11


……………


「フンフフン♪」


キッチンにリズムよく野菜を切る音が響く。

昨年、あの大企業の御曹司ジョン・ヒルと結婚した、新妻(鳥)のエミリー・バタフライだ。

ここは彼の実家近くに新しく建てたふたりの新しい愛の巣(鳥なだけに)

そんなに豪華な家でもないが、それでもふたりで暮らしていくには十分やっていける。


しかし昨日、結婚して初めて私達は夫婦ゲンカをしてしまった。

いや、ケンカというより私が一方的に怒っただけだけど。

でももうほとぼりも冷めたし、そろそろ帰ってくる頃でしょ。

昨日はちょっと怒りすぎちゃったから、今日はお詫びにご馳走を作ってあげたんだ♪

彼の大好物のフライドチキン、ローストターキー、唐揚げ、焼き鳥…

彼の「美味しい」って微笑む姿が頭に浮かんじゃう。

そして私の肩を抱いて唇(クチバシ)に…



きゃぁぁぁぁ☆



あっ、いけない!

翼を動かしすぎて、床が羽根まみれになっちゃった!





ピンポーン!




あ!

ジョンさん、帰ってきた!



エミリーはまな板の上に包丁を置いて玄関へ走った。





「ただいま、エミリー」


そこには予想通り、待っていた旦那の姿。

少し疲れている表情だけど、優しい口調で帰ってきてくれた。


「おかえりなさい、ジョンさん!昨日は怒りすぎちゃってごめんなさい」

「あぁ…」

「今日は貴方の為にご馳走を作ったのよ!来て!」


エミリーに案内されてリビングに入ると、テーブルに豪華な(鳥)料理がたくさん並んでいる。


「美味しそう…」

「でしょ!?貴方の為に頑張って作ったのよ!食べて」


ハンバーガーを食べ、ホットケーキを食べ…お腹が空いていないとはさすがに言えない。

言われた通り椅子に座り、フライドチキンを口にした。


「…うん…美味しい…」

「…ッ////」


彼がゆっくりと落ち着いた口調で微笑むと、エミリーのピンクのほっぺが真っ赤になる。


「ジョンさん…///昨日は怒っちゃってごめんね」

「いや…」

「私…ジョンさんの事大好きっ…」

「僕も…。好き…」

「………ッ…////」


彼の顔に見惚れてしまう。

もう…今日は私、貴方に何をされても…







「僕も…君と仲直りしたくて…プレゼントを…持ってきたんだ…」

「え?プレゼント!?何何?」


彼からの思わぬサプライズプレゼント。

嬉しくって、また翼を羽ばたかせてしまう。


彼からプレゼントなんて…

指輪を貰って以来一度もなかった。

彼も仕事が忙しかったから、そんな余裕なかったんだと思うし。


彼が取り出した手の平サイズの箱に、ワクワクして身を乗り出してしまう。

きっと素敵な物に違いなっ……







パカッ
















「…何これ?」










箱から出てきた物は…


何かボタンの付いた怪しい機械。


本当に何かわからなくて、クチバシから素でポロッとその言葉が漏れた。





「呼び出しボタンだ…。これを押せばいつどこでも追加注文が出来る」




「で…?」






「…君の為に…テイクアウトしてきた…」







「………。」






一気に冷めた表情に変わる妻。













「私…先に寝るわ。あとは適当に食べといて」

「……えっ…?ちょ…どうした?」


「おやすみなさい。食べたらちゃんと皿洗っといてよ」


「な…何を怒ってるんだ?…呼び出しボタンだぞ!?こんな画期的なアイテム…どこ探しても…」








ガチャンッ!



ジョンの言葉も最後まで続く事なく、扉は悲しくも荒く閉められ鍵までかけられた。






「………。」




ピッ!










寂しくてそのボタンを押しても、センサーの届く範囲外は反応しないのか。

誰も彼の追加注文に応えてくれる者はいなかった。



fin


- 543 -

*PREV  NEXT#


ページ: