2
……………
少し走った所で、彼らは目的のマンションへ到着。
彼はすぐに指紋認識のセンサーでビル1階の防犯扉を開けた後、彼女をエレベーターまでエスコートした。
押したボタンはこの建物の最上階。
クラウディ君…高校生だよね…?
こんな良いマンションの、しかも最上階に一人暮らししてるなんて…
実家がよっぽどお金持ちなのかな。
エレベーターを降り、少し歩いた後に扉を専用のカードで開ける。
「さ、入って。今、タオルを持ってきますから」
玄関からクラウディは中へ入り、すぐにタオルを持ってきてくれた。
とりあえずそれで濡れた足元やスカートを拭く。
「濡れちゃいましたね。大丈夫?寒くないですか?」
「私は大丈夫だよ。クラウディ君がジャケットを被せてくれたおかげで足元以外はあんまり濡れてないし。
それより君の方が濡れてるじゃん」
「自分は平気です。風邪もほとんどひかない丈夫な体ですから」
ニコッと笑ってるけど、すっかり全身濡れてしまっている。
少ししか走ってないと言えど、雨も結構酷かったし私を庇いながら走ってくれたのかな。
そういえば普段のフワフワした髪の毛が、ボリュームがなくなってぺたんこになってしまっている。
濡れると髪が真っ直ぐになるんだ。
「何?自分の顔に何か付いてますか?」
「う、ううん。何も付いてないよ!」
無意識に顔をマジマジと見てしまい、恥ずかしくなって慌てて否定すると、彼は体を拭きながら首を傾げた。
普段と違う雰囲気のクラウディ君。
ちょっと格好良いかも…。
「そう?ならよかった。部屋に上がっていいですよ。特に面白い物は何もないですが」
「ありがとう。じゃぁ、お邪魔しようかな」
彼に勧められ、足を入念に拭いて部屋の中に入る。
一人暮らしのマンションの部屋だが玄関も割と広かったし、続く廊下の途中のキッチンも狭くなさそう。
トイレとお風呂も別々になっている。
構造的には普通のお家と変わらないようだ。
「わぁ…!クラウディ君の部屋綺麗だね!」
突き当たりのリビングルームに足を踏み入れると、自然と声が漏れた。
これはお世辞なんかじゃない。
綺麗に物が整理整頓されていて、まるでモデルルームへ来たみたいに素敵な部屋だった。
普段バレルさんの…あんまり綺麗じゃない部屋ばかり見てるからかな…
(多分この心の声を聞かれたら、思いっきり蹴られそうだけど)
でも余計に綺麗に感じる。
「そうですか。ありがとうございます。
部屋の色合いを統一するとか家具に拘っていたり、実は結構頑張って作った部屋なんですよ」
「うん!凄く素敵」
「ありがとうございます。普段誰も来ない部屋ですが、褒めてもらえると嬉しいですね」
やっぱりクラウディ君、育ちが良いのかな?
あんまり詳しい話は聞いた事ないけど、立ち振る舞いやこの部屋を見ればなんとなくどのように育ってきたかが想像つく。
「よかったですね。早めにここに来て」
「え?」
「だってほら。見てください」
クラウディに言われて外を見てみると、雨は先程以上に強く降ってきていた。
バケツの水をひっくり返したような大雨とは、まさにこういう雨を言うんだろう。
あのままあの木の下にいたら…そう考えただけで今にも風邪をひきそうになる。
「本当だ。凄い降ってるね……あっ…」
そこで窓の風景を見て、ふとローラの頭にある人の顔がよぎった。
バレルだ。
そういえば後から家に行きますって連絡しちゃったけど、この雨じゃとても行けそうにないかな。
「ローラさん?」
「あ、ごめんね。ちょっと電話してくるだけ。気にしないで」
彼女は慌てた様子でバッグから携帯電話を取り出した。
クラウディにそう言い残し、すぐに人のいない玄関へ戻ってしまう。
電話か…
バレルさんかな。
見つめる背中に、あの人の顔を思い浮かべた。
- 607 -
*PREV NEXT#
ページ: