……………

木材が使用された壁や床の広い脱衣所。

森の香りが鼻に広がって、こちらもまさに「和」の雰囲気が漂う明るい空間。

男達は並べて用意されたカゴの前に立ち、それぞれ衣服を脱ぎ出した。


「ふぅ。それにしてもさっきの大女将には驚いたな。
ありゃちょっとでも部屋で騒ぎ立てたりしたら、ひとり一発ずつげんこつが飛んでくるかもな。気をつけろよ、七音と日晴君。あとボビー」

「えぇ!なんで俺達だけ名前があがるんすか!?」

「当たり前だ」

脱ぎ捨てた上着をカゴに入れるジム。


「まぁ。今日くらいは仕事を忘れてゆっくりしましょ」

「そうですね。七音の世話も今日はジムさんに任せられそうですし」

「なーに言ってんの!僕はいつもミヤ君の可愛い可愛い子どもだよ♪」


雨宮が腰にタオルを巻いて眼鏡を外しかけた所で、美空が豪快に後ろから抱きついた。


「ミヤ君、相変わらず筋肉ないね!もう少し鍛えたら?」

「余計なお世話だ」




「オメェ…本当に男か?なんだ、このヒョロヒョロの体は…」

「わぁ。ナイジェルさんセクハラぁ」

ナイジェルはあまりに白く細い雪之原の体に、無意識に肩や脇腹を触ってみる。


「本当に食い物食ってんのか?食べるもんがねーのか?下手すりゃウチの女達より痩せてんぞ」

「人聞き悪いなぁー。僕だってチョコレートとポテトチップスくらいは食べるよぉ」

「自慢出来る台詞じゃねーだろ、栄養バランス考えな」



ボビー「君達!なに女々しくタオルなんて巻いてるんだい!?男なら堂々と素っ裸の付き合いをしたまえ!」

ジム「はいはい、丸出しでいたい奴は好きにしろ。行くぞ、お前ら」

美空「ボビーさん、おっきいね!僕も負けてな…」

ナイジェル「お前らは一生ここで見せ合って遊んでろ」


馬鹿2匹を放置し、先頭のジムが扉に手をかけた。



ガララララッ!



