……………


あのラブレター事件から数日後。







ガチャン



「お疲れ…さま…です」

「あ、エマさん、お疲れっす!」

「♪」


こちらを見て無邪気に笑いかける日晴君に、スマートに手を振るクラウディ君。

やっぱり同い年には見えない。

あの日以降、私の学校のロッカーに手紙が挟まっている事はなくなった。

今の所は幸運なのか向こうが私を避けているのか、あの男性を見かける事もない。


事務所へ無事に辿り着いたエマは、鞄をテーブルに置いた。


『エマ。考えて欲しい詩の題材がある』


雨宮に声をかけられ、内容について詳しく説明をされる。

やっと普段通りの毎日に戻ったのだ。

手紙を貰える事は嬉しいけど、でももうあんな経験は懲り懲りだ。

最近は増して平凡な日常が一番だと思える。



あれ?そういえば…


「なお…と…君は?」


一番賑やかな彼の姿が珍しく見当たらない。

雨宮君といつも学校から来てるはずなのに何でだろう。

「あぁ…」と低い声を漏らし、携帯を打ち込む雨宮。


『今日は奴に逃げられた。少し遊んだらそのうち来るだろう』

「たい…へ…んだね」

「全くだ」


疲れ気味にため息を漏らし、珍しく中指で眼鏡を中心から持ち上げる雨宮君。

毎日学校が終わったら、七音君を走って捕まえてここまで来てるのかな。

七音君、時間を守らない事が多いから苦労してるんだろうな…





ガチャン



「お疲れ…」


扉が開いた瞬間、全員の視線が向かう。

遅刻の張本人、美空だ。



「七音!お前、よくも今日は……っ…」


早速叱ろうと雨宮が近づくが、ふと違和感を感じて台詞が止まった。


「………。」


美空の…

あのいつも馬鹿みたいにうるさい美空のテンションが、今日は地面にまで落ちてしまう低さなのだ。


「七音…?どうした?」

「いや…あのさ…」


テーブルに鞄を置き、中をガサガサと漁ると

現れたのは何通かの封筒。


まさか…




【ずっと見つめています。
七音君は私のプリンスです。
連絡ください。連絡先…】


【どうして連絡をくれないんですか?
私はこんなに待っているのに。
早く連絡ください。連絡先…】


【いつまで待たせる気ですか?
ファンにこんな仕打ちをしていいんですか?
このまま連絡をくれなきゃ事務所に押しかけます。
愛しています。
早く連絡ください。連絡先…】






「「……………。」」




手紙の内容を見て固まる5人。



「よ…よかったじゃないすか…。女の子からのラブレターっすよ…」

「ふざけないでよ!この間エマちゃんの問題がやっと解決したと思ったばっかりなのにさ!
ねぇ、ユキ!僕に女装してまた断ってきてよ!」

「なんで女装?」

「あーもぉ!ラブレターなんてもういらない!!」


美空はなんとも贅沢な台詞を大声で言い放って、勢いよく手紙を破り捨てた。

恋は諦めも大事です。



fin


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