……………


「ふふん、ふん♪フ〜ン♪」

メインルームの扉の隙間から中を覗くと、ビッキーはイヤホンを耳にweather lifeの歌を聴きながら友達とメールをしている最中のようだ。

おかげでこちらには全く気づいていない。


「上手くいきますかね?」

「大丈夫だ。さすがにアイツも憧れの彼がそんな事を考えてると知ったら、ドン引きして諦めるだろう」


不安気な仕掛け人の顔を見てジムは自信満々に頷く。

ナイジェルが考えたとっておきの魔法の言葉。

これも尊敬する先輩の為。

なにより自らの保身の為。(これが一番だけど)

その言葉を頭の片隅に置いて、リッキーも頭を縦に振った。



「わかりました。行ってきます」















「クリーニングに出せば良かった♪ふふふふん♪」


ガチャン!


「あ!」


彼女がメールを打ち終わった丁度その瞬間、

扉から入ってきた男にビッキーが黄色い声を上げた。


「リッキー!」

「お、お疲れ様です」

「どこ行ってたの?さっきから誰もいなくてさ!寂しくて頭ハゲそうだった!」

「女性はそんな事でハゲてしまうんですか。大変ですね」


どうでもいい会話はいつも通りスルーし、リッキーは向かい側のソファーに腰掛けた。








ブゥッ!!!!




「ん?」




あ。ソファーにブーブークッションが敷いてある!

あの人達、いつの間にこんな小細工を…!



「て?とーちたの?」


ちょ…ビッキーもあからさまに鼻を塞がないでください。

俺の放屁は喜んで顔面で受け止めるんじゃなかったんですか?

消臭スプレーふらないでください、普通に傷つくじゃないですか。










「ごほん。ビッキー、ちょっとお話があります」

「え?なぁに?」


壁にクッションを放り投げて、リッキーは雨宮のような真面目な咳払いをする。

落ち着いた所で、彼女も目の前の顔を見て。

何の疑いもない首を傾げる可愛い仕草で。

リッキーの目線の先にはこっそり陰から覗いている連中がいる。

そこまで見られると後には引き下がれない。

大きく息を吐き、そして口を開いた。



「俺…実は…」

「うん!何何?」






「お、男が好きなんです!!」




〜作戦その1〜
ホモ発言で幻滅させよう作戦





「キャッハハ!!言った、本当に言ったわ!何あの子超可愛いんだけど!!」

「ビッキーもぽかんとしてるぞ!効果抜群だな、こりゃ!」


サラとナイジェルは笑いを堪え切れず、廊下の隅で爆笑し始めた。

言う通り、ビッキーの顔はぽかんとしていて

現実を受け入れられないといった表情。



「どういう事?」

「ど…どういう事って…その…つまり…。俺は男の人が…好きなんです」

「…………。」


「男の人が好き」という事は、自分はゲイだと言っているもの。

遠まわしに言えば「女の子の君とは付き合えない」と伝える事が目的だ。

もちろん本心ではないのだが、これも自分を諦めてもらう為と心を痛めながらもリッキーは彼女の目を真剣に見た。


「えっ…?」


突然の告白にビッキーも困惑している様子。

少々刺激が強すぎて可哀想だが、これも叶わぬ恋を諦めてもらう為だ。


ジム「悪い事したかな…」

ボビー「これも僕とビッキーちゃんが結ばれる為の犠牲さ。可哀想だが…仕方がない」

ジム「お前はそんな目的で俺達に協力してたのか!?とんだクソ野郎だな!」










ビッキー「…で?それがどうしたの??」






リッキー「は?」


「「え?」」


跳ね返った言葉は予想していたより何倍も軽い返事。

思い切って告白した彼も「は」の形で口が止まる。

彼女の反応は、全員が思い描いていた反応より大幅に逸れていたのだ。



「どうしたって言うと…つまり…」

「私も女の子好きだよ!友達もいっぱいいるし、女同士だから気持ちよくわかってくれるし!!」

「え?あ、いや…そんなんじゃなくて…」


どうやら「好き」の意味を勘違いしているみたいだ。

俺が言いたかったのは、そういう友情を含めた「好き」って事じゃないのに…。

「恋愛的に男を愛してる」って…うわ////なんかそんな表現いきなり生々しくて言いにくいんだけど!



ビッキーの変化球返しに、完全にフリーズしてしまっているリッキー。

扉の向こう側を見ると、何やら「言え!」というシチュエーションをしているボビーやナイジェルの姿が。

嫌ですよ!

俺だって一応プライドがあるんですし、そこまでは言えません!




「だから私も女の人好きだよ!リッキーもそうなんだよね?」

「あのっ…ビッキーえっと…」


もっと上手な言葉が見つからないだろうか。

俺が言ってるのはそういう意味じゃなくて…「ライク」じゃなくて「ラブ」なんだって事…

あぁ、もうコレで…


「リッキーは女の人も男の人も大切にする優しい人だって、私知ってるよ!だってずーっとリッキーの事大好きだったんだから!」

「えっ///」

「ハンサムなのに全然天狗になったりしないし、優しいし、そうやって同性の人も大事にするもん!私、そういう所が好きだからずっと追いかけてるんだよ!」

「そ、そんな大袈裟です!///」


突然、リッキーの顔が真っ赤になる。

そこまで褒められるとさすがに照れてしまう。

オロオロした彼はとりあえず立ち上がり、そしてソファーを離れた。


「ちょ…ちょっと、俺トイレ行ってきますね」

「うん!いってらっしゃーい」


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