……………


「ゥオオアアアアアアア!!!!」


晩御飯直前の陽が沈んだ時間。

あのおつかい事件から数日後。

キッチンに本日の食事当番のビッキーの叫び声が再び鳴り響いた。


「お前は最近特に大声を上げるな。少しは近所迷惑を考えろ」

「そんなの問題じゃないわよサミー!また私のウスターソースがなくなってるの!誰よ!最後に使った奴は!」


ナイジェル「サミーだ」

「ジムだ!」

「やっぱりアンタじゃないの!!どう責任取ってくれるつもり!?」

「い、今のは違う!名前を訂正しただけで…」

「言い訳なんて聞きたくないから!もう6枚全部目玉焼き焼いたのよ!どうすんのコレ!!」

「今日の晩飯目玉焼きなのか!?ブレックファーストじゃねんだよ、もっと手の込んだものを作れ!」







「なんか凄い声が聞こえましたけど、どうかしたんですか?」

そこで2階から下りてきてひょっこりキッチンに顔を出したのは、彼女の王子様のリッキーだ。


「アアッ!リッキー!」

不機嫌になる彼氏をよそに、ビッキーはいつものように王子様に近づく。


「ウスターソースがまた切れたんだと。ったく、そのくらいで一々大声出すなってな、うるせーし」

「あ、そうなんですか」

タバコを吸うナイジェルから話を聞き納得すると、ポーっと天井を見ながら何かを考える。

そしてもう一度、ビッキーの顔を見た。


「ビッキー。また俺が買ってきてあげますよ!」




「嫌」



「…えっ?」




100%予想していなかった返事。

自分から何かを提案してサラに断られた事は何百回あっても、ビッキーに断られた事は一度もなかったから。

心底驚いたのか、リッキーはクリッとした目をさらに大きく見開いた。


「な…なんでですか?」

「だってリッキー、何回頼んでも間違って醤油ばっか買ってくるんだもん。
自分で適当にコンビニで買い溜めする方が早いから!」

「えっ…」


明るい笑顔を見せ、すぐに彼の傍を離れる彼女。

お馴染みの派手なショッキングピンクの財布を小さなバッグに入れる。



「じゃ!行ってくるね!多分いっぱい買ってくるから、冷蔵庫の中綺麗に片付けておいてね!サミー!」


サミー「えっ…あ、はい…」



「うん!じゃぁね!!」



ガチャンッ!



「……………。」


何も言えずにぽかんと立ち尽くしている、初めてフラれたリッキー。

最後にナイジェルが慰めるつもりで彼の肩を優しく叩いた。


「そんなにおつかい行きてーなら、俺のタバコ買ってこい(笑)」

「なんで笑ってるんですか」



fin


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