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……………
「あぁ、痛かった」
「ギャァァッッ!!」
こちら草陰の中。
起き上がったボビーから一斉に仲間達全員が離れた。
「どうしたんだい?」
「お前、ヤバいぞ!完全にバイオハザードのキャラクターだ!」
「お、良いねバイオごっこ!格好良くゾンビを蹴散らしてやろう」
「お前がゾンビだろ!」
彼の体は右手にフォーク、頭に木の枝が刺さっている。
「だ…大丈夫なんですか?」
「あぁ、このくらい出刃包丁が全身に刺さってるよりマシだと思えば全然平気だよ!」
「出刃包丁に拘る前にやっぱお前病院行け、頭の」
ジムはそう言いながら、周りを見渡した。
あるのは一面の緑だけ。
人の気配は完全に消えている。
「逃げ足早いなぁ、アイツら」
「よし!じゃぁもう一度探すわよ!」
「待て!」
ジムは走り出そうとしたビッキーの肩を掴み、こちら側へ引き戻した。
「何すんのよ、パレッタ!」
「ジムだ(怒)もうアイツらの事はそっとしといてやれよ」
「はぁ、何言ってんの!?あのサラよ!見ててあげないと絶対どこかでヘマするに決まってるじゃない!」
「ていうか俺ら完璧に邪魔しかしてないし…。本人だって嫌がってんだ。もうサラの好きにしてやれよ」
「……ッ…」
その言葉に、珍しく黙り込むビッキー。
ジムは続けて別の男ふたりにも目を向ける。
「お前らもいいか!そこのタバコと猫ヲタク!」
「ヲタクじゃないです!愛好家です!」
「細かい事は気にするな!いいか、もうサラの事は諦めろ!お前らまだまだ若いんだから!この世に女なんて他にたくさんいる!わかったな?」
呼びかけるジムに対しリッキーはため息をつきながら下を向き、ナイジェルは舌打ちをしてそっぽを向いた。
「ったく、アイツらも小学生とかわらないな」
いらっしゃいまっせ――ッ♪
ドンッ!
「痛っ!」
どこからか甲高い声が聞こえたと同時に、リッキーの背中に何かが激突した。
「ん?」
振り返るとオバサンパーマをかけた見知らぬ小柄な中年女性が立っている。
このおばさんがタックルでもしてきたのかと思ったら、手で叩かれていただけのようだ。
「…誰?」
「あら!男前ねーん!今日は何名様?」
ノリが関西風なおばさんは、人の話も聞かずにその場の人数を数え始めた。
「えっとぉ…1…2……3……」
「聞いてます?貴方、誰ですか?」
「あら、ごめんなさいねぇ!おばちゃん聞いてなかったわ!」
おばさん特有の妙に高いテンションの持ち主。
それと耳を塞ぎたくなる程のキンキン声だ。
「私、この家の家政婦よ♪か・せ・い・ふ!!」
おばさんは人差し指を振りながら名乗った後、何が面白いのか突然ゲラゲラと笑い出した。
「家政婦?」
「そうよぉ!私、この家のNo.1家政婦♪って言ってもひとりしか家政婦いないんだけどね(笑)今日は久しぶりにお嬢様が帰ってきてるから、張り切って仕事してま〜す!」
パーマ頭を振り、手を高く上げてノリノリだ。
そう言われてみればエプロンを身に付けているし、すぐに俺達を客として持て成そうとしてくれたしな。
本物の家政婦と見て間違いなさそうだ。
「あの、実は俺達…」
「あ―――ッ!!」
リッキーの台詞を無視し、彼女はある男の方向へ全速力で突進。
「ナイジェル!」
「え、何…ふぎゃっ!」
ジムの声も虚しく、ズドン!という大きな音と共に、彼は体重のありそうな彼女の体に押し潰されてしまった。
「私、この人超タイプッ!このだるっぽいしょぼくれた感じが母性本能を刺激するわ〜!」
もちろん、潰された当の本人は一発KO。
元々痩せ気味の体つきだから尚更だ。
彼女の腹から逃れられた右手がピクピクと悲しげに動いている。
「だからあの…人の話聞いてます?」
「あら!全くおばちゃんはダメね〜!テヘッ☆」
「「…………。」」
ハイテンションについていけず一瞬の静寂がおとずれた後、ジムがとりあえず口を開いた。
「あ…俺達、そのお嬢様の仕事の仲間なんですよ」
「あらそうだったの!ヤダわ、私ったらてっきりお見合い相手の会社の方だと思ってたわ!キャハハ!」
ジム「将来のお前みたいだな」
ビッキー「うるさい」
「でもお嬢様のお友達なのね!なら丁度良いわ!中で何か食べていってよ♪」
「良いんですかぁぁッ!!!?」
「食らいつきすぎですよ、ボビー」
興奮気味で話していたかと思うと急に家政婦は小さくなり、女子のようにもじもじしながら両手の人差し指同士を合わせ始める。
「それに…この人とも是非お話がしたいわ。これが縁で…あーなってそーなって……ゴールイン!」
「するかぁッ!!」
潰されていた彼はようやくムクリと起き上がった。
そんなナイジェルの腕に豪快に抱きつく家政婦。
「彼もこう言ってる事だし、早速行きましょう!」
「『するかぁ!』しか言ってねーだろうが!」
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