……………


「3番テーブルお願いします!」

「ご注文を繰り返します。シーザーサラダが1点、ミートソースパスタが…」

「お待たせ致しました。夏野菜のヘルシーカレーライス…」


ファミリーレストラン、ジョイント。


家族連れや若者に人気の食事処だ。

お昼の12時となり、今が店一番の稼ぎ時。

スタッフ達が客の対応に忙しく歩き回り、裏のキッチンもフライパンや包丁、調理器具を握って大忙し。



「バレル!お前、また客に口応えしたらしいな!何度も教えただろ!お客様は神…」

「後にしろ、ジジィ」

「なっ!だからジジィじゃなくて店長と呼べと言っとるだろーが!」


強面スタッフのバレルとチビオッサン店長のやりとりは、今やこの店の名物と言っても過言ではない。

注文に応じて料理を運んだり皿を片付けたり、バレルもバレルでこの仕事には大分慣れてきた様子。

もちろんベテランのスタッフにはまだまだかなわないけれど、もっぱら彼の一番の役割は問題が発生した時の「用心棒」

店員にも他の客にも迷惑をかけるような客が来た際、最も活躍するのがこの男なのだ。


「ありがとうございましたー、またお越しくださいませ!」


まぁそんなタチの悪い客が来る事は稀で、本日も彼の活躍する出番は無さそう。


「バレルさん、お疲れ様です。交代です」

「…あぁ」


最近入った新しい男性スタッフがホールに出て、バレルは休憩時間に入るようだ。

裏の休憩室に入りタオルで軽く首の汗を拭った。




クッソ疲れた。

こっちの方が腹減ってんだよ、飯なんか家で食え。



そんな事を思っているバレルは、ファミリーレストランの従業員失格だ。

珍しく疲れた顔で肩をまわしてパイプ椅子に荒く座る。


今この部屋で休憩しているのは彼ひとりだけ。

他のスタッフは全員ホールに出ている。

微かに耳に入ってくる客の笑う声や店員が忙しく歩き回る足音、皿と皿のぶつかる音。



少しその場で座り込んで体力を回復した後、彼は重い腰を上げる。

向かったのは隣のロッカールーム。

自身の使用しているロッカーの前だ。

取っ手を掴み扉を開いて、腕を伸ばした瞬間


「…ッ」


一瞬表情が歪んだ。

どうやら長袖で隠していたらしいが、傷を負っているらしい。

その痛みに耐えて取り出した携帯電話。

まぁこの男には頻繁に連絡を取り合う友達もいなければ、ほとんど使用しないためサイト等からのメールもない。

たまに連絡が来ているなら、あの女からか…あの馬鹿(リッキー)からも電話がたまにかかってくるが内容がウザいので一瞬で切っている。

おかげで他の人が使っている携帯電話より随分電池持ちが良いのだ。

バレルは特に期待もせずにそれを片手で開いた。








「…っ」


珍しく1通のメールが届いている表示。

あの女からではない。

送り主は見た事もないメールアドレスだ。




「…………。」



黙り込み、「新着メールあり」の文字を眉ひとつ動かさずに見つめる。

バレルはゆっくりボタンを押し、そのメールを表示した。


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