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……………
「と、言うわけで!『なんでも屋さん』始めました!」
「………。」
イエーイ、パチパチ♪
声高らかに開業宣言を行った葛西の前で、ジムとナイジェルは呆然と立ち尽くしている。
ここはウィンディランプロバイク事務所出入口扉前。
チャイムが鳴り、たまたまメインルームに居合わせたオッサンふたりが出ると、葛西と弥生のジャパニーズコンビが立っていた。
こちらの言い分など全く聞かず、葛西からマシンガンのように成り行きの説明を受け…
現在に至るという事だ。
ジム「何…?いきなり押しかけて来て」
葛西「だから何度も言うてますやん!『なんでも屋さん』、格好良く言えば『よろず屋』を始めたんですわ」
ナイジェル「つか、お前ら同居してんの?ビッキーから付き合ってねーって聞いたけど」
葛西「何言うてはりますの!僕達は毎晩一緒のお布団でイチャイチャして…」
弥生「気色悪い想像はやめてください。家賃が厳しいさかい一緒に暮らしてるだけですわ」
話の成り行きはよくわからないが、こんな胡散臭い糸目野郎の相手を長々しているとこちらの時間が無駄だ。
しかし「帰れ」と言って素直に帰る奴ではないと、今までの経験から知っている。
『なんでも屋』だかなんだか知らないが、用件だけ済ませればすぐに帰るだろうと、ジムとナイジェルはとりあえず話だけは聞いてやる事に。
「で?具体的に何してくれんの?」
「よう聞いてくれはりました!名前の通り!頼まれれば何の仕事でもやりまっせ!
犬の散歩、お部屋の掃除、オバケの退治からお祓いまで何でも俺に任せてくだせぇ!」
「後半、霊を倒す事しかやってないだろ。しかもそれやるのお前じゃないし」
「オバケは年々進化を続け、今までの封印じゃなかなか退治出来なくなりました!
しかもなんと厄介な事に、1人おったら家の中に30人はおると考えてください」
「ゴキブリか」
関西のボケに対しナイジェルから関西(風)のツッコミを入れられ、葛西は早口な口調で説明を続ける。
「我々の『なんでも屋さん』の依頼はABCコースと三段階に分かれとりまして、お客様のご依頼内容によってどのコースになるか振り分けられます」
「よくわからないな。もう少し具体的に教えてくれ」
「ジムはんは積極的ですなー。
そやね、Aコースは1時間以内に終わる簡単な仕事やな。
茶碗洗いとか肩揉みとか、犬の散歩とか。
Bコースはもうちょい苦労する1時間以上かかる仕事や。
例えば部屋一室の掃除とか、必要用品の買い物とか…あと犬の散歩とか」
ナイジェル「は?犬の散歩はAコースじゃないのか?」
「Aコースの犬は小型犬どす」
ジム「犬のサイズでコースが変わるのか…」
「Cコースはもっと大変なヤツやな。ほぼ丸一日かかる仕事。
赤ん坊やペットの預かり、引っ越しの手伝いとか、あとは犬の散歩」
ナイジェル「犬散歩してばっかじゃねーか。それは大型犬って事か」
「ちゃいます」
ナイジェル「は?だってBコースが中型犬だろ」
「Bコースは中型犬と大型犬や。
Cコースはケルベロスの散歩に決まっとりますやろ」
ナイジェル「ケルベロス!?そんなもん飼ってる奴いねーよ!」
「ケルベロス手懐けんの大変なんよ。なんやエラい凶暴で。まぁ、僕は見た事ないんですけどね。はははは(笑)」
ジム「それはわかったから。犬とケルベロスは分けろ。
ん?肝心の幽霊退治がないじゃん。それはどのコースなんだ?」
「除霊はオプションです。コースとは別で必ず付いてくるサービスで…まぁ言うなれば居酒屋のお通しみたいなもんですわな。料金とは別に1,000円頂きます」
ナイジェル「んな恐ろしいお通し付いてたら、飯食わずに客逃げるわ。それに霊はそんなどこにでもいねーしよ」
「そりゃ一家に30人は居てはりますから。ジムはんのお部屋にもきっとぎゅうぎゅうに詰まっとりますよ」
ジム「そうかー。30人もいたのか、あの部屋ー(棒読み)」
一通り長い説明が終わった所で、区切り付けに葛西は両手をぽんと叩いた。
「という話でぇ…いやまぁ今日もふたりともえらいイケメンで素敵ですね〜。いやー、若々しくてまるで20代のようですわ!」
ジム「俺はまだ20代だ」
「何か困ってる事とかご依頼はありますか??ピッチピチなお兄様方♪」
ナイジェル「その言い方、逆にムカつくんだけど」
手でゴマをする長髪男を前に、首を回してお互い目を合わせるナイジェルとジム。
恐らく「ない」と言った所で何だかんだと言葉を並べ、依頼をするまで帰らないつもりだろう。
「んな急に言われてもなぁ…」
「なんでもええですよ!」
「あ、そうだ。今うちトイレットペーパーが切れてるんだ。近所のスーパーで買ってきてくれないか?」
まるでどこぞの主婦のような提案をしたのは右側に立っているジムの方だった。
その依頼に葛西は待ってましたとばかりに手を上げる。
「トイレットペーパーですね!了解ですわ!あ、銭はちゃんと頂きますよ!立て替えるサービスはありまへんので!」
「はいはい、わかったから。12ロール買ってこいよ。一番安いのでいいから」
「承りましてございまーす♪」
ジムから小銭を受け取り、ノリノリで敷地内を飛び出した葛西。
今まで黙っていた連れの弥生はため息をつき、ふたりに一礼。
そのまま急ぐ様子もなく、歩いて彼の後を追った。
「ジム。トイレットペーパーならまだあるだろーが」
「なんか1個でも注文すりゃアイツも満足だろ。
いつかは買わなきゃいけない物だし店もすぐ近くだ。
これなら一番安いっていうAコースに割り振られるだろうしな」
「なるほど。まぁ…そうだな」
2時間後。
「ゼェゼェ…買ってきました…。疲れましたわ、ほんま…」
ジム「遅いよ!歩いて10分の店だろ?トイレットペーパー1袋買いに行くのにどんだけ時間かかってんだ!」
葛西「いやいや、この州のトイレットペーパー全部売り切れとりまして、隣の州まで買いに行きましたわ」
ナイジェル「オイルショックかよ」
ジム「お前、時間を長引かせるためにわざと隣町まで行ったんだな!」
葛西「売り切れてたもんはしゃーないですやん。というわけでBコース、15,000円+JR代6,000円+バス代400円+お通し1,000円、計22,400円頂きます」
「「帰れェェェエエッ!!煤v」
チリーン♪
毎度ありがとうございます。
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