……………

初日の研修が終了したのは夜の8時だ。

3人が向ったのはリッキーが言っていた料理が美味しいと評判のホテル。

高級とは呼べない比較的小さなホテルだったが、噂通り地元の食材だけを使用した自慢の料理がテーブルに並んだ。

特に地元牛のステーキが美味しくて、まさにテレビでよく言う「噛まずに溶ける食感」

あんなの嘘だとナイジェルが言って食べた時の顔が面白くて一時忘れられそうにない。

普段ファミレスに通っているような3人にとってはこの上ないご馳走で、あの細身のリッキーでさえペロリと平らげてしまった程だ。

とにかく満足、このネットの評価というのは信憑性があるものだったよう。



















「ったく、なんで俺がこんな小僧と寝なきゃならねんだ」

食事を済ませ、指定された部屋へ向かう途中に文句を零すのは最年長のナイジェル。

その隣をリッキー、サラと続いている。


「あれ?一緒が不満なら、俺はサラのお部屋に行きますよ?」

「なんでそーなる?もっとダメだろ」

「大丈夫よ。どっちが私の部屋に来た所でトイレで寝てもらうから」

「リッキー君、一緒にふかふかベッドに寝よう」



ホテルの部屋の予約は、事前に理事長が取っていた。

ナイジェルとリッキーがダブルの部屋で、サラがシングルの部屋だ。

流石に男女を分けた辺りは、あのオジサンも気を利かせたのだろう。

受け取った部屋の鍵番号から見る限り、隣同士の部屋のようだ。



「305と306…ここね」


エレベーターを降り、番号と同じ数字の札が貼られている扉の前に到着。

3人が顔を見合わせるとリッキーが口を開いた。


「明日は7時から朝食ですので、寝坊しないようにしてくださいね、サラ」

「えぇ。リッキーも寝ぼすけさんを起こすの頑張ってね」

「ひでぇ言われようだな」


クスッと笑い、リッキーは持っていた鍵で305号室の扉を開けた。


「それじゃ、おやすみなさい」

「寝坊すんなよ」

「貴方に言われたくないから。おやすみ」


彼らは揃って部屋の中に入っていく。












「  ナイジェルもリッキーも、ずっとお前の答えを待ってるんだって  」













何度も思い出される、出張前に言っていたジムの言葉。

今だってふたりの姿を見て考えてしまった。

本当に私達皆で一緒に過ごしてる間、ふたりの態度は今までと何も変わらない。

ひっそりと聞かされた彼らの本音。

思い出す度に、やり切れない息が詰まる気持ちに何度も襲われた。



私は…




一体何をしてるんだろう。




ガチャン。



静かに306号室の扉が閉まった。


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