……………


ングゥッ…あ…頭痛いっ…


視界がぐるぐる回る。


温かい空間の中で、私の意識は目が回ったように朦朧としている。


時計…時計はぁ…


あれ?


目覚まし時計がない…。




















「えっ!!?」


毛布を押し上げてようやくローラは飛び起きた。


え?ここどこ!?


あまり見慣れないカーテンの隙間から入る朝の光。

周りを見渡す限り、確実に自分の家ではない。

ウィンディランでもない。

でも一度は来た事のある部屋。

どこかで見た事のある家具の配置。

カーテンの柄、ミニテーブル。


キョロキョロしていると床で寝ている人物が目に入り、ローラの呼吸が一瞬止まる。


「ババッ…バレルさん!!?」


背中を向けているが、あの後ろ姿は間違いない。

あ、ここバレルさんの家だ!

ウソ!?私なんでこんな所に!?


確か昨日は高校の同窓会があって、そこで…確か悪酔いした友達にお酒を無理やり飲まされて。

終わって…真っ直ぐ家に帰ったはずなんだけど。

うん…なんか…お兄ちゃんとしりとりした記憶あるし。


でも…ここにいるって事はウィンディランにも帰ってないんだよね?


あれ?


私、誰としりとりしてたの…?


ズキズキと痛む頭を抱え、とりあえずバレルの近くに寄ってみる。

本当に彼だ。

座布団を枕代わりにして、こんなに固い板張りの床で。

寝息を立ててるから、本当に寝てるんだろうな。


寝顔が見たいと顔を覗き込んだが、ある危険が頭に浮かんで咄嗟に体を離す。


そうだっ。こんなに頭が痛いって事は…二日酔いだ。

って事は…私、今相当お酒臭いって事だ!

どどど…どうしよう!


慌てて床に落ちていた自分のバッグを探り、飴か何かを探すが…


「痛っ…」


相変わらず頭が痛くて、それにも集中出来ない。

もうこのまま手紙でも残して帰ろうかな。

いや、でも絶対迷惑かけただろうし…それはさすがに失礼…


「ん…ん…」



そこでバレルが寝返りを打ち、半分目が開いた。


「あっ。バレルさっ…」

「ツッ…」


首を抑えながら、彼もようやく目を覚ます。

床で寝ていて体中が痛いみたい。



「バッ…バレルさん!ごめんなさいっ!私、昨日の事全然覚えてなくて…」

「いいから帰れ…」

「…………。」



彼の言葉に元気なく「はい」と返事を返すローラ。

顔を見る限り、やっぱり凄く迷惑かけたみたい…。

そうだよね。

記憶も残ってない程の酔っ払いが無理やり家にあがり込んで、おまけにベッドも取られてたみたいだし。

恥ずかしくて彼の顔が見れなくて


「すみませんでした…」


もう、私に残される言葉はただこれだけ。


「…………。」


俯く彼女を見てバレルは疲れた顔で首を軽く鳴らし、立ち上がりキッチンへ向かう。

一時してコップに注がれた水が出てきた。


「…え?」

「飲んだら帰れ…」

「え…あ…はい…」


言われるがままコップを手に取る。

バレルさん…意外とこういう時は優しいのかな。

迷惑がられたとはわかってるけど優しくされた事が少しだけ嬉しくて、ゆっくりと水を飲んだ。

なんだか…いつもより美味しく感じる。

多分、水道水だろうけど。


…と、こんなに余韻に浸ってる場合じゃない。

これ以上迷惑をかけるわけにもいかないし、急いで帰らないと!


水を飲み終わり立ち上がるローラは、バッグを持とうとしたが…


「あ…あの…バレルさん」

「何だ?」

「お手洗い…借りてもいいですか?」

「勝手にしろ」


そういえば昨晩の飲み会から一度も行っていない。

彼の許可を貰い、最後にトイレを借りてから帰る事にした。











はぁ…。

なんでよりにもよって、バレルさんの家に来ちゃったんだろう。

私の馬鹿。


「はぁ」


考えている事と同様の大きなため息が漏れる。


これじゃ、近くの公園のベンチで寝てた方がまだマシだったよ。

バレルさんに「酔っ払い」とか最悪なイメージ持たれちゃった、絶対。


「ぁぁ…もう。はぁ…」


悔やんでも過去の失敗を消す事は出来ない。

とにかく今回は素直に謝って、今後は絶対お酒は控え…














…あれ?












なんとなく違和感を感じて、背中に手をあてる。





「…え?」



その事態に自分でも驚いて、思わず声が漏れてしまった。



な…なんで?



ブラのホックが外れてる?









「…………。」







ダ…ダメだっ…

考えても何も思い出せない!

え、なんで!?

いつも外してるっけ?

だからなんで、よりによってこんな時に…






「じ…自分で…外したんだよね…」



不安になってそう言い聞かせた。


うん。そうだ。

多分、寝てる途中で…息苦しくなって…その…











ガチャン。




「か…貸してくれて…ありがとうございました…////」

「…………。」


トイレから出てきた彼女の頬はなんとなく赤い。

バレルは無表情のままこちらを見ていて、目が合った瞬間にローラは慌てて逸らす。


「で、は……帰ります。ご迷惑をおかけしました」

「早く帰れ」



うん…。

バレルさん…いつもと同じ顔だったし。

自分で外したんだよね。

…きっと。


扉から外に出ても、何度も何度も自分に言い聞かせた。





……………





「…………。」


「やっと帰った」と言いたげな顔で、バレルは一息ついて自分のベッドに入る。

さすがに床の上で眠っていたら、体が逆に疲れてしまったのだろう。

今日はバイトも昼からのシフトだ。

13時くらいまでなら眠る時間はある。

腹も減りすぎて、ついには鳴らなくなってしまっている事に今更気づいた。


ベッドの中は酒と女性の香りが混ざって…なんだかおかしな匂いだ。


「…………。」


彼はおもむろに自分の手を見つめて、その香りと共に短い眠りについた。


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