ビッキーに名前を呼ばれ、前に出る弥生。

雨宮同様、堂々とした足取りで審査員の前に立ち、唐草柄の風呂敷を広げた。


「これが最強のおせちや!驚いて腰抜かすなや!」


華やかに蓋を開け、ついに露わになったチーム衣笠のおせち料理。


バレルは一瞬目を見開き、ジョンは口が半開き状態。

エマに至っては驚いて後ろへ下がってしまった。



「や…弥生ちゃん、これは…」

「ウチが才能があると見込んだ連中が生み出した傑作おせちや」


傑作…というにはあまりに世間離れし、強烈すぎるインパクト料理が数多く入っている。

弥生は早速料理の説明を始めた。


「上の段はあの黒人兄妹に作ってもらった料理や。
最近巷で流行ってる、なんやピルマッケちゅう食べ物で、今回は日本をイメージして砂糖醤油で味付けしてるらしいで」

※ピルマッケ=ボビーの手や頭を使った料理。
体は何度でも生えてくるから心配ないよ!
詳しくは小説「ジョイント」にて。


「それからこっちはエリマキアオザメの刺身とタナトリスの姿フライや。どっちも地球では取れへん珍しい食材らしい。あ、タナトリスは腎臓に毒を持っとるらしいから注意せぇよ」

エマ「………(口を抑えて震えている)」

バレル「2段目…葉っぱしか入ってねぇじゃねーか」


「何を言うてはりますの。これは毒消草や。タナトリスの毒を間違って服用してしもた時の回復アイテムや」

ジョン「1段目の落ち度を2段目でカバーしているのか…素晴らしい。料理人の優しさを感じる」

ビッキー「いや、毒持ってる食材入れなきゃいいでしょ」


「3段目は通称『僕の美味しいおいなりさん』や。意味はようわからへんけど。
毒が体から抜けて健康になれば、僕の美味しいおいなりさんがそりゃもう美味しく食べられるで、僕の美味しいおいなりさんを」

ビッキー「何度も言わなくていいから。てか、毒はもう確実に一度体に入る設定なんだ」




では、実食タイ…



ビッキー「ああっ!1段目を食べた審査員が3人共もがき苦しんでいます!早く!早く2段目の毒消草を!

あっ!バレル君が箱ごと2段目を手に取っ…あああ!エマちゃんが彼の箱を奪おうと飛びかかる!

バレル君、彼女の猛攻を振り切り毒消草を…ああっ!エマちゃんが腕に噛み付いて箱を落としてしまったぁ!

ジョンさん!もがき苦しんだ後、机に突っ伏して全く動きません!」










「「…ゼェ…ゼェ…ゼェ…」」



審査員3人は肩で息をしながら、聖地『僕の美味しいおいなりさん』を食べ終えた。


ビッキー「さ…3人共、大丈夫?」


「「「…………。」」」


誰ひとり返事を返さない。

見ればわかるが、もちろん大丈夫ではなさそうだ。



「そ…それでは。ごほん。ジャッジの時間です!
先程同様、5点満点で札を上げてください!どうぞ!」



バレル【5点】
エマ【5点】
ジョン【5点】



「エエエエッ!!?なんで!?皆毒を食べさせられたんだよ!?」

バレル「…腹は…いっぱいになった…」

ビッキー「もうこの人馬鹿だわ!それじゃ味関係なく後攻の方が有利じゃん!」


エマ「…おい…美味し…かっ…た…で…」

ビッキー「エマちゃん、遠慮してるよね!?誰にでも満点出さなくていいんだよ!毒盛られたらもう0点でいいんだよ!」


ジョン「…ごて?……わっ。…あ…あれ?」

ビッキー「アンタまたぁ!?なんなのよ!点数付ける時ぐらいいい加減起きてなさいよ!」


チーム衣笠の合計点数は15点。

もちろん、この結果にあの男が黙っているはずもない。



雨宮「今のおかしいでしょう!この方々は企画の趣旨そのものをわかっていない!審査員の変更を求めます!」

ビッキー「そんな事言われても…」

「どの目から見たって我々の作ったおせちの方が明らかに美味しく、そして一般的です!」

美空「どちらかと言うとってだけで『一般的』ではないっしょ」

「審査員は部外の第三者が理想的だと考えます。そもそも我々の周りにいる人間は個性が強すぎて、平均的なジャッジなど出来るわけが…」




〜チームこたつ〜

日晴「んぅ!これどっちも美味いっすよ!どっちも勝利っす!」

「あ、響すっ…お前は第三者ではないだろ!勝手に食うな!」

雪之原「そぉだよ〜。新年なんだから仲良くやろぉよ〜。だし巻き玉子おかわりぃ」

「だから勝手に食うなと言っているだろ!」


ナイジェル「やっぱ今年は紅の勝ちだよな。可愛い子が多いからもぐもぐ…」

葛西「そやな。むっさい男観てるより、どうせならかいらしいおなごを観ながら年を越したい…もぐもぐもぐ…ヴッ!毒がっ…!」

「紅白観ながらおせちを食べるなんて、なんて邪道な真似を!せめて蕎麦を食…」


ついに始まった乱闘。

キッチンは破壊され怒号が飛び交い、特別に設営したセットは騒然となった。


サラ「あーぁ…やっぱり最後はこうなるのね」

ジム「そーだな…」

サラ「今年もまた、騒がしい一年になりそうね」

ジム「…………。」


目を合わせるふたり。

ジムはいつものように大きなため息をついた。


「そーだな」









今年も一年よろしくお願いします。



fin


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