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……………


「んぅうう……あれ?」


目の前に広がるのは赤一色の夕暮れ。

そして僕、足を動かしてないのに何故か体は前に進んどる…?


あれ?

これってもしかして…!

もしかして僕ついに…!!



「と…飛んでるんやぁぁぁッ!!!」


弥生「ちゃうわ。ウチがおぶってんねん」


声が聞こえて視線を動かすと、顎の下には見慣れた小豆色の髪が。

彼が足を動かさずに前に進む事が出来たのは、彼女がおんぶをしているおかげだ。


「あ〜、やよちゃん!僕が寝とったからおぶってくれはったの?おおきに♪」

「喜ぶ前に自分のなっさけない今の状況を嘆いたらどうや?」

「だってやよちゃんにおんぶされるなんて久しぶりやもん!ほんま嬉しいわぁ(顔スリスリ)」

「ちょいと投げ飛ばして飛距離でも測ってみよか…」



自分より身長も体重もない女子におんぶをしてもらい、葛西はそれでもそれを全く恥ずかしいと思っていないらしい。

男をおぶった弥生は人通りの少ない河原を歩き続ける。



「あ〜!それにしてもなんや頭がスッキリして清々しい気分やわ。夕日も燃えるように赤く見えるさかい!」

「そりゃ顔面血だらけやからな」

「体も軽い軽い!身軽やわ!」

「ケルベロスと遊んで、腕一本くらい無くなってんとちゃう?」


何を言われても動揺せず、「重い」と文句も言わず。

上で浮かれている男を背負い続ける。


「で?これに懲りて、今後少しは真面目に働く気になったか?」

「んー…そぉやねぇ。やっぱり『なんでも屋』っちゅーても収入は安定せぇへんしなぁ」


しかしながら、今回の件で若干ではあるが葛西も懲りたようだ。

期待していた答えが返ってきて、弥生も安心のため息をつく。



「そか。まぁ一緒に暮らしてる以上、宗ちゃんが借金まみれになられてもウチが困るからな」

「え!って事は僕をやっと養うてくれる気になったん!?」

「誰もそこまでは言うてへんやろ。家賃を割り勘にするためだけや」

「もうこの際、僕達結婚しちゃいますか?ほとんどカップルの同居生活みたいなモンやしな!」

「…………。」

「…あれ?やよちゃん、怒った?なんで返事してくれへんの?」

「怒ってへん」

「怒ってるやん」

「うるさい、ウチは…」


「あー、そうなってくれるなら、僕も本腰入れて次の『背後霊も取れてスッキリ!除霊オプション付全身マッサージ業』も頑張ってやっていけそうやわ!」


「…………。」


再び黙り込む弥生。

葛西は「ん?」と上から顔を覗いた。


「あれ?何?また怒ってはるの?」

「…怒ってはる」

「またまた〜!ついさっき可愛い顔で『ウチ、怒ってへんもん!ぷんぷん!』て言うたばっか…」








ガシャァァァァアンッ!!!!












葛西君の飛距離

記録:8m41cm




fin


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