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……………
ブオオオオオッ…
店長から借りた鍵でバイクにエンジンがかかる。
塀の端からこっそり覗くと、男達は全員店内に入っているので見張りはいない。
出るなら今のうちだ。
すぐにヘルメットを被り、乗り慣れない新品同然のバイクに跨がった。
ハンドルを握りそして
ブオオオオオッ!!!
一気に外の道路へ飛び出した。
見る限り、背後から追っ手は来ていない。
逃げ切れる。
そう思い、スピードを上げて道を走り抜け…
ブオオオオオッ!!
「……ッ…」
ちょうど5分程走った所だった。
突然耳に入る、自分のバイクとはまた別のエンジン音。
後ろだ。
振り返ると、数台のバイクがこちらに向かって走って来ている事がわかった。
先頭にいるのは、あの男。
フィリップ・ゲイス。
「チッ」
もう匂いを嗅ぎつけてきやがったのか。
まるで犬のような嗅覚にバレルは舌を打ち、信号が青になった途端に猛スピードで走り出す。
ブオオオオオッ!!
「バレルくーん!仲良くしようや〜!」
「ヒャッハハハハ!!!」
背後から聞こえる不気味な無数の声。
そんな気色悪い声で俺の名前を呼ぶな。
キキーッ!!
道路を曲がり、小道を抜けるが…
ブオオオオオッ!!
前からも別の仲間が来ている。
クソがッ…!
急遽進路変更を行い、挟まれる前に別の道へ逃げるバレル。
ヤベェ、また追っ手が増えてやがるっ…
どんだけ暇人がいんだ、アイツら。
「キャァッ!」
一般の人々を次々と避け、早いスピードで道路を駆け抜ける。
あの天才とも言われるリッキーにも勝ったバレルのバイクテクニック。
レース用ではないバイクでも全くスピードを落とす事なく障害を器用に避けていく。
「バレル、コラァァァッ!!!煤v
しかし追ってくる奴らはそんな事などお構いなし。
バレルが避けていた置物や障害を全て破壊し、避けない人々は轢いてしまうような勢いで真っ直ぐに突き進んでくる。
ウッセェ、少しは静かに走……っ!
「来やがったな、オラァアッ!!」
街中の一本道に出た途端。待ち伏せをしていたのか。
バイクに乗ったひとりの男が、前からこちらへ猛スピードで突っ込んできた。
雑魚がっ…
んな真正面から来られても簡単にかわせ…
「…ッ!煤v
その瞬間。
バレルとその男の間に、風船を握った小さな女の子が飛び出してきた。
「ハッハハハハ!!ぶっ潰してやるぜぇ!!煤v
一直線にますますスピードを上げる前からの男は、進路を変更する気配はない。
あの速度で突っ込んできたら、自分は彼をかわせるとしても奴はそのまま子どもを轢いてしまう。
「チッ、ふっざけんなッ!」
奇声を上げながら猛スピードで突進してくるバイクの男。
それは一直線にその幼い子どもに向かい…
「あっ!リリッ危…!煤v
目を離していた母親は、ようやく自分の娘が道路に飛び出している事に気がつく。
娘に近づくのは気が狂った猛スピードのバイクの男。
凄まじいエンジンの音に心臓が跳ね上がり…
助けようと動き出した瞬間には、もう間に合わない!
ガッ!
真反対から別のバイクが急接近し、走りながらその子どもを片手で捕まえる。
その瞬間、子どもの手からふわりと風船が離れ…
「ハッ!」
母親が恐怖で声を詰まらせる。
その男は子どもを握ったまま腕を後ろに振りかぶって
「ああぁっ!!!」
ドシャァッ!!
近くにいた高校生の集団にその身は投げ入れられた。
「わぁっ!な、なんだぁっ!?」
「リリーッ!!」
慌てて母親が駆け寄る。
子どもは当然大声で泣いているが、多くの人に受け止められた事により奇跡的に無傷だ。
咄嗟に助けてくれたバイクの人を見ると…。
グラッ…!
先程子どもを投げた反動で、バランスが安定していないっ…
「くたばれェェ!!煤v
「チッ!」
そのバランスで前から突進してきたバイクをかわした瞬間…
ガシャンンンッ!!
バレルはついに転倒してしまった。
その瞬間に体ごと吹っ飛ばされ、近くにあった電信柱に激しく激突。
衝撃で口から噴き出した唾液がヘルメットの中で飛び散った。
……………。
「ツッ…!煤v
意識はある。
舞い上がる煙の中、必死に立ち上がろうと目を開けるが、
次の瞬間には、自分の乗っていたバイクは奴らによって次々と轢かれて破壊されてしまった。
無残にバラバラにされた機械の残骸。
とうとう道路に倒れている自分だけが、虚しく残ってしまった。
なんなんだよ…
ここまで
やっとここまで来たのに…
震える手を伸ばした後
バレルはその場で力尽き、意識を失った。
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