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……………
パシャッ!
【画像を保存しました】
道端のベンチで寝ている猫の写メを撮影し、リッキーは立ち上がった。
とてもついさっき命の危機に遭ったとは思えない。
あの自転車事件同様、トラック事件の後も彼は何事もなかった顔でおつかいモードへ戻っていた。
再び道路を歩き始め、そして信号待ちにぶつかった所で手に持っていた買い物袋からふたつ目のおやつを取り出した。
ジム「お…おい。アイツ、キャビア食ってるぞ。もうソースなんて買えねーよ…」
ビッキー「いいでしょ!キャビアくらい買えるおつりを渡したんだから問題ないよ!」
ジム「お前、一体いくら渡したんだ!?それもうソース代じゃなくておつりがメインだろ!」
今度は問題なく長い横断歩道を渡り切り、ようやく目的地に到着した。
この街を代表する大型デパート、サンシャインプラザだ。
【冬の特別セール開催中!】
【バレンタインコーナー設立】
多くの垂れ幕や看板が並び、店員が盛大に客寄せをしている。
老若男女多くの人が賑わっており、凍える冬の寒さもここではあまり感じられなかった。
美男子の皮を被った猫馬鹿男は、建物を見上げた後に何の躊躇もなくデパートの入口から中へ入っていった。
「さて、ここからどうする?」
建物の中に消えていくリッキーを見送ったジムは、一息ついて他の仲間4人の顔を見た。
「どーせまたここから出てくるんだし、ここで待ってりゃいーだろ」
「何言ってるのよ、ナイジェル!もちろん中まで尾行して、リッキーの格好良いおソース買い物姿をこの目に焼き付けるのよ!」
「格好良いおソース買い物姿って何だよ…。ウスターソース一本買うのにゴールドカードでも出すってのか?」
ナイジェルは面倒臭そうに胸ポケットからタバコの箱を取り出した。
「まぁ…ここはナイジェルの意見に賛成かな。
今までの行動を見てる限り正直かなり不安だが、いつまでも俺達が見守ってたらアイツも成長出来ないし」
ジムも頬杖をついて頷く。
「もーう!サラは!?一緒に行こ!」
「いいけど、ちょっと買いたいお酒があるの。そっちに行っても大丈夫?」
「私用なの!?それじゃ意味ないじゃん!」
ジム「ま。アイツも年齢的に子どもじゃないんだ。
さすがにそれくらいは自分で買って戻って来るだろ」
サラ「自転車の大群を目潰しで追い払おうとすんのよ。子どもでしょ(笑)」
結局ビッキーの意見も通らず、リッキーがデパートから出てくるまで待機する事になった5人。
出入口付近の草陰にしゃがみ込んでおり、周りの客からもチラチラ見られている。
「それにしてもなんか喉渇いたな。おいボビー。悪いけど……あ?」
ナイジェルが火のついていないタバコを咥えたまま後ろを向くと、ボビーの様子が普段と違う。
彼は4人に背を向けたまま、何かゴソゴソと作業をしていた。
そういえば、コイツさっきから随分大人しかったな。
気になったナイジェルは彼のタイツの背中を指でつついてみる。
「ボビー?」
「ん?なんだい、ナイジェル君。やっと僕を抱いてくれる気になったのかい?」
「気色悪い想像させんな。さっきから何やってんだ、お前?」
「あぁ。社長君とラインしてたんだよ」
「「社長とライン!!?」」
さすがにそのビックリ発言にはナイジェル以外の全員も食いつく。
サラもビッキーも驚いて、彼の周りに集まってきた。
ジム「お前…社長とラインしてんのか!?」
ボビー「そうだよ。なんかスマホに買い替えたからID教えて欲しいって電話がかかってきて」
ビッキー「私でさえそんな連絡来なかったけど!何話してるの!?」
ボビー「丁度、事務所を出た辺りに連絡が来たんだよ。見るかい?」

「「……………。」」
サラ「なんで社長…プロフ画がボビーなんだろ」
ジム「突っ込む所そこじゃないだろ!!事務所出てからって事は、もう3時間も経ってるぞ!?
まさか、社長まだ待ってるんじゃないよな?」
ボビー「わかんないけど…待ってるんじゃないかい?」

「めちゃくちゃ暇してんじゃねーか!!ゲームしすぎて電池切れそうになってるぞ!
もうリッキーがどうとかいう問題じゃない!一刻も早く事務所に戻るぞ!」
「えぇ〜!だってまだリッキーが…きゃっ!」
口応えするビッキーの背中をつまみ上げ、きょとんとしているボビーのタイツをつまみ上げ、ジムは慌てて立ち上がった。
他のメンバーもそれに合わせて腰を上げる。
「急ぐぞ!このままじゃ、俺らの頭領が携帯もろとも電池切れになってしまう!早く…」
「あれ?皆さん、何やってるんですか?」
そこでひょっこり現れたのは、デパートから出てきたリッキーだった。
新しいビニール袋を持っている事から、無事に買い物は終わったらしい。
デパートから出ると、すぐ傍の草陰から何故かビッキーとボビーを抱えるジムの姿と、その周りのサラとナイジェルの姿が見えたらしく、こちらへ向かってきていた。
「あぁ…リッキー!お前も早く来い!急いで本部に戻るぞ!」
「え?あ、はい。で、なんでここにい…」
「詳しい話は後だ!いいから走れ!」
「えっ?なんっ…うわっ!何するんですか!」
ジムはリッキーの腕も引いて慌てて走り出した。
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