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……………


翌日。

空は昨日の地獄を忘れさせてくれる爽やかな青空。


仕事の事情でweather lifeは不在だが、

それ以外の救出に協力した全員が、バレルの部屋に集まっていた。



「相変わらず汚い部屋だな。少しは片付けろ」

「うるせぇ」

「テメッ…助けてもらった分際で」


ジムのお節介な言葉にはバレルは目も向けない。

こんな狭い部屋に大人数で押しかけると、なんだか底が抜けてしまいそうだ。

見た目からしてボロアパート。

既に床がギシギシと悲鳴を上げている。


この部屋の家主は怪我をしてベッドに横たわり、からかうようにジムは上から顔を覗いてやった。



「でも結局怪我も大した事なくて良かったね!打撲とかすり傷や切り傷だけで、骨は折れてなかったんでしょ?ちょっと栄養失調になってたけど」

「病院に連れて行っても栄養剤打たれてすぐに追い返されたものね。相変わらず体だけは丈夫なんだから」


ビッキーとサラも包帯や絆創膏で処置された彼の顔を見て笑っている。

ムカついているのか、舌打ちをされてしまったが。


そんな光景を見てナイジェルはため息をついた。


「はぁ…ガキは元気だな。
とりあえず…バレル。お前は数日は寝てろ。
これだけの騒動を起こしたんだ、当分外出禁止だ」

「フン」


目を逸らすバレルに、さすがのジムも眉を八の字にして笑う。


「はは、バレル。今度何かあったら、いい加減俺達にも言えよ?」

「…………。」


「お前はもうひとりじゃない。これだけの仲間がいるんだ」



ウィンディランのメンバーにロビンにジョン。

ここにいないweather life。

そしてローラも。


その場にいた全員が頷き、そこだけはバレルも横目で見ていた。




「相変わらず素直じゃないな。まっ、それもお前らしいと言えばお前らし…」


「悪かったな」


「ッ…?」


彼は黙った後、少しだけ首をこちらに動かした。






「感謝してる」





「……は…?」





ギッと眉間にシワを寄せて言った彼は、

またすぐに目を逸らして壁側を向いてしまった。




「バレル君!!?今、なんて!?」


「うるせ、早く帰れ」



興奮気味に訊き返すジム。


なんだ、コイツ…!


素直になろうと思えば、ちゃんとなれるんじゃないか!


最初は嫌な奴とか怖い奴だと思ってたけど…


今は笑いながら、皆が彼を優しい目で見つめている。







バレル、良かったな。





お前は、今ではこんなにもたくさんの仲間に囲まれているんだ。










もう、孤独なんかじゃない。









全員が一通り笑った後、傍にリッキーが近づいてきた。


「それじゃ俺達帰るから。お大事にね、バレル」

「…あぁ」


旧友のそっけない態度にもニコリと笑うリッキー。

それを機に、次々と彼らは部屋を去って行く。


全員が出て扉を閉め、帰ろうとする直後だった。




「ローラさん、そういえば日本に帰る予定は延期されたんでしたよね?」

「え?…う、うん」


古い錆びた階段を降りようとした所で、こっそりとリッキーがローラに話しかけてきた。


「今日のご予定は?」

「とりあえず部屋に戻って休もうと思ってるよ。あんな事があってすぐだし…」

「じゃぁ、今日はバレルと一緒にいてあげてくれませんか?」

「え?」


突然の提案。

彼女は数回瞬きを繰り返してリッキーの顔を見た。



「でも、今日くらいあの人もひとりになりたいんじゃ…」

「バレルだってローラさんがいてくれた方が絶対喜びますよ。お兄さんには俺が上手く誤魔化しておきますから」

「……ッ…」


ローラは困った顔で、先程出たばかりの部屋の扉を振り返る。


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