……………


「バレル君、お疲れ様!」

「…あぁ」


本日のバイトの勤務もようやく終了。

昨日はローラをバイクに乗せてホテルまで送ったものの、その疲労はあまり見えないようだ。

彼が職場のファミリーレストランを出ようとすると、まだ勤務中の女の子が声をかけた。

一緒に仕事をしている中華風のウェイトレスだ。

彼女はバレルをこの場所へ無理やり引き入れた張本人。


帰宅していく彼の背中を見つめた彼女は、一息ついて他の女性スタッフが帰り支度をしている輪の中に入る。


「ルーイ!お疲れ〜」

「ねぇ!アンタ今バレル君と喋ったでしょ!?」

「え、うそ!見てなかった!いいなー!」


その発言を聞いて、女子達はのめり込むように顔を近づけてくる。



「あんなの喋った内に入らないよ。でもバレル君、最近ちょっとずつ返事をしてくれるようになったよね」

「まぁそうだねぇ。最初の頃は目も合わせてくれなかったもん!でも!だからこそそんな冷たい態度が逆に女子のハートを刺激するっていうか!?」

「わかるわかる〜!」



バレル君は人相こそ悪いけれど、未だ女性スタッフ達の密かな憧れの的だ。

今日も今日とて店長にこっぴどく叱られてたけど、それでもちゃんと仕事は真面目にこなしている。

一度裏方の料理の手伝いをやらされていたけど、何故かその日は午後から店が閉まってしまい(24時間営業なのに)、それ以降彼がウェイター以外の仕事をしている所は見なくなった。


最近は他のスタッフへもほんの少しずつだけど心を開きかけてきたようで

彼にこのバイトを頼んで良かったと感じれるようになってきた。


だけど最近、ちょっと気になる事があって…




















バイトを終えたいつもの帰り道。

相変わらず彼を見る他人の態度は、危ない生き物を避けるような冷たい印象だが、それももう慣れてしまった。


コンビニに寄って夜食の焼肉弁当を5つ買い、

そして珍しく薬局に寄って消毒液や絆創膏も購入する。


ビニール袋を手にぶら下げ、再びいつもの道を歩き始めた彼。


今日は雑魚の不良共も周りをうろついていない。

何事もなく自宅に帰れそうだと思っていた、丁度その時だった。























「オイ、テメェ」



公園を通り過ぎた辺りで、ひとりの男に声をかけられた。

スーツを身にまとった自分と同じくらいの身長。いかにも柄の悪い男。

その風貌はもはやヤクザだ。

後ろにも手下なのか、同じように派手な男が何人も立っている。




「……………。」


声をかけられたバレルは、振り返ってその男の顔を黙って見ていた。



「ちょっとお話があるんですけど?面貸せや」



ニヤリと笑い、付いて来いと歩き出す男達。

バレルは特に口も開かず

ビニール袋を手に握ったまま、その男の後ろを歩き出した。


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