30


……………


「クラウディさん!」


バレルを救出したリッキーが真っ先に向かったのは、奴らの目に付かない小屋の裏で待機していたクラウディの元だ。

体力も少ない彼を引っ張り、ようやく連れて来る事が出来た。


「すみません!あとはお願いします!」


コクリと強く頷くクラウディ。

リッキーはバレルの体を託し、再びナイジェル達に加勢するため走り出した。






「……ッ…」



朦朧とする意識の中。

痛みに耐え、うっすら目を開けると…



「貴様…っ…」


その顔を確認した瞬間、すぐにある一部のシーンがバレルの脳裏に蘇ってきていた。





*****


「出てこい」










アパートの横にある草陰に向かって放ったバレルの言葉。

返事は返ってこないが…



「出てこいっつってんだろ。バレバレなんだよ」







ガサッ…!


バレルの言う通り、そこの木の裏から隠れていたひとりの男が姿を現した。

両手を上げている姿を見る限り「降参」といった所だ。


「誰だ、貴様…」


見た事のない知らない顔。

何故自分の住んでいるアパートを見張っていたのか、何をしていたかはわからない。

しかし、自分にケンカを売ってくるようなタチの悪い不良ではなさそうだ。


*****





まだ彼が公園にて銃で撃たれる前。


随分前に自宅近くに張り込んでいた人物がいた。

最初は敵かと思ったが、不良の仲間にしてはあまりにも上品な立ち姿だったので、すぐに違うとわかった。

まるでヨーロッパを連想させる容姿、グレーの髪で自分よりも背が高い。

図書館のローラの写真を突然見せてきた、あの謎の男。

その人物が今、傷を負った自分の体にすぐさま応急処置を始めた。

止血を行い、消毒をしてガーゼに包帯…



手慣れている。

その手つきはあの女と全く一緒だった。


まるで同じ本を読んで、その処置の仕方を学んだように。



「なんなんだ…貴様…」


掠れる意識で問いかけると、その男は体に包帯を巻ながら優しく微笑む。


「答えっ…グッ!」

更に訊き出そうとすると、人差し指を唇の上にとんっと乗せられ、バレルも驚いて自然と抵抗しなくなる。


『怪我人は大人しくしてください』

まるでそう言っている表情だった。


- 712 -

*PREV  NEXT#


ページ: