……………


再びやってきたド派手な扉の「エルヴェのお部屋」

慣れてない人間からすると、ピンクやらゴールドやらの激しい発色で目がチカチカする。

今度はジミーだけでなく、全員で集まってエルヴェさん本人から直接話を聞く事にしたようだ。


「エルヴェさん!アタシ達、貴方の恋の力になりたいの!」

「その彼…フラれちゃった男…どんな人だったか教えてもらっていいかしら?」


要は好きだった男のポイントを抑え、似たような男を探せばいい。

ナイジェルの作戦に従ってオカマ達が扉に向かって訊いてみると、か細い声で返事が返ってきた。


「とても…素敵で…まるで王子様みたいな人だったわ…」

「王子様と言うと具体的にどんな感じ?デオンテイ・ワイルダー系?ジェームス・マクドネル系?」

「なんで王子様がボクサー限定?」


書記係のジムがボソッと突っ込む。


「どちらかというとマイケル・モーラー系ね」

「誰だよ」


ただの見物人のナイジェルもボソッと突っ込む。


「アタシはその肉体美に圧倒されたわ…。美しい上腕二頭筋、盛り上がった背筋、板チョコを連想させる腹筋」

「板チョコを連想させる腹筋…」

「輝ける瞳がルビーのように美しくて…」

「綺麗な瞳…」

「紳士的な優しい言葉使い…」

「紳士的な言葉使い…」


ペンを進めていきポイントを抑える。

確かにこれなら、その辺のトレーニングジムをまわれば、なんとか似たような人物は見つけられそうだ。

人の良さそうな筋肉質の男性を連れてくればOK。



「アタシは彼に一目惚れし、そしてすぐに告白したわ!この人も絶対アタシの事を好きだと信じてたのに…それなのに…

あの人…女が好きだなんて言うのよ!煤v


ナイジェル「まぁ普通だわな」


「アタシは今でも彼にアタックし続けてるわ!メールや電話を鬼のようにし続け、彼の好きそうな大人の玩具を送りまくってるの!」


それはさすがに逆効果じゃないのか。

オカマって怖い。

ヒートアップしてきたエルヴェさんをドア越しにジムが宥める。



「まぁまぁ、エルヴェさん落ち着いて」

「アタシはこんなに愛してるっていうのに!ウガァァッ!煤v


ガシャン!ガシャン!

扉の向こうで器物を破壊する音が聞こえる。

オカマって怖い。

これはかなり重症だ。


「エルヴェさん!」

「あぁ…早く貴方に抱かれて…そのタイツごと身も心も引き裂きたいわ…」












「「…………。」」









ピタリとペンが止まるジムに、目を見開いて言葉を失うナイジェル。


「…え?あの…ごめん…聞き間違いかもしれないけど。何?今タイツって言った?」

「当たり前でしょ!タイツよタイツ!全身にピッチリとフィットした全身タイツよ!!!」





カラッ…



ジムの落としたペンの音が廊下に悲しく響く。






最悪。


知り合いだ。


ドアから離れるふたりに異変を感じた他のオカマ達。


「どうしたのよ?」

「い…いや…」



脳内に同時に蘇ってきた、つい先程の記憶。

今日のアイツの姿。

…何度もアタック?電話?

「呑みに」と聞いた瞬間、途端に奴は顔が青ざめて、わかりやすい程挙動不審になっていた。

まさか…まさかとは思うが…。


愕然としてしまっているジムとナイジェルをよそに、ドアの向こうからエルヴェさんの叫び声が止まらない。


「それに…信じられない事に彼…『ビッキー』とかいう彼女がいるらしいの!

許せないわ…アタシ、その女を見つけたらすぐさま抹殺してやる…」


確信した。

もう絶対に間違いない。

しかも勝手にを、自分の彼女に設定してやがる。


「えと…え、エルヴェさん?あの…その人の名前なんですけど…。
もしかして『ボ』から始まる名前じゃないですか?」

「………。」









ガチャン!!!!




「「キャァッ!」」




勢いよく扉が開くと、傍にいたオカマ数人が同時に吹っ飛ばされる。



「アナタ!まさかボビーちゃんを知ってるの!?」



ついに現れた噂のエルヴェさんご本人。

ようやくその姿を目にしたと同時に、男達は驚いて固まってしまう。


「えっ……あ…」

「………。」


クリーム色のパーマがかった髪に両耳の銀ピアス、周りの男臭いオネェとは比べ物にならない。

ドアの向こうから聞こえていた奇人話の内容と結びつかず、ただただ呆然としている。

いや、むしろ…

ビッキーより美人じゃね!?


暇もないまま、近くにいたナイジェルがその男…というかオカマに胸ぐらを掴まれる。


「答えなさいよ!アンタ、ボビーちゃんの一体なんなの!?」

「なんなのって…俺達、アイツとバイクスタントマンやってる同業者で、一緒に住んでます」

「同棲ィィッ!!?」

「ごめんなさい、寮生活してるだけです、そういう意味じゃありません、ごめんなさい」


のめり込んで近づいてきたその顔の破壊力に、あのナイジェルでさえ怖くなって一歩身を引いた。



「まさか!貴方、ボビーちゃんが言ってた男!あのタバコの貴公子・ナイジェリーナだったの!?」

「ま…まぁ…そうです。ちょっと表現おかしいけど」

「そして貴方は…その外見からして…ボビーちゃんが言ってた男!THE、俺の配下・ジミーね!?」

「あんの野郎!外では俺の事、配下とか言ってんのか!怒」


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