……………

「えっと…まずは、皆はん達にここに来てもらいました目的をお話させて頂きますわ。

実はこの病院で約50年前。病気で若うして死にはった可哀想な女の人がおりました。
普通なら治る患者さんも多い病気やったらしいんですけどね、その人は運悪く悪化したらしく…

後日その女の人のベッドには新しい患者さんが来はりまして、何事もなかったかのように病院は回り続けました」


まるで怪談話を聞くように、メンバーの耳は葛西の口調に引き込まれていく。


「そしたら何故か…その女の人が死にはった翌月から、同じ病気で次々と死んでまう患者さんが増えたらしいんですわ。
日に日にそれはエスカレートし、終いには単なる風邪で死にはった人もおったみたいですよ」


リッキー「………(怖)」


「それで、これはおかしい!と周りが騒ぎ出し、最初の原因になった女の人の死をもっと詳しく調べる事になったんです。

そしたら発覚したんですわ。

その人が病院の医療ミスで死にはった事実が」


ゾワッとジムの背中に寒気がよぎる。


「その当時は小さな街やったからね。噂はあっちゅう間に街中に広まりましたわ。
その女の人が病院の医療ミスで亡くなった事。そしてそれを病院にもみ消され自然死としてあっさり処理され、周りにもすぐに忘れられてしもた事。
その事に悲しみそして怒り、この病院に呪いをかけはったんだと。
自分と同じように、治るはずの病気で死んでしまう辛さを味わえ、病院の人間を許さんと言ってはるんやって…」


ビッキーは思わず冷えた腕を手で包む。


「そういう噂も広まり、ここへ通う患者も減り…ついにこの病院は閉業せざるを得なくなったんです。
閉業されて何度か建物を取り壊そうとしたらしいんですが、やはり呪いは解けへんのか事故が相次ぎ、
ついにはこないな廃れた状態のまま放置され、手付かずの廃病院になったっちゅー訳ですわ」


「なるほどな。その霊の怒りを鎮める為に今回除霊を行うと…50年も怒り呪いをかけ続けるなんて、とんでもねぇ執念深いオバケさんだな」


ナイジェルはタバコの煙を吐き、その薄気味悪い病院を見上げる。

そこで疑問を持ったジムが葛西に質問をぶつけてきた。


「でもなんでわざわざ若い君達が、しかもたったふたりでやろうと思ったんだい?もっとベテランの霊媒師とかに頼めば…」

「だってお金かかりますやん。やよちゃんが出来るのに無駄な出費はしたくないですもん」

「え…そこの基準、お金なの?」

ビッキー「でも…そこまでして君達が除霊する必要あるの?言っちゃアレだけど、少なくとも50年間は放置されてたんでしょ?」

「実は僕、新しいビジネスを始めるんですわ。その名も『除霊お祓いなんでも行列相談所』って!
で、場所がここしかなかったんですけど、こんな状態じゃ商売なんて出来へんて。仕方なくふたりで除霊やろうて決めたんですわ」

ジム「なるほどな!罰当たりが!お前本当に神社の跡取り息子なのか!?」

「説得すれば幽霊はんだって元は人間やったのですからわかってくれはるはずです。あ、でも僕見えへんのやった!ははは」

ボビー「胡散臭いなぁ、君」




「てなわけで!僕は一分一秒でも早く事業を始めて荒稼ぎしたくてたまらんさかい、ここの幽霊はんにはとっとと天国へ帰って頂きましょ!」

「いいわ、やるわよ。で、どうするの?」

ナイジェル「サラ、さっきの話聞いてたのに超ノリノリだな…」


そこで葛西は懐からさっきのものとはまた別のお札と、小さな年季の入った壷を取り出す。


「やる事は簡単ですわ。この病院をぐるぐる歩き回って、幽霊はんを見つけたらおでこにこのお札を貼ります」


ビッキー「…キョンシー?」

「そしてこの壷に封印するんですわ。その時に封印の呪文を大きく唱えんといけまへんよ。
呪文は『ユキチユユキチユキチキチ』」

ジム「嘘つけ!明らかに今お前が考えただろ!」

「いや、これはホンマですってぇ(笑)」


人を小馬鹿にするようにケラケラと笑い、その後ろで見ていた弥生は表情も変えずにもうひとつ同じ壷を取り出した。


「封印する壷はふたつありますさかい。効率を良くする為4人ずつに分かれて探しまへんか?」

「4人か。俺は弥生ちゃんと一緒のチームがいいな。
だってあの糸目君、霊見えないんでしょ?全然頼りにならないじゃん」


そう言ってジムが近づくと、後ろから弥生の肩を両手で掴んでグイッと引き寄せた葛西。


「何言うてはりますの。僕がやよちゃんから離れるわけないでしょ!転んだりせーへんか心配ですやん」

「何?それじゃ少なくとも4人はガイドも付かないまま除霊をやれというのか!?無理に決まってるだろ!」

「この兄ちゃんの言う通りや。離せ、図体デカいのが傍におったら暑苦しいわ」



冷たい口調で突き放され、話し合いの結果、下記のように分かれて病院内を散策する事となった。


【葛西チーム】
ナイジェル
ボビー
リッキー

【弥生チーム】
サラ
ビッキー
ジム



弥生「それじゃ、回るスペースも半分に分けますわ。
西側口から宗ちゃん達、東側口からウチら。1階から東側と西側に分けて回り、最上階で合流や。
それまでになんかあったら、すぐに携帯で知らせる事。ええな?宗ちゃん」

「わかったわー」

「ほな、行くで。ウチが先頭歩くから、後ろから付いてきてください」

ジム「よかった…こっちのチームで…」

ビッキー「弥生ちゃん、頼りになるね!」


それぞれの号令と共に、2チームは東側と西側の入口から入り始めた。

暗い暗い呪われた廃病院の中へ…。


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