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……………
To:バレルさん
件名:ローラです
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バレルさん、無事ですか?
時間があれば連絡をください。
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このメールを送ってから、既に5日が経過していた。
あの日から1日、また1日と時間だけが悲しく過ぎていく。
返事はまだ来ていない。
もう一度送ってみようかとも考えたが、あの人の事だ。
多分、意図的に返事をしていないんだと思う。
…それか今が返事を打てる状態じゃないのか。
いずれにしても心配な事実には変わりない。
新着メールのない携帯電話を握り締め、メインルームのソファーから腰を上げる。
「っ…。ローラ大丈夫か?」
「うん。部屋に戻るね」
「あぁ」
扉の前ですれ違う兄と妹。
メインルームを出て行くローラの姿を目で追い、入れ替わるようにジムは室内に入った。
「ジム君ジム君ジム君ジム君!ジム!ジミ!テメェ!このゴミ!」
「なんだよ、こんな時に騒がしいな。名前を徐々に劣化させるな」
その途端にひとりソファーに座っていたボビーが、慌てて俺の方向へ手招きをしてきた。
「テレビが映ってるよ!」
「馬鹿か。なんでそれをビックリしながら報告するんだ」
「そうではなくて!このニュースを観たまえ!」
「はぁ?」
ボビーからの言葉という事もあり、あまり乗り気ではない態度で画面を覗いてみるが。
「あっ」
これは確かに目が釘付けになる。
そのニューステロップを読んだ瞬間、思わず声が漏れてしまった。
【人気作詞家。1週間前から失踪。捜索続く】
「これ、ジョンさんが言ってたのじゃないのか?」
「ついにテレビでも言うようになったんだね。怖い時代だねぇ」
『繰り返しお伝えします。
人気作詞家のフェイト・マークスさん(37歳)が1週間前から行方がわからなくなっている事が明らかになりました。
フェイトさんは●日、午後1時頃「仕事の都合で出てくる」と知人に伝えた後、連絡が途絶えたとの事です。
今後、フェイトさんの捜索を行うと共に、最後にコンタクトを取った人物を…』
キャスターの報道と共にその作詞家の顔写真が公開される。
まだ若い茶髪の男性だ。
「音楽関係者の失踪か。バレルの件と関係があるのかはわからないが、やっぱり気になる事件だよな」
「そうだね。ちょっくらジム君、ベートーベンみたいな髪型にして指揮棒を狂ったように振り回しながら街を練り歩いてきたらどうだい?」
「なんだそれ、俺の方が不審者だろ。そんなの罠だって100人中99人は見ればわかるぞ」
「犯人がそのわからない1人かもしれないじゃないか!」
「お前だよ、それは」
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