……………


「ゲホッ!ゲホッ!あぁー、えらい目に遭ったぁ」


黒こげになった車から出てきたのは、何故か元気に生きて地上へ這い上がってきた美空。

日晴も地黒な肌がさらに煤で黒く、雨宮も眼鏡が破損し、クラウディはテンパが爆発。

無傷なのは雪之原だけだ。

バイク組もサラとビッキー以外のナイジェルとリッキーとボビーは、体や服がボロボロの状態で帰還。


もちろんこんな破滅的状況に黙っていられないのは、この学校の第一人者だ。


「どういう事だ!?何なんだ一体君達は!」

「ゲホッ!いや、だって俺達まだ免許取ってないっすし」

「そういう問題ではない!ハッキリ言わせてもらうが、こんなに出来の悪い生徒は初めてだ!!」

美空「だって普通にやってちゃ、オチが作れないじゃん」

教官「オチって何ですか?そんな大人の事情を説明されても」


学校の教習車が4台も破壊されたのだ。

頭に血が上った校長は、weather lifeの5人を激しく叱責する。



「生徒も教官もろくな奴がおらん!お前らはもう他の学校に行け!迷惑だ!」

「えぇ、そんなせっかくここまで通ったのに〜」

「そんなんこっちの知った事か!」


美空が残念そうな顔をしても、意見を変える気配はない。


「今回の件は大変申し訳なく思っています。もちろん車の修理代等もきちんと払わせて頂きますし、今後はこのような事のないよう…」

「うるさいと言ってるだろーが!!」


謝りに前に出る雨宮に対しても、肩をドンと押し出し横暴な態度に出る。



「校長先生、落ち着いてください」

「そうですよ。この子達まだ高校生なんで…」

「邪魔をするな!大体アンタ達も黙って後ろで見てるだけだっただろーが!
何がプロだ!?笑わせる!」


サラやリッキーが仲裁に入っても、まるで効果がない。

出会った時の優しい姿とはまるで別人のようだ。


「校長。一応彼らは生徒ですから…」

「そんなの関係ない!お前らもクビにされたいのか!?こんなんがいたんじゃウチの学校の評判も落ちるだろ!?」

「しかし」

「本当に申し訳ありません。今回だけは…」

「うるさい帰れ!!」


まるで聞く耳を持たない校長に、weather lifeのメンバーもさすがにどうすればいいかわからない様子。

周りの教官も誰も止められず、ヒステリックになったおじさんにサラ達もお手上げ状態だ。

このままでは本当に美空達が退学にされてしまう。

そんな良くない空気が漂い、半数が諦めかけていた時だった。










「あははははぁ」










ひとりの男の気の抜けた笑い声。

ふと、全員の視線が集まる。



「な…なんだ、君!何を笑っている!?」

「いや別にぃ。勝手にそんな事決めちゃっていいのかなって思ってぇ」


仕掛けてきたのは、5人の中で唯一事故を起こさなかった生徒。

雪之原奏。

彼は何の心配もなくヘラッと笑っており、その表情にはまるで緊張感がない。



「勝手にって…私はこの学校の校長だぞ!?お前ら生徒に物を言える権利が…」





「この学校、生徒にレイチェルさんっていますよねぇ?」


「……ッ…」





その名前を聞いた途端。


先程まで止まらず動いていた口が止まり

まるで人形のように相手の男は動かなくなる。



「えっとぉ…確かフルネームはレイチェル・フラットさん。20歳の大学生。茶髪のロングヘア。担当教官はサイモン先生だったかなぁ」

「し…知らん!」

「あれぇ?校長先生なのに生徒の名前を把握してないんですかぁ?
彼女は運転技術は試験合格レベルに達しているにもかかわらず、不必要に何度も補習をされてるみたいですよぉ?…特別に教えてるの誰でしたっけぇ?」

「し…知らんと言ってるだろーが!!」




この瞬間。

weather life、そしてウィンディランのメンバー全員が悟った。


これは、あの世にも恐ろしい雪之原奏の秘技。


この校長……確実に終わった。






「あはは、まだいますよぉ。先月入校した18歳のアーサー・フロレンさん。その子はある人から執拗に食事の誘いを受けてるようですよぉ。
それから21歳のリンダ・ハイドンさ…」


「だか…そんな奴ら私は知らんと言ってるだろーが!デタラメな言いがかりはやめろ!!
どうせこいつら男の教官がやったに決まってるだろーが!」

「へぇ、そうなんだぁ。送られてきたメールも全部印刷して僕持ってるんですけどぉ」


どこから取り出したのか数十枚の印刷用紙に、校長の顔は真っ青に変わる。




「はぁっ!?ちょっと待っ…どうい…なんでお前が!?」

「それから卒業生のポーラ・リフさん。彼女は…」


「待て!待てと言っているだろ!!煤v


襲いかかってきた校長も軽い身のこなしでかわす雪之原。

それでも彼の口は止まらない。



「彼女は一時期、ある人物から家まで付いて来られるストーカー行為を受けていたみたいですよぉ。ほら、これがその時の写し…」

「やめろ!煤v


「怖いですよねぇ。あとココの女性教官のアイ…」

「やめ…やめろぉぉお!!煤v


「ちなみにこれが貰ったラブレターのコピーですよぉ。数十枚ある内の一部ですけど。
人数分印刷したんで、皆さんもよかったら」


「やめろ!!!やめてくれぇぇ!!!!!」











ドサッ!



(チーン)




容赦ない生徒の猛攻に、校長である彼はあっさり撃沈。



「あはは。大声で喚き散らすだけで、口ほどにもないねぇ」

なんて笑いながら悪そうな笑みを浮かべ、雪之原は手紙や写真を懐へ仕舞う。

見慣れているメンバーはともかく、周りの教官は狂気を感じてドン引きしているのは無理もない。



サラ「ふふ、やるわね。さすが雪之原君」

「まぁねぇ」


どうやらこれで退学という最悪な事態は免れたようだ。

その事実にホッと胸を撫で下ろす仲間達4人。

普段は何を考えているのかわからず怪しい存在だが、こういうシーンでは最も頼りになる男。

ところで、どこでこの極秘情報を掴んできたのかは、結局誰にもわからないが。




サラ「それじゃお約束のアレ……やりましょうか」

雪之原「あはは。そうこなくちゃ」











「校長!校長危篤よ!!
リッキーは止血準備、七音はAED用意!
ナイジェルとビッキーとボビーと雪之原君と日晴君とクラウディ君と私、教官さん全員で119番通報しに行くわ!」

雨宮「貴方達、一体救急車何台呼ぶつもりですか!?」


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