……………

第二の客・雨宮に逃げられ、仕方なく公園から出た葛西と弥生。

人通りは少なく真ん中を堂々と歩ける道路で、葛西は大きなため息をつきながら後頭部に両手を回した。


「あー…惜しかったなぁ。あともーちっとで良いカモ……客になりそうやったのに」

「カモ言うてるやん」


弥生の反応は真冬のこの外の空気よりも冷たい。

ふたりは同じスピードで並んで歩き続ける。


「宗ちゃんは金にガメツいのが雰囲気でバレバレやねん。もっと人の役に立ちたい精神を糧に真面目に依頼内容に励めばええんや」

「失礼な!ちゃんと思てますわ!人の役に立ちたい!人を救いたい!僕は全ての命が幸せになる日を年中願っとるさかい!」

「胡散クサ」

「もー、やよちゃん冷たい!」


抱きつこうとすると、細い体にスルリとかわされた。

さすがは昔から長年一緒にいるからか、かわし方さえ慣れている。

ふたりは小さな駐車場、古いアパートを通り過ぎた。



「あ、そういえば思い出した」

「何?やよちゃん」

「さっきの雨宮っちゅー男。weather lifeのギター弾いとる奴や」

「え?何?うぇざぁ?」

天気?雨降んの?と葛西の頭にたくさん「?」が浮かぶ。

変な情報はたくさん知っているのに、逆に一般市民が普通に知っている事を知らなかったりするこの男。

まぁ昔から金にならない物事には、あまり興味がなかったからな。


「ウェザーライフ。知らへんのか?テレビにもしょっちゅう出てる有名な音楽バンドグループや。なんやどっかで見た事ある顔やと思ったら…」


「…………。」



「宗ちゃん?」



「ホ…ンマかいなァァァァアア!!!!!?」


周りの人や犬が振り返る大声リアクションで、彼はすぐに弥生の肩を掴んだ。


「やよちゃん、なんでそない重要な事早よ思い出さへんねん!
有名人っちゅー事は金も仰山持っとるやろーし、サインだって貰とれば高ぅ売れたかもしれへんやん!

あああああ!なんたる損失!なんたるミステイク!
葛西宗一郎…人生最大の失態やぁ…」

「人生最大の失態は飲み屋のねーちゃんに大金渡した事やなかったっけ?」

「今現在をもってトップは入れ替わったわ…
金が……世の中のねーちゃんをたぶらかす大金を目の前で逃してしもた…」

「ホンマ宗ちゃんは救いようのないクズやな」


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