「わぁ!凄い、真っ白ですよ!」



横開きの扉を開くと、一瞬目の前が湯気で真っ白に。

そして徐々にその温泉の姿が見えてきた。

思った以上に広い露天風呂。

やや白色がかったお湯から湯気が上がり、独特の硫黄の匂いを感じる。

五右衛門風呂や打たせ湯があったりと、色々な楽しみ方が出来そうだ。

この全てが今の時間だけでも自分達の貸切なんだと思っただけで、テンションが最高潮になるのも当然。



「ウオオオッ!スッゲェ!」

「キョウ君、興奮のあまりお湯に飛び込まないようにねぇ。またさっきの怖いオバサンが来ちゃうよぉ」

「おっと!そうっすね、イカンイカン」

「とりあえず、お湯で体を流して入りましょう」

「賛成!」


真上は天井もない青い空。

目の前は自然広がる壮大な風景。

設置してあるシャワーで体を流し、一同は念願の湯に浸かった。


ジム「うわぁ。気持ちぃ〜」

リッキー「本当、最高ですね!」

ナイジェル「ふぅ…」


移動の疲れ、いやここまで気持ちが良いと普段の仕事の疲れまで一気に吹っ飛んでしまいそう。

湯加減も少し熱いくらいで丁度良い。

冷えていた体が徐々に温まり、特に冷たかった足先や手の指先に熱が伝わってジンジンと血が巡る感覚が。


クラウディ「〜♪」

日晴「クラウディさん、超気持ち良さそうっすねぇ」

美空「ミヤ君なんで眼鏡かけてないの?曇って拭いて曇って拭いてのしょうもない芸が出来ないじゃん」

雨宮「そんな芸は持ち合わせていない」


前方後方360度に広がる大自然のパノラマを堪能し、それぞれが温泉を満喫する。

一通り体が温まったら頭を洗う為に一度湯の外へ。

さすがの芸能人達や案外身なりには拘るリッキーは、自前のトリートメントやボディソープなんかを持ってきていたり。

恥ずかしがる雨宮を押し切って、修学旅行気分で皆で背中を洗いっこ。

ナイジェルがイタズラで日晴やジムのタオルを抜き取ったり、その仕返しをされたり。

ボビーが石けんを踏んで盛大にずっ転んだり。


とにかく笑いが絶えない。

男だけの楽しい時間に、全員が子どもに戻ったようだ。



ジム「あっははは!あぁ…笑ったなぁ、こんなに笑ったのは久しぶりかも」

リッキー「日晴君とクラウディさんは濡れると髪がぺったんこになるんですね!パッと見誰だかわかりませんよ!」

日晴「俺の髪型とか結構拘ってるんすよ!あのトゲトゲヘアーはワックスで綺麗に固めるの一時間くらいかかるんすから!」

雪之原「クララは濡れてる時はストレートだけど、乾くといつものふんわり頭に戻るんだよぉ」


クラウディの細い髪を雪之原が何度も触るも、彼はニコニコしたまま反撃をしない。

本当、心が広いお父さんのような存在だ。


ナイジェル「髪型楽しめんのは若い今のうちだけだかんな。俺なんか毎朝セット時間0分だぞ」

美空「アハハッ!だってナイジェルさん、いつもだらしないくらい寝癖だらけだもんね!」

ナイジェル「大人に向かって『だらしない』とか言うな」

雨宮「はは。でも我々もオフの日は同じようなものですよ」

ボビー「僕は毎朝、ワックスで髪を固めるために4時に起きてるんだよ」

日晴「え?あれでっすか?笑」










「「キャハハハハッ!」」



男達が髪談義で盛り上がっている中、同じように温泉を楽しんでいる笑い声が隣から聞こえてきた。


「あぁ。隣も盛り上がってるみたいだな」


この男風呂の隣は、もちろん女風呂だ。

今の独特の甲高い笑い声は、ビッキーの声で間違いない。

この男風呂と女風呂の境目は、大量の竹で出来たこの高い仕切りだけ。

姿さえ見えないものの、お互いの声は丸聞こえなのだ。

きっとこちらで騒いでいた声も、向こうに聞こえていただろう。


「盛り上がってんな、そっちも!」

ジムが口の横に手を添えて声を送ると


「あ!ジェイムズ!楽しいよぉ!!」


ビッキーの楽しそうな声が跳ね返ってきた。

女達は女達だけで、今の俺達みたいにワイワイ遊んでいたんだろう。

すると他の男達も数人、ジム傍に来て声を送り始める。


ボビー「ビッキーちゅぁんっ!君の入浴シーンを想像しただけで僕の鼻血がロケットランチャーしそうだ!
今にもお湯が真っ赤になりそうだよ!」

リッキー「なら今すぐ出てください(笑)」

美空「いいなぁ〜!僕もそっちのお風呂覗きたーい!ね!ちょっといいでしょ!?」

雨宮「それは厳禁だと言われたばかりだろうが」


お湯から出て犯罪行動を起こす前に、雨宮が美空の肩を掴んで引き戻す。


「何して遊んでたのぉ?」

「フフッ。雪之原君にはまだ早い事よ」

「はぁ!?サラお前、まさか変な事やってんじゃ…」

「失礼ね。私はただ…」













「もうー。ミヤ君ってば堅物〜。いいじゃん、ちょっとくらいさ!」

「犯罪になり兼ねないんだぞ。相変わらずお前は…」


雨宮に引き戻された美空は、お湯の隅で毎度のごとく説教を受けていた。

またこういう展開になると長いし面倒。

「こんな旅行の時にまで…」と、彼は不機嫌そうに雨宮の顔を見る。


「ミヤ君だって男でしょ?ちょっとはそういう淡いエッチな願望だってあるっしょ〜?」

「僕を破廉恥な事ばかり考えているお前と一緒にするな。とにかくその辺のマナーはしっかり守れ。いいな?」

「せっかく滅多にない皆での温泉なのにー!つまんなぁい!」

「つまる、つまらないの問題じゃ…」











サラ「エマちゃんのおっぱい、ちっちゃくて可愛いからつい触りたくなっちゃって♪」











「……ッ!?煤v


突然耳に入ってきた、美空なんて軽く飛び越えるとんでもない破廉恥発言。


「え!?何!?サラさん!何ひとりで楽しそうな事やってんの!?」

完全に一時停止してしまった雨宮をよそに、美空はジムや他の男達が集まっている仕切り側に向かって泳ぎ出した。



ジム「お前らタオル付けてないのか?」

サラ「別に同じ女なんだし、付ける必要ないでしょ」

ナイジェル「オイオイ、なんて天国なんだよ。俺もそっち行っていーか?」

サラ「別にいいけどエマちゃんとビッキーちゃんから鉄拳が飛んでくるわよ」

ナイジェル「そんなもん、大歓迎に決まってんだろーが」


なんと女性達はタオルを付けずに入浴している様子。

それを想像したのか、リッキーや日晴の頬がなんとなく赤く染まる。


「もう!サラったらさっきからエマちゃんばっかり褒めて!私のこのナイスバディはどうなの!?」

「アンタのは別にいつも見てるからなんとも思わないわよ」

「ひどーい!」


なんと…男が興奮しそうな話題をこんなにも堂々としているんだろう。

しかもこちらは、ほとんどが10代から20代の思春期の男ばかり。

これはさすがに…


「あっ。エマちゃん、またタオルで隠して。いいのよ、私達しかいないんだから取っちゃいなさいっ」

「……エッ……あっ…やだっ////」

「往生際が悪いわね!ビッキー、もう一度コチョコチョ攻撃よ!」

「任せなさい!!」



ジャバンッ!!

ジャバンッ!!



「ヒャァッ///…やめっ!キャハハッ…///…ちょっ///!やぁっ!」





ジャバンッ!



美空「あれ?どうしたの、ミヤ君?いきなり立ち上がって…」

雨宮「いっ…いや…その…///なんでもない!七音!何をボサっとしてる!早く止めに行け!」

美空「えぇ!?ミヤ君が覗いちゃダメって言ったばっかじゃん!」




「ハハッ!エマちゃんのおっぱい本当小さくてプニプニして可愛いわね。食べちゃいたい(笑)」

「…ヤッ///!サラさッ…恥ずかしッ……!///…ひゃうっ!」



ジム「おーい、サラァ。一応こっちには思春期の男も大勢いるんだから、その辺にしといてやれ」

日晴「雨宮さん…?大丈夫すか?そんなに端に寄って…具合でも悪いんすか?」

雨宮「なんでもないと言ってるだろーが!!怒」

日晴「な…なんでキレてるんすか」




「エマちゃん反応超可愛いー!おらぁっ!コチョコチョコチョコチョ!」

「ビッキッ…さぁっ///…くすぐった…ヒャハハハッ///やっ!…あっ!」




ジャバンッ!!



リッキー「わっ!雨宮君、どうしたの!?いきなり立ち上がって」

雨宮「出ます」

リッキー「えっ…あ。…ちょっと!」



ガシャンッ!!


優等生の行いとは思えない、乱暴な扉の閉め方。

リッキーはぽかんとしたまま隣の雪之原を見た。


「行っちゃった…。あんなに息切れして…のぼせちゃったのかな」

「あはは。リツ君は正直者だねぇ」


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