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……………
今日は飲酒をするので、バイクではなくタクシーでの移動。
ナイジェルが運転手に行き先を指示し、走り出して数分後、あまり入らないネオン街へ風景は変わっていく。
彼がこんな場所の店を指定するとはかなり珍しい。
あっという間に目的地へ到着し、代金を支払ってふたりは車を降りた。
「………。」
辿り着いたバーを見上げるジム。
ピンクと黄色のライトで彩った派手な看板の店。
その名も『☆★Rose Night Carnival★☆』
その第一印象を素直に口に出した。
「ド派手だな…」
「ド派手だな」
「え?今日の店ってここ?」
「そーだ」
クールで大人なナイジェルのイメージには全く結び付かない店の雰囲気。
とてもじゃないがジムだってこんな異様な店は入った事がない。
「なんか高そうじゃないか?俺そこまで金持ってきてないんだけど」
「金の心配なら今日はしなくていい」
「え?何?ナイジェル奢ってくれるの?」
「入りゃわかる。いいから付いてこい」
言われるがまま彼の背中を追う。
ドアノブをひねり、それを引いた。
謎めいたド派手なバー。
一体その正体は…
ガチャン。
オカマA「いらっしゃいませー!あっらー!ナイジェリーナ、来てくれたのぉ!」
オカマB「やだぁ、待ってたわよ〜!」
「………。」
目を点にして、まるで銅像のように動かなくなってしまうジム。
そこにいたのは、女の格好をした
男
男
男
ここは大人の男女が酒を酌み交わすアダルトな空間ではない。
オカマが溢れ、オカマと酔いしれ、オカマと盛り上がる、今話題沸騰中のオカマバーだ。
「よぉ、久しぶりだな」
「もーぉ!いつ来てくれるかって待ちくたびれちゃったんだからぁ!」
チャイナドレスを身にまとったジョリジョリ髭の金髪美女(?)がナイジェルの胸に抱きつく。
続けざまに抱きつくのは、ゴボウのように痩せ細ったドレスの美女(?)
スキンヘッドに顎髭を蓄えた、某サーカス芸人のようなガタイの良いオカマ。
状況に付いていけないジムは、脳内整理が追いつかずにフリーズ状態だ。
瞬きさえ忘れて目が乾燥してしまった。
「ナ、ナイジェル!なんなのこれ!?聞いてないんだけど!」
「バーだっつっただろ」
「オカマがいっぱいいるバーとは聞いてないよ!何お前!?こういう趣味があったの?」
「いやそれが前に社長に無理やり連れて来られたら意外と面白くてな。
今日はどうしても社長が来られないらしーからお前を連れて来ようと思って」
「そんなの、ひとりで来りゃいいじゃん!」
「詳しい事は後からわかる。いーから中に入れ」
腑に落ちないジムはナイジェルに連れられ、指定された真っ赤なソファーに座る。
キラキラのミラーボールが頭上で回る空間はまるでディスコ。
赤や緑のライトに溢れ、BGMはどこかで聞いた事のある激しい洋楽。
そして周りを取り囲むオカマ軍団。
落ち着かない…。
ヤバい連中に拘束されているようだ。
…と、ジムは思った。
「あんら、ナイジェリーナ、その坊やは新入り?お名前は?」
「俺の仕事仲間だ。業界では割とベテランだが、この世界では新入りだな。名前はジム」
「ジ…ジムです」
「やんだ、可愛いじゃない!アタシ、食べちゃいたいワン♪」
とてつもない身の危険を感じる。
…とジムは思った。
「それじゃ、早速貴方のローズネームを決めなきゃね!」
「ローズネーム?」
「この店ではローズネームっつーニックネームみてぇなモンを決められて、客は全員その名前で呼ばれんだ」
「で、お前はナイジェリーナ?」
「優雅だろう」
「おえっ」
なんだかこのオカマバーは普通のバーとは違い、色々とおかしな決まり事がある様子。
そういえば最初にナイジェルが言っていた「女人禁制」も、そういう決まりなんだろう。
「…というわけで皆で相談して新入り君のローズネームを考えてみました!」
「新入り君のローズネームはぁ…ジャラララジャン!『ジミー』に決定よぉ!」
「結局!?相談してそれかよ」
ナイジェル「良いネームじゃねーか。『プレジデント』よりマシだ」
「プレジデント!?何それ、誰の名前!?」
「うちの社長」
「いきなり生々しすぎだろ!」
※プレジデント…大統領
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