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……………
「フンフフン♪」
キッチンにリズムよく野菜を切る音が響く。
昨年、あの大企業の御曹司ジョン・ヒルと結婚した、新妻(鳥)のエミリー・バタフライだ。
ここは彼の実家近くに新しく建てたふたりの新しい愛の巣(鳥なだけに)
そんなに豪華な家でもないが、それでもふたりで暮らしていくには十分やっていける。
しかし昨日、結婚して初めて私達は夫婦ゲンカをしてしまった。
いや、ケンカというより私が一方的に怒っただけだけど。
でももうほとぼりも冷めたし、そろそろ帰ってくる頃でしょ。
昨日はちょっと怒りすぎちゃったから、今日はお詫びにご馳走を作ってあげたんだ♪
彼の大好物のフライドチキン、ローストターキー、唐揚げ、焼き鳥…
彼の「美味しい」って微笑む姿が頭に浮かんじゃう。
そして私の肩を抱いて唇(クチバシ)に…
きゃぁぁぁぁ☆
あっ、いけない!
翼を動かしすぎて、床が羽根まみれになっちゃった!
ピンポーン!
あ!
ジョンさん、帰ってきた!
エミリーはまな板の上に包丁を置いて玄関へ走った。
「ただいま、エミリー」
そこには予想通り、待っていた旦那の姿。
少し疲れている表情だけど、優しい口調で帰ってきてくれた。
「おかえりなさい、ジョンさん!昨日は怒りすぎちゃってごめんなさい」
「あぁ…」
「今日は貴方の為にご馳走を作ったのよ!来て!」
エミリーに案内されてリビングに入ると、テーブルに豪華な(鳥)料理がたくさん並んでいる。
「美味しそう…」
「でしょ!?貴方の為に頑張って作ったのよ!食べて」
ハンバーガーを食べ、ホットケーキを食べ…お腹が空いていないとはさすがに言えない。
言われた通り椅子に座り、フライドチキンを口にした。
「…うん…美味しい…」
「…ッ////」
彼がゆっくりと落ち着いた口調で微笑むと、エミリーのピンクのほっぺが真っ赤になる。
「ジョンさん…///昨日は怒っちゃってごめんね」
「いや…」
「私…ジョンさんの事大好きっ…」
「僕も…。好き…」
「………ッ…////」
彼の顔に見惚れてしまう。
もう…今日は私、貴方に何をされても…
「僕も…君と仲直りしたくて…プレゼントを…持ってきたんだ…」
「え?プレゼント!?何何?」
彼からの思わぬサプライズプレゼント。
嬉しくって、また翼を羽ばたかせてしまう。
彼からプレゼントなんて…
指輪を貰って以来一度もなかった。
彼も仕事が忙しかったから、そんな余裕なかったんだと思うし。
彼が取り出した手の平サイズの箱に、ワクワクして身を乗り出してしまう。
きっと素敵な物に違いなっ……
パカッ
「…何これ?」
箱から出てきた物は…
何かボタンの付いた怪しい機械。
本当に何かわからなくて、クチバシから素でポロッとその言葉が漏れた。
「呼び出しボタンだ…。これを押せばいつどこでも追加注文が出来る」
「で…?」
「…君の為に…テイクアウトしてきた…」
「………。」
一気に冷めた表情に変わる妻。
「私…先に寝るわ。あとは適当に食べといて」
「……えっ…?ちょ…どうした?」
「おやすみなさい。食べたらちゃんと皿洗っといてよ」
「な…何を怒ってるんだ?…呼び出しボタンだぞ!?こんな画期的なアイテム…どこ探しても…」
ガチャンッ!
ジョンの言葉も最後まで続く事なく、扉は悲しくも荒く閉められ鍵までかけられた。
「………。」
ピッ!
・
・
・
寂しくてそのボタンを押しても、センサーの届く範囲外は反応しないのか。
誰も彼の追加注文に応えてくれる者はいなかった。
fin
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