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……………
ナイジェル「肉足りねーぞ。ジム、車から残りの分持ってこい」
ジム「おいおい、肉無くなりすぎだろ!誰だ、肉ばっか食ってるデブは!」
ジョン「あの不良の人…山程取っていってますよ」
ジム「あの大食い野郎が!」
リッキー「あとさっきロビンさん親子がタッパーに詰めてました」
ジム「あのニートが!!」
ボビー「ジム君、安心したまえ!ほら!僕のビッグマグナムを大量に焼いたよ!とても美味しそうなソーセージだ!」
ジム「下ネタじゃねーか!!」
顔面を網に押し付けられ、ジュー!という音と共にボビーのイケメン顔が網目状に焼かれる。
「ふむ、やはり一般庶民は食事中も野蛮だな」
「うるせ!大体お前ら、最初は呼んでなかっただろ!?どこから匂いを嗅ぎつけて来たんだよ!」
「心外だなぁ。ここは私達所有の流れるプールだよ。勝手に入ってきたのは君達だろう☆」
「町の川を勝手に私有地化してんじゃねぇ!」
男達が野蛮にケンカを始める中。
ビッキー、サラ、ローラの3人は彼らから離れて、女子だけの立ち話で盛り上がっていた。
「ローラさん、なんでジュースなんか飲んでるのよぉ!アルコールを摂りなさいアルコールを!」
「いえっ。前にちょっとお酒で失敗しちゃって…」
「アルコールを栄養みたいに言わないでよ。あ、そういえばサラ。今日は七音君達は呼ばなかったの?」
「なぁ〜んか…今、ライブ期間なんだってぇ…。まぁ〜、あんなエロサイトばっか観てる思春期の男達はどうでもいいんだけど〜。
エマちゃんも一緒に行ってるんだって〜つまんなぁい〜…ヒック!」
彼女は酔っ払ってもなお「男」より「可愛い女の子」に興味があるらしい。
本当にエマを連れて来たら犯罪になり兼ねない事をやらかしそうなので、ここはライブに行っていて好都合だった。
そこで「七音君」という言葉にローラは首を傾げる。
「ナオト君ってどなたですか?」
「あ、そっか!ローラさんは私達の関係を知らなかったもんね!あの『weather life』の美空七音君だよ!私達友達なんだ!凄いでしょ?」
「…………。」
自慢気なビッキーの台詞を聞いても、彼女はあまりピンときていない。
「あれ?もしかしてローラさん知らない?歌手だよ、歌手!テレビとかによく出てる!」
「ごめんなさい、私そういう芸能人の方とか疎くって。ウェザーニュースなら毎日確認しているのですが」
「いや、それただの天気予報だから」
昔からテレビもほとんど観ず、勉強ばかりしてきたのかな?
weather lifeを知らない若い女性は、なかなか探しても見つからないと思うけど。
「じゃぁ!ローラさんにも教えてあげる!凄く格好良くて、ファンになる事間違いなしだよ!」
「え…でも…」
「いいからいいから!えっと、まずボーカルの美空七音君でしょ。ちょっと生意気でチャラチャラしてるけど歌がすっごく上手で絶対音感を持ったバンドのリーダーなの!
あとギターの日晴響介君。運動神経が良くてバック転なんかも出来るんだよ!ギターソロの時とか超格好良くて!」
訊いてもいないのに、彼女は勝手に知らないバンドグループの説明を始める。
お得意のジャンルなのかマシンガンのように次々と知らない単語が出てくるが、聞いている当のローラは口をぽかんと開けたまま。
「ベースの雨宮律君は眼鏡好きな女子にはたまらない眼鏡男子だよ!真面目すぎる所がたまにキズだけど、頭良いししっかり者なの!」
「あ…あの…」
「あとあと!ピアノの雪之原奏君!女子にいっちばん人気の色白のまさに美青年だよ!歌も上手くて素敵なんだけどね〜、とんでもない腹黒い性格が魅力のひとつかな?」
「ビッキーさ…」
「それから!!ドラムのクラ…」
リッキー「ビッキー!携帯鳴ってますよ!」
肉を焼いている方向から聞こえてきた声にブンッ!と大きく首を回すビッキー。
愛しの王子様の声だ。
「え、ホントに!?リッキーが私の携帯見守ってくれてたの、嬉しいぽよーん!!」
大好きなリッキーに呼ばれ、説明の途中にもかかわらず走り出してしまう彼女。
嵐のような気分屋に、長々と芸能人話を聞かされていたローラもその姿を目で追って固まってしまう。
「あれっ…ちょ…!」
「いいのよ。あの子、情緒不安定だから」
サラさんが背中を叩いて私に言ってくれた。
まぁ…芸能人ってあんまり興味ないし。
聞いてもどうせわからないからな。
あ。
ふとローラの目にある人物の後ろ姿が映る。
流れる川の傍。砂利の上にあぐらをかいて座ってビールを飲んでいるあの人の姿だ。
「どうしたの?ローラさん?」
「あの…サラさん。私、ちょっと行ってきます」
「…?」
酔って大きな石の上に座り込んだ彼女を残し、ローラはひとり歩き始めた。
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