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……………
「なおと…君…何か…あったんじゃ…ないです…か?」
駅の人混みで電車を待っている中、気になってエマは雨宮に先程の話を訊いてみた。
それに返事をするため彼は携帯を開く。
『気にするな。僕達は仕事だから』
仕事だから…?
という事は、遊びのお誘いでもしてくれたのかな。
でも、確かに私達はこれからお仕事に出かける。
何日も前から言われてたし、面と向かって理事長さんに会うのも今日が初めてだ。
遊んでいる場合じゃないから…七音君には悪いけど今日は仕方ない。
また予定が合う別の日にしてもらおう。
【電車が参ります。安全な位置までお下がりください】
私には聞こえないアナウンス音が流れ、時間通りに電車は駅に到着した。
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電車を乗り継ぎ、やってきたのは街外れの大きなお家。
凄い…。私の家の3倍はありそう。
大迫力の豪邸を前にエマが怖じ気づいてしまうと、その緊張を感じ取ったのか再び雨宮は携帯を開いた。
『安心していい。怖い人ではないし僕も付いている』
「…っ…は…はい…」
「それじゃ、行こう」
雨宮君はプライベートの時もだけど、仕事の時は本当に頼りになる。
何度私はピンチの時に彼に助けてもらっただろうか。
多分、お仕事の時に頼りになるのは七音君や他の誰より間違いなくこの人だ。
だから…今回だってきっと大丈夫。
ピンポーン
ガチャッと両開きの扉が開くと、中から顎髭を蓄えたダンディなオジサマが現れた。
先日の壷事件の際に遠くから見てたけど、近くで見ると紳士的な雰囲気のスマートでお洒落な洋風男性という印象。
自宅なのにスーツを着てるなんて、なんと身なりのしっかりした人だろう。
「おお、雨宮!よく来たな」
「ご無沙汰しております」
「目の調子はどうだ?」
「だからそれは七音達の嘘だと何度もお伝えしたでしょう」
紳士なダンディーオジサマとインテリ眼鏡男子。
見ているだけで上品さが伝わってきて、私はしばしその女子が喜びそうな光景に見惚れていた。
「おぉ、君がエマさんか!君とは話がしたかったんだ」
髭のオジサマがこちらに話しかけてきたので、彼女もオドオドしながら頭を下げる。
やはりまだ緊張している様子。
「可愛い娘さんじゃないか。お人形さんみたいだ」
「理事長。前にもお伝えしました通り彼女は耳が聞こえません。その辺は僕がフォローしますのでご理解ください」
「わかってるわかってる。さぁ、エマさん!私が部屋の中までエスコートしてやろ…」
「キャッ!(隠)」
「理事長。もうひとつお伝えしておきますが、彼女は我々以外の男性と接するのが極端に苦手です。必要以上に近づくのはご遠慮ください」
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