつでも胸板を広げる準備は出来ている!

…………。

あれ?なんで僕には何もしないの?え?なんでそんなに僕と距離を置くの?』


ジム『とにかく、男達が癒やしに飢えてるらしいから来てやってくれ。じゃ…待って(グサッ!!』



ツー…ツー…


*****






…あの最後の音はなんだったのかな?


まぁ、また皆さんに会えるのは私も嬉しいし。

それにあそこからバレルさんの家まではそう遠くないから。


タクシーから見える景色は、だんだんと見慣れた建物や自然が並ぶ光景へ変わっていく。












ピンポーン



「皆さん、ご無沙汰しています」

「ローラちゅあああああん!待っていたよ。僕だよ!さぁ、長旅で疲れたろう。僕の胸板に飛び込んでおい…」


ガシッ!

ガシャァァァンッ!


出迎えたボビーは何者かに後頭部を掴まれ、反対側の壁まで投げ飛ばされてしまった。



「いらっしゃーい、ローラさん!来て早々腐った栗まんじゅう見せちゃってごめんね!」

「ローラ。早かったな。さ、入れよ」

投げ飛ばしたビッキーさんに続いてお兄ちゃんも出てきてくれて、中に入るよう催促される。

今、この場所にいるのはこの3人だけのようだ。


「ううん。今はとりあえず荷物を置きに来させてもらっただけだよ。ゆっくりしてて」

「え?ローラさん、来たばっかりなのにまたどこか行っちゃうの?」

「用事を済ませたらすぐにまたお邪魔させて頂きます」


そこでジムの眉が一瞬動いた。

その言葉だけで、兄にはその用事というものが何なのかすぐにわかったらしい。


「『アイツ』の所に行くのか?」

「うん」

「…そっか。……えっと…あのさ…」

「大丈夫だよ。今の時間だから行くの。こんな昼間だったらまだ帰って来ないだろうし」

「んん…」


神妙な顔つきになるジム。

「え?何?誰か会いに行くの??彼氏?」

何もわかっていないビッキーは兄妹の顔を交互に見る。



「わかった。なるべく早く帰ってこいよ」

「これを置いてくるだけだからすぐに帰るよ」


ローラが持っているのは、保冷箱に入っている野菜中心の食料と救急箱。


「え?野菜?動物園に行くの?動物の手当てをするの?」

ますますしつこく訊いてくるビッキー。

止まる事なくよく動くその口を、ジムは後ろから手で塞いだ。


「気をつけてな」

「うん。行ってきます」


優しく微笑む妹に、どうしてもモヤモヤした気持ちが募る。

バレルの事を全く信用していないわけではないが、会わないとわかっていても、もし何かあったらと思うと気が気ではない。

彼女の背中を見送りながら兄は扉を静かに閉めた。



「ムハッ!苦しいっつってんでしょ!?いつまで塞いでんのよ!」

「あぁっ…悪い」


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