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……………



「……。」







ザーッ





ザーッ






雨が降りしきる街。


人目に付かない橋の下に、その男はひっそりと身を潜めていた。



グウゥゥゥ


その腹の音も今は雨音にかき消される。

言うまでもなく腹が減った。

家にも5日間戻っていないので、そろそろ所持金も尽きてきた。


しかしこうなってしまった以上。

もうあの場所へは帰れない。


今はひたすらに逃げて、奴らの注意をこちらに逸らすしかない。

せめてあの女が日本に戻るまで。

さすがに国を越えてまで追いかけたりはしないはずだ。

それから先はもう知らん。

とにかく今は力が残っている限り、奴らから逃げ回るしかねぇ。




「チッ」




ムシャクシャして携帯を開く。

あの気味の悪いメールは来ておらず、届いているのは主にリッキーやその他の連中、バイトの奴ら。

そしてあのジジィ。


無断欠勤が続いているから仕方がない。

あとは



From:R0_0331jr@…
件名:ローラです
--------------------------------------------
バレルさん、無事ですか?
時間があれば連絡をください。
--------------------------------------------



あの馬鹿女。

何が連絡をくださいだ。

俺と連絡なんか取り合ってたら、またアイツらに狙われる事がわかってねーのか。


「…クソが」


眉間にシワを寄せて乱暴に携帯の画面を切る。




腹が減った。

とてつもなく腹が減った。

餓死しそうだ。


「はぁ…」


さすがに疲れたのか、珍しく弱々しいため息をつきながらバレルは雑草の生えている汚れた地面に座り込んだ。

そして渋々、ポケットからひとつの袋を取り出す。


それはバイクでローラをホテルまで送ったあの日、彼女がお土産として無理やり渡したチョコレートクッキーだ。

ポケットに入れて走り回っていたせいか、原型の形がわからなくなる程粉々になっている。

この男には似合わない可愛い黄色のリボンを解き、その欠片をひとつ手に取って口に運ぶ。



…美味ぇ。

馬鹿みてぇに美味ぇ。



なんなんだよ…ウゼェ



ひとつずつ手に取って食べ、最後には流し込むように上を向き大口開けて豪快に食べた。


ザクッ、ザクッと噛む度に口の中に音とチョコレートの味が広がる。


そしてごっくんと全て飲み込んだ。




「…………。」




酷い雨の中。

バレルはその袋と縛っていたリボンをグチャグチャに丸め、再びポケットに詰め込んだ。



「全然足りねーよ」




その小さな独り言も、この雨の音にかき消される。


ローラの出発予定日まで

あと3日だ。


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