【西側】


「へぶしッ!」

病院内に響いたひとつの大きなクシャミ。

男3人は鼻をすする葛西の方を見た。


「風邪かい?」

「さぁ。さっきの女子達が『葛西さん格好良い!弥生ちゃんの彼氏?』とか、噂してんとちゃいますか?」

「調子良いな、お前」


いくつかの病室。

診察室、検査室を回り…

どの部屋も真っ暗で不気味で異質。

明らかに何か出てきそうな雰囲気はあるが、1階はとりあえず異常なしだ。


「ま…まだ外に出ないんですか…」

「今入ったばっかだろーが。気持ち悪いから離れろ」

「勘弁してくださいよ。じゃぁ霊が襲ってきた時に誰が盾になるんですか」

「俺を盾にしよーとしてたのか(怒)ふざけんな、ボビーにでもくっついてろ」


「廃病院」という言葉にすっかり怯えきってしまっているリッキー。

ずっとナイジェルの背中にへばり付いていたが、彼からも見捨てられてボビーの方向へ身を投げられる。


「帰りたいです…ボビー、一緒に帰りましょう」

「そんなに怖いんなら、僕の四次元パンツにでも隠れておくかい?ほどよく生ぬるいよ」

「我慢します。早く進みましょう…」



BGMもなく人の声もなく、どうかすれば雑音さえ聞こえない。

聞こえるのは自分達の足音のみ。

ここの廊下の窓は何故か全てダンボールで塞がれている。

今の時間がわからなくなるくらい、外から遮断された暗い病院内をひたすらに歩き続けた。



「んー…2階もなんもありまへんな…」


懐中電灯で辺りを見渡すが、この階は患者の入院部屋ばかりでベッドしか置いていない。

特に変わった様子もなさそうだ。


「つーか、こっちのチームは誰も霊感なんてねんだから、霊がいても気がつかないんじゃねーか?」

「あ。おじさんはん、それもそうですね。まぁ、そん時は適当にお札を壁に貼ってダッシュで逃げればええんとちゃいますか?」

「オメー、いつか絶対ぇ祟られると思うわ。服装と台詞が全く合ってねーし」



階段を登り、辿り着いたのは3階のある部屋だ。


50年も放置されたままなのに、赤く光っているライト。


それにナイジェルとボビー、そしてリッキーは心臓がドクンと高鳴った。






【手術室】






ボビー「な…何故ランプが点灯してるんだい…?誰もいないはず…だろう」

葛西「さぁ。電気つけたまんま、お医者さんが帰ったんとちゃいます?」

リッキー「やだッ!俺…ここで待ってます…!」

葛西「大丈夫やって。手術室なんて、ちょっきり腹切ったりパカッと脳割ったりするだけの部屋やから。怖い先入観持ちすぎですわ」

ナイジェル「オメーの言い方が怖いんだよ!でもま…いつまでもここに突っ立ってるわけにもいかねーか。行くぞ」

ボビー「ナイジェル君…男前!改めて惚れ直したよ」

「気色悪い事言うな」

リッキー「俺も好きになりそうです」

「やめてくれ!なんなんだ、こんな非常時にお前らは!」





ギギギギギッ…



50年間放置されていた扉はさすがに錆びており、ナイジェルと葛西のふたりがかりでようやく開く。

真っ暗な部屋。

葛西が部屋の中心に懐中電灯の光を向けると…



「「うわっ」」


後ろにいたリッキーとボビーが思わず後退る。

手術台に丁度人の大きさ程の何かが横たわっており、その上から薄汚れた白いシートが被さっているのだ。

その光景はあまりに不気味で、さすがにナイジェルの顔も引きつる。



「オイ…あれは…どーすんだ?」

「どーすんだって、ちゃんと確認せんと意味ないですやん」

「…!え、まさかシートの中を見るんですか!?」

「幽霊はん見つけて除霊をするまで、ここからは出られまへんよ」


普段と変わらない関西弁で話す葛西。

コイツは怖くないのか…?

特に警戒する様子もなく、彼は草履でスタスタと歩いてシートに近づく。


「…大丈夫かよ。本当に」

「心配いりまへんって。まぁ、大体こないな簡単な場所におるわけありまへん。
お化けってもんは、もっとジメジメした陰気臭い暗ーい場所におるも…」









バッと広げた瞬間…










ミイラ化した人間が現れた。















「「ぷぎゃああああああ!!!!!!!!!」」


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