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……………
「ふぅ…」
発疹眼鏡を追い出す事に成功し、安堵の息を吐いた美空。
しかし、ここでのんびりもしていられない。
彼と日晴は急いでクラウディが用意してくれた偽物の壷が入った木箱を、元あった位置まで移動させる。
「よし。あとは理事長に上手く嘘をつけるかだな。
ヒーちゃん!理事長役をやって!本番に備えて今のうちに予行練習しとこ!」
「了解っす!」
雪之原「あの人達に任せて大丈夫なのかなぁ」
その言葉にはさすがのクラウディも難しい顔をしている。
1時間後…。
「オオゥ!これが伝説の壷!『神天魔界壷』か!ついに…我はこれを手に入れ、人類の全てを…」
「あー、違う違う、ヒーちゃん!伝説の『神・天魔廻空壷』だよ!あと驚き方も『オオゥ!』じゃなくて『フォオゥッ!』だから!」
雪之原「なんで理事長の台詞まで練習してんのぉ」
クラウディ「………。」
こういう時に限って嫌な予想は的中。
美空と日晴のお芝居練習は、道を大きく踏み外して完全に「お遊びタイム」になっている。
まぁ…こうなる事は最初から大体わかっていたけど。
雪之原は呆れ顔のまま、エマは何故か楽しそうにその茶番を眺めていた。
コンコン!
あ…!
ついに来たな、魔王!
「ヒーちゃん!来たよ!練習の成果を見せてやる時だ!」
「よっしゃ!気合い入れて行くっすよ!」
「君達が練習してたの、理事長の台詞ばっかだったじゃ〜ん」
気合い十分に扉へ走る馬鹿ふたり。
手を後頭部で組んで、その姿を雪之原は目で追った。
コンコン!
「はいはーい!今開けま…」
ガチャン!!
理事長「壷を取りに来たぞ!いやぁ…写真で見せてもらったが、実に素晴らしい逸品だった!
フォオゥッ!!早くこの手に取りたい!」
「「…………。」」
理事長の興奮している顔を見上げて、美空と日晴の血の気がみるみる引いていく。
「ちょっとタンマ」とだけ言い残し、慌ててふたりは雪之原とクラウディ、エマの元へ戻ってきた。
「どどどど…どうしよう!理事長、本物の壷見ちゃってるよ!これじゃ、アレが偽物だってバレちゃう!」
「知らないよぉ、そんなのぉ」
「クラウディさん!元々は貴方のアイディアだったでしょ!?何か他に良い案ないんすか!」
「(マスクを付けて)ゼェー…ゼェー…」
「ここで仮病を使わないでくださいっす!」
「ところで、美空。雨宮は病院から帰ってきたか?あれから結構時間は経っていると思うが」
扉側から理事長の声が聞こえ、慌ててあっちへそっちへ走る美空。
「あぁ…ミヤ君、結構重症みたいで時間がかかるらしいです」
「そうなのか?病名は聞いてないのか?」
「え?えっと…その…」
「ふむ」
「せ…先天性…眼鏡症候群」
「初めて聞く病名だな」
苦し紛れについた嘘。
もちろん、そんな病気僕だって聞いた事もかかった事もない。
「だから、あともう少しかかるんじゃないかなぁ…」
「そうか。大丈夫なのか…?まぁいい。雨宮が帰っていないという事は、壷もまだ到着していないんだな」
顎髭を再びさすりながら、汗を流している美空を見下ろす。
「まぁ壷も大事だが、それより雨宮の体の方がずっと大事だからな。私はまた時間を置いて来る事にする」
「ほ、ほんとですか!?」
「まだ少し仕事が残っていてな。それが終わればまた来る」
「わ…わかりました!ゆっくりでいいですよ!」
ガチャン。
なんとか今回も壷を割ってしまった事はバレずに危機を回避出来た。
美空「はぁー…まさかこんな事になるなんて。心臓が痛い」
雪之原「自分達のせいでしょぉ。何?先天性眼鏡症候群て」
日晴「生まれつき視力が悪い体質なんじゃないすか?」
ガチャン!
「「え?」」
まだ数分しか経っていないのに扉が開いっ…
雨宮「発疹なんてやっぱり出来ていないだろーが!七音、おま…」
美空「う…うわぁ!ミヤ君が行った病院、藪医者だよ!さっきより酷くなってる!」
「なってな…ハグッ!」
強引に顔を掴んでグイッと押し出す。
「隣町に評判良い病院があるから、そこに行きなさい!」
「なんなんだ、一体!」
「西ブリッジ大学病院!道に迷っちゃダメだよ!!」
ガチャン!!!
ほぼ力強くで、邪魔な発疹眼鏡を部屋から追い出す。
この非常事態だ。
今はあんな奴に構っている時間は1分1秒もない。
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