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……………


警察にひとりずつ連行されるアゲインドラゴンの一味。

フィリップ。

そしてドロップス。




「カイン」


連行中の彼に突然声をかけてきた人物がいた。

weather life、美空と雨宮だ。

近づいてくるふたりには目も合わせず、カインは手錠で繋がれたまま俯く。


「終わった…。俺達の輝くステージの日々が。

お前達のせいで全てな…」


先程の勢いはどこへいったのか。

今は生気さえ感じられない。

そんな彼の変わり果てた姿を見て、ふたりはそれぞれ口を開いた。



「お前は僕の仲間を侮辱し、エマを騙し利用して傷つけた張本人だ。その点に関して僕は君を決して許さない」

「………。」


「だけどさ。人に無理やり作らせた歌だったとしても、その歌が実際僕達の歌よりも売れて、トップバンドになれたのは紛れもない事実じゃん」


「ッ…」




言葉を聞いた瞬間、その視線は自然とその男に向かった。

俺がこの世で最も嫌い、いつかその存在を越えたいと思っていたソイツ。


最初はテレビで初めて見て…その歌声に感銘を受けた。


逸脱した歌の才能、年下でありながらこんなにも人を魅了する歌を歌える彼が羨ましかった。


彼の動画を何度も何度も繰り返し再生し、少しでも彼の真似をしようと猛勉強。


ライブも死ぬ気でチケットを手に入れ、行けるだけ行き尽くした。


あの歌声に近づきたくてボイストレーニングにも通い詰めた。


いつの間にか部屋の中は美空でいっぱいになり、CDやDVDも何枚も買い漁って。


狂ったように歌を聴いて、


俺にとって美空七音は神様のような憧れの存在だった。




いつから…その気持ちが変わってしまったのだろうか。




今は全く覚えていない。






「また、イチから出直してきなよ。
自分の力で周りを認めさせて、向こうから『曲を作らせてください』って、言わせてやればいい。

そうすればきっと、また同じステージに戻って来られるから」


「…………。」



俺を見つめる美空の顔は、俺が見つめる目と違っていた。


あんなにも傷つけ、見下ろし馬鹿にした。


弱みにつけ込み仲間を騙し、頭も下げさせ、仕事を奪い


徹底的に侮辱してきたはずだったのに。



それでも奴は、最後には笑っていた…。



その顔、言葉に、頭の中は真っ白になる。




「ほら、歩きなさい」


警官に背中を押され、カインはパトカーに乗せられた。












「どう?今の僕格好良かった?ミヤ君!」

「…はぁ。こんな時にもお前は。少しは緊張感を持て」


漂う微かなガソリンと砂埃の匂いの中。

雨宮はため息をついた後クイッと眼鏡を上げ、走り出したパトカーの背を見つめた。

とても寂しく、そして切なく見えるその姿。


「だが…お前の言っていた事は正しいと思う。

道を踏み外してしまったとはいえ、彼には紛れもなく才能があり、

歌に対する情熱、歌い方。歌声はどことなく…お前に似ている。

今度はお互い笑い合って、歌番組で共演出来るといいな」

「はは。そうだね」


最後に見せるのは、やはり緊張感のないお前の笑った顔なんだな。


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