3
……………
ガチャッ!
「………。」
冷蔵庫の中を確認するが、中は空。
相変わらず肉も野菜も何も入っていない。
働いているファミレス店から余った食材を先日大量に持って帰って冷蔵庫に入れていたはずなのに。
いつの間にかそれもなくなってしまっている。
いつの間にかと言っても、恐らく自分で全て食べてしまったのだろうが。
無意味に舌打ちをし、冷蔵庫の扉を閉める。
その電話がかかってきたのは、昨晩の出来事だった。
『明日のお昼過ぎ頃、そちらへ向かいます。何か食べたい物はありますか?』
あの女からだ。
食べたい物…とりあえず腹に入れば何でもいい。
「食える物」
『なんですか、その答え。「何が食べたいですか?」って訊いてるんですから、食べ物しか持ってきませんよ(笑)』
「………。」
結局適当に見繕って差し入れに来ると言われ、電話を切られた。
時計の針を見ると、現在昼の1時を指している。
「…………。」
彼が何も言わずにベッドに座ると…
ピロロロロ!
案の定、電話がかかってきた。
あのバレルに電話をかけるなんて勇気ある行動。
出来るのはあの女以外ありえない。
登録もしていない電話番号だが、何回か出ているうちにすっかり覚えてしまい、抵抗もなくバレルは通話ボタンを押した。
『あ、もしもし?バレルさんですか?』
「…あぁ。腹減った」
『もう、電話に出るなりソレですか。本当にいつもお腹を空かせてますね』
「…うるせぇ。来るなら早く来い」
『無理ですよ。外見てください』
電話口からその言葉を聞き、ふと閉めていたカーテンを開けて外を見ると
豪雨と呼べる勢いの大雨が降っていた。
「…………。」
『お腹空きすぎて気づかなかったんですね(笑)』
「黙れ」
『とにかく。こんなに雨が降ってるから、おさまるまでそちらには行けそうにありません。今、クラウディ君の家に入れてもらってるので、もう少し待っていてください』
―――――
―今、クラウディ君の家に入れてもらってるので、もう少し待っていてください―。
その言葉を伝えた瞬間、突然バレルさんから返事が返ってこなくなった。
電波が悪くなったのかと画面を確認するが異常は特にない。
「バレルさん?」
『…誰だ?』
「誰って…あれ?会った事あるんじゃないんですか?」
『知らん』
バレルさん…明らかに先程よりも声の質が不機嫌になっている。
まぁ元々不機嫌そうな声だけど、いつにも増してトーンが低い。
クラウディ君が会ってきたって前に言ってたから、てっきり顔見知りになってると思ってたけど…そうじゃなかったのかな。
「そうなんですか。とりあえず、私はもう少し友達の家にいま…」
『男の家にいんのか?』
「え?」
『野郎の家にいんのかって訊いてんだ』
「は…あ、いや…クラウディ君はそんな人じゃないですよ」
『…………。』
「どうしたんですか、バレルさん(笑)」
やっぱり様子がおかしいし、なんとなく怒っているように聞こえる。
クラウディ君の事、この間みたいな不良の悪い男の人かと思ってるのかな。
彼は本当に優しい人なのに。
とにかく、長年の経験からこういう時は本格的に怒られる前に電話を切った方が得策だ。
―――――
『とりあえず、今は切りますよ。雨がやんだらそちらへ向かいますから』
「…………。」
『それじゃ、それまで空腹に堪えてください』
逃げるようにピッと電話が切られる。
次に耳に入ってきたのはツーツーという電子音と、外から入る大雨の音だけだ。
「チッ」
ムシャクシャするのか、また舌打ちをしてしまう。
携帯をベッドへ雑に放り投げた後、目障りな外の風景をカーテンで遮断した。
- 608 -
*PREV NEXT#
ページ: