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……………
この光景もだんだん見慣れるようになってきた。
空港からバレルさんの住んでいるアパート通りに着くまでの道。
正直、都会から活気のない寂しい町に変わる、切ない風景だけど。
バレルさんの住んでいる自宅はそこから細い道に入る、ほんとに古いアパート。
タクシーに乗って数十分。
目的の場所で降りた後、私は続く道をトランクを引っ張って進む。
足場のあまり良くない細い道を抜け、見えてきたアパート。
ギシッ、ギシッと錆びた階段を上がり、そして2階に辿り着いた一番奥の部屋。
この表札も何もない扉の向こうが、バレルさんの住んでいる場所だ。
私は指を伸ばし、そしてインターホンを鳴らした。
ピンポーン!
ガチャン、と扉が開く。
「バレルさん、こんにちは」
「………。」
いらっしゃいとも言わないが、素直に扉を開けてくれた彼。
またケンカをしたのだろうか。
目の横に新しいアザが出来ている。
「バレルさん、また新しい傷が出来ていますね。最近多くないですか…」
「関係ねぇ。いーから早く入れ」
ローラが心配している事など「貴様には関係ない」で一蹴されてしまう。
これはもうバレルの性格上、何を言っても無駄だという事は分かりきっていた。
少し残念だけど、すんなり部屋に入れてくれるだけ良いと思って中に入り扉を閉めた。
あれ…?
室内に何か見慣れない物が置いてある。
白くて四角い機械。
透明な袋に入ったままの新品のようで、まだ使われた形跡はないけど…なんだろう…。
まぁいいや。
無言で床に座るバレルには何も訊かず、ローラはすぐに隣に座った。
「はい。お土産のチョコレートクッキーです」
「…………。」
テーブルに置かれたバレルには似合わない黄色のリボンで縛った袋のお菓子。
お礼も何も言ってくれないけど、拒否しないって事は食べてくれるって事で解釈をいつもしている。
「今日は…えっと……カレーライスとか…作ろうと思ってるんですけど」
「……あぁ」
「その…何日も作り置き出来ますし…」
「………。」
ちょっと口数が増えたと言ってもこんな感じ。
彼は基本的に言葉を発すると「あぁ」か「知らん」が多い気がする。
あとはやっぱり「ウゼェ」かな。
まだ寂しいなと心の奥では感じてしまうけれど、それでも私は自分で決めたんだからバレルさんを放っておくつもりはない。
「甘いのがいいですか?辛いのがいいですか?」
「辛い方」
「わかりました。じゃぁ、作りますね」
表情を変えないバレルを置いて、材料の入った袋を握りキッチンへとローラは向かった。
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