……………


あの日から数日経っても、未だ良曲は生まれてこない。

ムシャクシャしてまた無計画に外へ出かけるも、使えそうなネタも僕の頭には浮かんでこない。

生まれてくるのは、真っ暗闇のこの先の不安だけ。

周りに辛く当たるなと言われたって、今は他人に気を遣う余裕なんて1ミリもないんだ。

1分1秒でも早く良い歌を作って、weather lifeの人気を回復させたい。


それなのに…




「ねぇ!この間のサウンドミュージアム観た?」

「観た観た!ドロップスでしょ?ボーカルのカイン、めっちゃ格好良いよね!」


すれ違う女子高生達の会話も。

街の中心にある大型ビジョンに映っているのも。

壁に貼ってあるポスターでさえ。

ほぼ全てこの「ドロップス」というバンド。


CDショップに向かっても僕達の名前は、小さく隅に追いやられていた。




「…んだよ」


胸くそ悪くなってその店を出る。

好みの女の子が街を歩いていても、今はナンパをする気にもなれない。

なんだよ、寄って集って皆同じ名前ばかり。

僕達も…デビュー当初はこんな感じだったのに。

結局メディアもファンも飽きたら簡単に僕達を捨てて、次の時代に乗り換えてしまうのか。

嫌な世の中だ。

凄くムカつく。




美空は歩いていた足を止め、おもむろにポケットからぐちゃぐちゃになったあの紙を取り出した。


『ミュージックヘヴン

〜日 金曜日
9〜10時生放送。
第1イーストサイドビル。

出演予定者
ドロップス
weather life
コビクロ
吊革軍団







これもあと一週間。

今回初めてのドロップスとのメディアでの共演。

しかもテレビで生出演だ。




「……………。」


美空はすぐにその紙を無造作にポケットへ仕舞う。

顔は下を向いたままだが、空は雲のゆっくり動く青空。

こんな平日の昼間っから学校の授業をサボって僕はこんな所で何をしているのだろう。

そして共演相手のポスターが貼り巡らされているストリートを、またひとりで歩き出した。


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