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……………
ピンポーン!
「ん?」
思い思いに正月休みを過ごしていた仲間達。
そこでインターホンの音がメインルームに響き、それぞれが扉に目を向けた。
「誰でしょうか?こんな年明けに」
「さぁ。とりあえず出るか」
ジムはソファーから立ち上がり来客が待つ玄関へ。
それに合わせて後ろから他のメンバーも付いてきた。
「はーい、今開けますよ」
ガチャン!
「あ〜け〜お〜メソポタミア文明!」
パンッ!と目の前で鳴らされたクラッカーに驚いたジムは思わず後ろに引き下がった。
「な、七音!」
「おはよーございまーす♪」
扉の前に立っていたのは、寒さで鼻の頭を赤くしたweather lifeのリーダー・美空七音。
そしてその他のメンバーも一緒だ。
雨宮「七音…クラッカーは人に向けて打つなと言っただろ」
「ジムさんになら別にいいかなって」
ジム「いいわけないだろ!」
どうやら彼らは新年の挨拶に来てくれたようだ。
…が、やはりこんな奴には任せられないと、美空を押し退けて前に出たのは彼の母親代わりでもある雨宮。
「大変失礼しました。
改めて、あけましておめでとうございます。
昨年は大変お世話になりました。
今年も心機一転お互い新しい目標を持って、充実した一年を過ごせるよう精進いたしましょう。
ちなみに今年の我々の目標はまずは健康第一。勤勉。そして我々weather lifeの歌をさらに広めるために…ベラベラベラ…」
日晴「あーもぉ!雨宮さんは一々回りくどいっす!
俺が潔く男らしい新年の挨拶を伝授するっすよ!
ちわっす!よろしくっす!さいなら!」
雪之原「何それ〜、そんなの新年じゃなくても別にいいじゃーん。
仕方ないなぁ、僕がお手本見せてあげるよぉ。
今年暖冬だからつまんな〜い。よろしくぅ」
ジム「それじゃ俺達は『地球の温度下げてください』と言われてる気がしてならないんだが」
ビッキー「七音君、あけましておめでとう!」
美空「うん!ありがとう!」
ナイジェル「ありがとうってなんだよ」
長年の付き合いから、すっかり気心の知れた友人同士になったweather lifeとウィンディラン。
早速室内にお邪魔して一息つき、各自で昨年の思い出や今年の予定について話したりテレビを観たり、のんびりと寛ぎ始める。
「それで、カウントダウン直前にボビーがさ…」
グゥッ
ん?
可愛らしい腹の音が聞こえた。
「誰だ?」とそれぞれがそれぞれの顔を見て…
「今のビッキーちゃんでしょ?」
「もう!なんで気づいちゃうの!」
隠していたようだが犯人はビッキー。
一緒に話をしていた耳の良い美空はすぐに気づいたらしい。
そこでジムがふたりに近づいてくる。
「そういえばお前さっき腹減ったって言ってたな。何か作るか?」
「ピエール作ってくれるの!?」
「ジムだ。ただし大したものは作れないぞ。簡単な物くらいなら作ってやる」
美空「じゃぁフォアグラステーキキャビアソース仕立て! 」
「馬鹿か、お前が作れ」
「それなら、皆でおせちを作りませんか?」
突然提案をしてきたのは、ナイジェルと立ち話をしていた雨宮だ。
「おせち?」
聞き慣れない彼の言葉にジムは首を傾げる。
「おせちって何だ?」
「おせちとは、簡単に言うと年始めに食べる豪華な弁当のような物です。
日本では一般的に正月にはおせちを食べる家が多いんですよ」
「へぇ、美味そうだな」
聞く所によると練り物や煮物や魚介類など、美味しい食材を詰め合わせた伝統料理らしい。
話を聞いただけで涎が出そうだ。
「俺も話聞いてたら腹減ってきた…。ビッキーもそれでいいよな?」
「うん!ピエールが作るクソマズいカレーなんか正月から食べたくないし!」
「結局俺の料理は全部マズいって事じゃねーか(怒)」
話はすっかりその「おせち」を作る方向へ。
他のウィンディランのメンバーももちろん反対する者はいない。
「楽しみですね!」
「うん!ミヤ君の作るおせちは超美味しいよ!世界一間違いなし!」
「世界一?そりゃ聞き捨てなりまへんな」
「…ッ!?」
聞き慣れた特徴ある関西弁が耳に入る。
振り返ると開いた扉に人影が。
制服の上に分厚いコートを羽織った女子高生が、いつの間にか部屋の前に立っていた。
「弥生ちゃん!?」
葛西「僕もおりますでー」
どこから話を嗅ぎつけてやってきたのか。
衣笠弥生と葛西宗一郎のジャパニーズコンビがこの場所へ突然現れたのだ。
「貴方達は先日の…」
「また会うたな、兄ちゃん〜」
彼らには見覚えがある。
先日公園で話しかけられた怪しい二人組だ。
「わぁ、可愛い女の子!ナンパしていい!?」
「リツ君、知り合い〜?」
「いや、知り合いという程ではないのだが」
葛西と弥生は寒い外から暖房の効いた暖かい部屋の中へ入ってくる。
「ジムはん。新年おめでとぉございます〜」
「あぁ…っつか、まだ入っていいとは言ってないだろ」
「お年玉、早よ頂戴!」
「新年一発目から清々しいクズ発言だな。大人にあげるお年玉はない」
「いけず!」と葛西がグズグズ騒ぐのを無視し、弥生は雨宮の顔を見た。
「あんさん、自分の作るおせちが世界一やと思てはりますの?」
「…っ。それを言ったのは僕ではないが。
おせち作りに関してはある程度の自信はある。
母国を愛する日本人だ。当然だろう」
「フッ」
「…ッ」
鼻で笑った彼女に対し、雨宮は思わず眉間にシワを寄せる。
「何がおかしいんですか?」
「ウチはな、物心がついた時から親と並んでおせちを作ってたさかい。
慣れん作業に毎年怒鳴られ、そりゃもう正月が嫌になった時もありましたわ。
そうしてウチはおせち作りの技を磨いてきた。
アイドル気取りなエセ料理人が中途半端におせち作って、自信があるや世界一やなんて、笑てしまいますわ」
「なんだと?」
ムッとした表情。
両者の視線の間に火花が飛び散り、周りの連中が驚いている。
ジム「なぁ、なんなんだコレ」
葛西「やよちゃんは毎年正月になると一番燃えるんや。相当自信があるみたいでな。
いつもクリスマスからおせち作ってはりますで」
ビッキー「さすがは仏教の国…」
周りの話す声など当の本人達には全く聞こえていない。
そして先にその話を切り出したのは、ふっかけられた雨宮の方だった。
「わかりました。そこまで言うのならば僕と勝負しましょう」
ジム「え!?勝負?何?どこで?」
「1時間後、我々の事務所へお越しください。会場の準備を整えてお待ちしております」
「望むところや」
弥生の目も燃えたぎってやる気満々。
こうして正月早々、weather life主催、美味しいおせち作り対決が始まるのであった。
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