13
……………
「ハァッ…ハァッ…」
間一髪の所で追っ手を振り切れたローラは、今にも吐きそうな息遣いでホテルのベッドに座り込んだ。
明かりをつける余裕もなく、ただ呼吸をするだけで精一杯。
まだ…生きた心地がしない。
なんだったの、今の人…
思い出しただけで手や足、歯が重なり合ってカタカタと震える。
もしあそこでタクシーが通りかかっていなかったら、私は確実に追いつかれていた。
その結末を想像しただけで血の気が引く。
「……ッ…」
無意識に震える手で携帯電話を取った。
ゆっくりとボタンを押して、ある人の名前を表示する。
バレルの番号だ。
余計に心配をかけるかもしれないと思った。
それに今は仕事中だし、出てくれないかもしれない。
ピロロロロッ
ピロロロロッ
だけど…電話せずにはいられなかった。
このままひとりで黙っていると、気が狂ってしまいそうで。
『…どうした?』
出てくれたっ…
あの人の声だ。
思わず自分の声が震え、携帯を両手で強く握り締める。
「バ…レルさ…」
『オイ』
「さっき…知らない人に…追いかけ…られました…」
『……ッ…』
彼の声が電話口から消えた。
聞こえるのは、背景の食器のぶつかり合う音や接客の声。
その後、彼はすぐに訊き返す。
『どこにいる?』
「ホテルですからっ…もう大丈夫です…」
『今から行く。鍵をかけて絶対ぇそこを動くな』
「えっ…今仕事中でしょ?大丈夫で…」
ツー…
ツー…
「あの…バレルさん?」
気づいた時には、通話は既に切れてしまっていた。
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