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「…はぁ」

彼女達の姿が完全に見えなくなり、美空は疲れたのか膝に手を置いて片手で顎の汗を拭った。


「エマ、大丈夫か?」


急いで雨宮が駆け寄り、倒されたエマを支えて立ち上がらせる。

スカートが土で汚れており、それも軽く払ってあげた。

美空はすぐに携帯を握り、エマにその画面を見せる。


『僕の連れがヒドい事しちゃったね。ごめんね』

「うう…ん…。大丈…夫…」


何も聞こえず状況もわからず、ひたすら責め立てられて本当は凄く怖かったんだろうな。

心配させまいと無理に笑う顔が、なんだか痛々しく思えた。


「全く、肝を冷やしたぞ。彼女が本当に踏みつけられていたら、どう責任を取ってくれるつもりだったんだ」

「ごめん、ミヤ君。迷惑かけて」

「ったく…。これに懲りたら女遊びは今後控える事だな」

「それは今回の件で十分、身を以て感じました」


美空は落ちていたビニールを取り土を払う。

新しい牛乳を買ってあげる提案をしたが、大丈夫だと断られてしまった。




『エマちゃん、本当にごめんね』

「もう…大丈…夫…だよ」

『家までまた3人で帰ろ。送るよ』

「っ…。いい…よ…そんな…遠回り…に…なっちゃ……っ////」


すると美空は片手にビニールを持ったまま、急に彼女の右手を反対の手で握った。


「気にしないで!ミヤ君もいいでしょ?」

「………。」


彼も一時眉間にシワを寄せ、一度親指で眼鏡を押し上げる。


「当たり前だ。いつまたこのような危険があるかわからんからな」


そう言ってエマの左手を雨宮が握った。



「ッ…」


驚いてふたりの顔を見上げる。

今の事もあったし、ふたりともそれだけ心配してくれてるのかな。


「よし。じゃぁ帰ろ。エマちゃん!」

「…っ…////」


両脇を異性に挟まれて、しかも手を握られて歩き出す。

なんだか…嬉しいような、恥ずかしいような…


「妙に照れ臭いな。僕らももう子どもじゃないというのに」

「いいじゃーん!誰も見てないし!エマちゃん、どうせなら腕組んで恋人繋ぎでもす…」

「エマ。やはり場所を代われ。コイツの隣は危険だ」

「はぁ?また!?なんで僕がミヤ君と手を繋いで歩かなきゃいけないのさ!」




3人がそれぞれ同じスピードで並んで歩く。


私は…幸せ者だ。

七音君も雨宮君も、何があってもいつもこうやって傍にいてくれる。

耳が聞こえないとわかって、たくさん迷惑をかけて…

それでもここまでずっと一緒にいてくれた。

こんな経験…weather lifeの仲間になるまで一度もない。

こんなに大きな温かい手…今まで握った事がなかった。


…嬉しい。


たとえ自分が自惚れていただけだったとしても…私はふたりの事が好き。


大好きだ。


もう、お仕事の仲間だけという存在じゃないよ。


それだけは、今ハッキリとわかっている。



エマは無意識に強く彼らの手を握った。


「エマちゃん?」

「ッ…エマ?」


「ありがとうっ……七音君…雨宮君////

…だ…大好きです…」


「「……。」」




何も考えず、ストレートに自分の気持ちを口にしてしまった。

私はふたりの事が大好き。

日晴君や雪之原君やクラウディ君ももちろん好きだけど…


七音君と雨宮君は、もう他の人と比べられないくらい。



その言葉を聞いた男ふたりはぽかんとしていたが

無意識にお互いが目を合わせると、美空の方がクスッと笑った。



「はは。大好きだって?どうする、ミヤ君?」

「どうするって……全く…///」


ニヤニヤする美空に、赤面して意味もなく咳払いをする雨宮。

ふたりは同時に自分の携帯を取り出し、それに文字を打ち込んだ。




『僕もエマちゃん大好きo(^▽^)o!』

『同感だ』






もう少しだけ、この距離感でいたい。

この…

ふたりを傍に感じられる、安心する距離感。



ずっとずっと…


3人でいられる気がしていた。





「僕達の大好きの意味。わかってるのかね?この子は」

「わかってないだろう…」


何も聞こえないエマをよそに、

頭上ではこんなやり取りが行われていた。


fin


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