「 今はもう全部思い出してるよ 」


















羊が1967匹。

羊が1968匹。

羊が1969匹。



「…………。」




一体何匹の羊を数えれば私は眠る事が出来るのだろうか。

脳内は大型ムートン牧場。

もう2000匹以上は私の牧場に入り切らない。




「ん…ぁ…もう」




ムツゴロウ王国が出来てしまう前に目を開けて、サラは上半身を起こした。


普段から夜更かし気味だったから、こんなに早い時間に寝るのも慣れてないし

…何より途中でまたあの言葉を思い出してしまっている。

ボリボリ頭を掻くと視線は自然と窓へと向かった。


時間はまだ12時にもなっていない。

昨日に比べたら全然早いし、早く寝なければ明日起きられないかもしれない。

仕方ない。今度は別のものを数えながら寝よう。

もう羊はやめだ。

なんだろう…アルパカとかの方がお洒落で良いのだろうか。











コンコン






「……っ」





もふもふの姿を想像している途中、扉を叩く音が聞こえた。

誰?こんな時間に。


怪しい目でその扉を見ると、もう一度同じリズムが部屋に響いた。

ホテルの人間だったら何か言ってくるだろうし、突然見知らぬ人間が訪ねてくるとも考えにくい。


…頭に昨日の男の顔が浮かんだ。


もしかして…


再び上半身を起こして扉に向かう。

そうであると思い込んでいた彼女は、すぐに鍵を開けた。




ガチャン



「…ッ」


見上げた先に立っていたのはひとりの男。

返事もしないで出てきたサラに対し、彼は思わず苦笑いを浮かべた。


「リッキ…?」

「はは、不用心ですよ。誰かも確認せずに開けるなんて」



やってきたのは、今日一緒に新型バイクを見て回った記憶が新しいリッキーだった。

彼もまた昼間のスーツではなく動きやすい部屋着に、シャワーを浴びた後なのか髪から良い香りがする。

こんな時間にどうしたのだろうか。



「ご、ごめん」

「いえ、こちらこそ夜分遅くにすみません。もう寝てましたか?」

「ううん、なかなか寝付けなくてね。ベッドでゴロゴロしてた」

「そうなんですか。偶然ですね、俺もなんとなく寝付けなくて同じような感じでした」

「珍しいわね、いつもコロンと寝ちゃうのに」

「そういう時もあるんですよ」


いつも通りヘラヘラ笑い、再び彼女の顔を見る。


「ナイジェルは窓側でずっとタバコを吸ってて全然相手にしてくれないし。
ひとりもなんだから一緒に外を歩きませんか?」

「え?」

「嫌ですか?」

「いやち、違うの。…そうね。私も少し外の風にあたろうかな」

「良かった♪」



嬉しそうな反応のリッキー。


突然どうしたんだろう。

こんな時間に一緒に外へ行こうなんて誘われたのは初めてだ。

単純に寂しがり屋な性格だから、ひとりで歩き回るのが嫌だったのか。もしくは怖かったのか…

それと同時に今日の新型バイクを見た後の帰り際。

一瞬見せたこの子の表情を思い出した。



「10分後にまたお迎えに来ます」


そう伝えられ扉は閉められた。


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