「あ、…雨宮君。…遅かった…ですね」

『悪い。鍵をかけたか気になって、一度家に戻ったんだ』


喫茶店からオブジェへ戻ると、エマが既に雨宮を待っていた。


「どうした…んですか?…顔色…悪い…」

「何でもない。気にしないでくれ…」


首を横に振る雨宮君の顔は、やっぱりどことなくやつれている気がする。

何かあったのかな…?





*****


美空「大丈夫だって!今日のデートが成功するように僕達が陰からサポートするから!」

日晴「俺達だって伊達に女子からキャーキャー言われる芸能人やってるわけじゃないっすよ!大船に乗ったつもりで任せてください!」


*****



先程の喫茶店で不良ふたりに言われた台詞。

今現在も、どこからかこちらを監視しているに違いない。

こんなにも落ち着かないデートは生まれて初めてだ…




「はぁ…」

「…どうしたん…ですか?」

「あぁ…何でもない」



ため息をついて再び首を横に振った後、ふと彼女の服装を見るとなんとなく違和感を覚えた。

なんだか自分の知っているイメージと雰囲気が少しだけ違う。

控えめな茶色ではなく、清楚なコーラルピンク色のカーディガン。

いつもロングスカートなのに、今日は膝丈のスカートで足が見えているなど普段より随分女性っぽい。

無意識に視線が服に留まってしまう。


「…や…やっぱり…変っ……です…か///」

「…っ」


じっと格好を見られている事に気がつき、エマは落ち着かない様子で膝を手で隠した。


「お母さんに…今日の事…話…したら……これ……着て…行きなさいっ…て…///…無理やり…」

「…え」

「なんだか…凄く恥ずかしくて///…ごめんっ…なさい…」

「え、いや…。その…」


変だなんてとんでもない。

可愛いと思っても、もちろんそんな事を素直に言えるわけがない。(誰が聞いてるかわからんし)


「ゴホンッ」


『似合っている』


これを携帯で見せる事が、彼にとって精一杯の思いを伝える表現だった。


「本当ですかっ///よかった…」


しかし、たったこれだけでも喜んでくれるエマ。

その姿は小動物のようでますます愛らしく、雨宮も思わず頬を赤く染める。


ありがとうございます…お母様。


はぁ…

これであの馬鹿共の監視がなければ、どれだけ良かった事か。



お得意の咳払いを2回程して、再び携帯を打ち込んだ彼。


『では、行こう』

「はい…」


ふたりは手を繋ぐ事も体を寄せ合う事もなく、一定の距離を空けてバス停へと歩き出した。


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