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……………



丁寧に並べられた、訳のわからない資料。

転がる黒のボールペン。

そしてもはや何語を話しているのかもわからない我らの理事長。


資料を読んでいるフリをして、ジムは自分の仲間達の顔をこっそり覗いてみた。

ビッキーは紙の隅に何かを書いているが、恐らくあの動きは落書きだろう。

サラは一見真剣に資料を見ているようだが…読むべきページが違う。
話を聞いているようで、聞いていない証拠。

自分の隣にいるナイジェルに至っては、テーブルに顔を伏せて堂々と寝ている。
理事長ももう諦めて起こす気もしないのだろう。

真面目に話を聞いているのはリッキーくらいか。

全く…こんなにも大人が集まっている中でひとりしか真面目に会議に参加してないなんて。しかもそれも一番年下の後輩。

俺達のチームは…。

かく言う俺も、妹やバレルの事が気になって全然集中して話を聞いていないけどさ。


…あ。

ボビーが前を向いて笑顔のまま、猛スピードでなんかメモっている。

ノート見てないのにどうなってんだ!?

なにこれロボット!?気持ち悪いんだけど!
















「では今日の報告はここまでだ。ジム。隣で倒れてる馬鹿を叩き起こしなさい」

「あ…はい」


メンバーのほとんどが自分の話を聞いていない事は、理事長だって多分わかっている。

何年も一緒にいるんだ。

ナイジェルなんて会って初めての会議から寝ていた。

今更改心するはずもない。


「おい、ナイジェル。終わったぞ。起きろ」

「では、皆気をつけて帰りなさい」


白髪染めしているキッチリ髪を整備し、我らの理事長は誰よりも早く会議室を出た。












ナイジェル「ふぁぁぁあ。終わった終わった」

サラ「終わった終わったって…貴方最初から最後までずっと寝てただけでしょ」

ジム「サラ。お前も最初から最後までずっと8ページしか開いてなかったよな」


難しい会議…というか理事長自己満足の説明会が終了し、6人は駐車場に停めていたワゴン車に乗り込む。

運転がナイジェル。

助手席がサラ。

その他の連中が後ろと、いつもと同じ配置だ。


ナイジェル「さ、とっとと帰ろーぜ。ローラちゃんもひとり残して心配だしな」

ジム「そうだぞ!ウチの可愛い妹に何かあったらどうする!ナイジェル、120キロ出して帰れ」

リッキー「警察に捕まって今日中に帰れなくなりますよ。大丈夫ですよ。建物から出ないようにちゃんと言ってますし、戸締まりもきちんとしてきましたから」



エンジンがかかり、きちんと制限速度を守って走り出すワゴン車。

ここからウィンディランまでは約10分程度だ。

少し無駄話をしていればあっという間に着くはず。



「あっ!ねぇねぇナイジェル!ちょっとコンビニに寄ってくれない?」


走行中、運転席のシートに掴まって声をかけてきたのはビッキーだ。


「あ?なんでだよ?」

「今月のアイドル雑誌を買いたいの!私毎月かかさずに買ってるんだから!」

「はぁ?んな時にテメェ…」

「んもー!ちょっとだけだから!お願い!ジョニーいいでしょ!?」

「え。まぁ…雑誌買うくらいなら別にいいんじゃないか。ジムだけど」

「じゃ決定!そこの角曲がったコインマートに寄って!」

「ったく…120キロ出せとか言ってた奴が、彼女相手だと甘々だな」


仕方なくナイジェルはハンドルを右に切り、車はコンビニへと向かう。

スペースの空いた路上に駐車し、ビッキーは飛び跳ねて車を降りた。



「すぐに帰ってくるから待っててね!」

「おつまみナッツも買ってこい」


ナイジェルの言葉だけ聞こえないフリをして、ルンルンで彼女は店に入る。


今月号はweather lifeのお宝写真も入ってるんだよね!

先月から楽しみにしてたんだから!


迷う事なく一直線に書籍コーナーへ足を運ぶ。

お目当ての雑誌は人気なのか、一番目立つ場所に置いてあった。


「あったあった♪」


仲間達を待たせている事もあり、中を確認せず急いでそれを取ってレジへ持って行く。


「710円です」

「はいは〜い」


財布を取り出して小銭を探す。


「ななひゃく…じゅーえん!はい!ピッタ……








あれ…?」







お金を受け取り精算を済ませ、女性店員はレシートを取り出す。


そして、その雑誌をビニール袋に…



「ちょっストップ!」

「え?」


ビッキーは突然、その店員の腕を掴んだ。


「あの…お客様?」

「……ッ…」




そのアイドル雑誌の表紙を見て、微動だにしない彼女。

何が起こったのかわからずに店員も固まってしまっている。



「おきゃっ……あっ!」



彼女は袋に入れる前のその雑誌を奪い取り、猛スピードで店を出た。



「お客様!?あの…レシートは!?」









ガンッガンッガンッ!





「キャッ!」

突然助手席の窓が強く叩かれ、驚いたサラは咄嗟に運転席に座っていたナイジェルにしがみついた。


「あぁ…ビッキーか。もうビックリさせないでよ…」


「不審者かと思った」と独り言を漏らしながら、サラは何事かととりあえず窓を開けた。


「何?買い物が終わったなら早く中に入りなさ…」

「わかったの!!」

「わかったって何が?」

「昨日の!バレル君の!ずっと引っかかってた事が!!」




「「…えっ?」」

























「ローラ!!…ッ!?煤v




ジムがその扉を開けると、部屋から既に妹の姿は消えていた。


開いたままの窓。

ヒラヒラと虚しくカーテンが風に揺れ、片方だけのスリッパを残して…



マズい…!これは!!


「ローラさんは!?」


メインルームに戻ると、リッキーがすぐに訊いてきた。


「いない!窓だけが開いていた!きっと奴らに連れ去られたんだっ…チックショ」


さっきまでのんびり会議をしていたはずが、とんでもない事態になった。

ウィンディランに緊張の空気が張りつめている。

肝心のローラもいなくなった。

これはただ事ではない。


「アイツらへの連絡は!?」

「今、サラがやっています!ジョンさんへの連絡もビッキーが!ナイジェルが今車の準備をしてます!出来たらすぐに出発しますよ!」

「わかった!とりあえず急げ!!」


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