6
……………
あの後、私がウィンディランの本部へ戻るとサラさんとナイジェルさんとリッキー君も帰宅していた。
思った以上に帰りが遅くてお兄ちゃんは随分心配してたけど。
その夜は、皆さんと一緒にディナーを食べたりお話ししたり…
いつもここの人達は有名人にもかかわらず優しくて明るくて、一般人の私にも友達のように接してくれる。
楽しい時間を過ごし、バレルさんの事さえ忘れてしまう程。
でもいざ眠る瞬間になると、私は彼の顔を思い出してしまう。
サラさんとビッキーさんに挟まれ、
彼の事を思いながら眠りにつく。
……………
そしてすぐ翌日の夜には日本へ帰る事に。
今回帰国して収穫もあった。
なにより、バレルさんが少しでも私を頼ってくれた。
彼の中でほんのわずかでも他人に頼りたいと思う気持ちがあるとわかった。
だから私は諦めない。
「よし」
家に帰ってすぐに始めたのはノートを開く事。
彼を助けてあげる為に、自分の中で決まりを作るのだ。
・ひとりじゃない事を実感させてあげる為に月に数回メールを送る。(返ってこなくたって構わない)
・毎回めげずに食料品と救急用品を持っていく。
・治療の正しい知識を身に付ける。
次から次へ事細かに文字を連ねていく性質は、彼女の父親譲りだ。
生まれた時からの几帳面な性格。
そして決めた事は必ず実行に移す。
それがローラの主義。
ある日は本屋に立ち寄り、怪我の治療法が詳しく書いてある本を探す。
「んん…。こういう本はいっぱいありすぎてどれを買えばいいかわからないな」
ある日は新鮮な野菜が安くで買える場所を探す為、何件もお店を渡り歩き…
親父「ここの野菜は農薬一切無添加だよ!まぁ、その代わり半分は虫に食べられちゃってるけどね!」
ローラ「出来れば虫には食べられてない物がいいです…」
そしてある時はバレルを思い、雲の漂う空を見上げ…
「あ。虹が出てる」
携帯を取り出し写真におさめる。
これ…バレルさんに送ろうかな。
こんな素敵な写真を見てほっこりしない人はいないよね。
他の人間が見たら「なんて勇敢な人だ」と思うであろう。
あのバレルに虹の画像を添付して送るなんて。
しかし彼女にはそれが普通の感覚。送信する指に全く躊躇が見られない。
とにかく彼女は日本にいながらも出来る限りバレルのサポートが出来るよう、何日も行動を続けた。
これも彼を助ける為。
それだけの思いで手や足、頭を最大限に働かせている。
ブーッ!
ブーッ!
「ん?」
振動が伝わってきたのはポケットの中。
携帯のバイブが鳴っている?
「うそっ…返事?」
バレルから初めて返信が来たかもしれない。
突然の事態に胸が高鳴る。
慌てて携帯を手に取り、メールを確認するが…
『今度いつ帰ってくる?』
別の友人からのメールだった。
…まぁ。そう簡単にはいかないよね。
わかってはいても、若干は肩を落とす。
『また来週帰るよ』
ローラはそのメールにも丁寧に返事を送った。
また来週アメリカに帰国。
荷物をまとめておかなきゃ。
- 502 -
*PREV NEXT#
ページ: