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ガタンゴトン。
揺れる帰りの列車の中。
窓には行きの時と同じように森や海等、自然ばかりが映っている。
「いやぁ、それにしても良かったな!俺らの所に戻って来れるようになって!」
「えぇ。お父さんがさ、お前にはあの仲間が合ってるって言ってくれて」
今回は行きの列車にはいなかったサラも乗車している。
ほぼ不法侵入で入ってきた俺達を、あの父親もよくここまで受け入れてくれたものだ。
「でも結果的にはお前は会社を継がなかった事になるじゃん?ヒル家の会社はどうなんの?」
ジムはもちろん彼女に質問攻め。
窓から見える風景なんて目も留めず、次から次に聞きたい事を訊いてくる。
「さぁね。ただ、お前はお前の好きなように生きろ。会社の事は気にするなって言ってた」
「良いお父さんね!」
ジムの隣にいたビッキーも話に入ってくる。
「えぇ。今回の件で会社や一族に対する考えとかも少し変わったみたい」
「金持ちも楽な事ばっかじゃないんだな」
「まぁ、それが嫌で私は家を出たんだから」
「あ、そだ!あのさ、ナイジェルが言ってた疑問なんだけど…」
「何?」
「どうしてお前の所の会社、長男のジョンさんじゃなくて妹のお前が継ぐ事になったんだ?」
思い出したように訊いてきたジムに対し、彼女は「あぁ」と声を漏らした。
「お兄ちゃん、今度結婚するの。一般の女の人と」
「結婚!?」
「そうよ。最初はお父さんも反対してたんだけど、私が会社を継ぐと言ったら許してくれたから」
そこでビッキーが眉を下げる。
「どうしてそんな無理してまで?サラだって知らない人と結婚して会社を継ぐの嫌だったんでしょ?」
「もちろん嫌だったわよ。でもお兄ちゃんにはたくさんお世話になったし。
私が家を出てプロのバイクライダーを目指すって言った時。親や親戚に全員猛反対される中、お兄ちゃんだけが味方してくれたの。
それが本当に心の底から嬉しくて。今度は私がお兄ちゃんを幸せにする番だって思ったの」
そこでジムがパチンと手を叩きながら笑った。
「偉い!何?お前意外にブラコンなんだな!?」
「シスコンに言われたくないわよ」
また、こんな他愛のない話が出来る。
こんな些細な事が自分にとってこんなに幸せな事だとは思っていなかった。
くだらない話。仲間とケンカをしたり、馬鹿やったり。そしてまたバイクで走れる。
それが自分にとってかけがえのないものなんだと改めて気がついた。
贅沢な暮らしが出来なくたって、私にとってはこちらの方が何倍も幸福。
サラはそう考えているのか、いつものようにクールな表情で笑ってやった。
「そうだ!そんな事よりナイジェルとリッキーにお礼を言ってくれば?ふたりともサラの為にもう超必死だったのよ!」
「必死?」
そこでジムがグッとサラに顔を近づける。
「知ってると思うけど、ナイジェルとかお前を護る為に命懸けで戦ったんだぞ。
あとお前の事になるとムキになってさ。サラがどうしてこんな目に遭うんだ、とかお兄さんにもブチギレてたし」
次にビッキーも同じように彼女に顔を近づけた。
「リッキーもサラを匿ったり皆に指示を出したり。なんと言ってもあんなに怒鳴った所見た事なかったし!ちょっと悔しい!」
「…………。」
「…サラ?」
一瞬、彼女はボーっとしていたようだ。
その後すぐ、動く車内で席を立った。
「お!行くか!?」
「まぁ…」
「そうか、行って来い!ご褒美のチューでもしてやれ!」
ジムの面白半分のからかいを無視し、彼女はリッキーとナイジェルがいる後ろの車両まで歩き出した。
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