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「はぁ…俺ってばこのキャラ向いてないのかな」

周りに誰もいないとわかって、一人この顔に似合わない花束を買いに行く。

皆凄いよなぁ…あれが生まれ持って身についている才能なのか。

しかもそれに全員気づいてない。

俺って何か取り柄や才能はあるのか…

物を壊す事くらいしか思いつかない(いつもごめん)

笑っている中で、少しだけ周りに嫉妬して劣等感を抱いている自分がたまに嫌になる。


…引退。


さっきの雨宮さんの言葉が、頭の片隅からなんとなく離れなかった。





「……ここか」



俺の暗い気を紛らわせるように、LINEで教えてもらった花屋へようやく到着。

存在は知っているものの、花とは一切縁のない生活をしてきたこの俺だ。

こんな場所に足を踏み入れた事なんてないし…ちょっとだけ緊張する。


「いらっしゃいませ」


勇気を出して中に入ると、色んな花の香りと共に女性の店員が出てきた。

エプロンを付けて髪を1つにくくった、少し年上くらいの黒髪の女性店員だ。

「えっと…プレゼント用に花束が欲しいんすけど…」

「プレゼント用ですね。ご希望の花の種類とか、どんな色でまとめたいとかありますか?」

「えー……お店の人にお任せします」

「わかりました。得意なスタッフがいますので、少々お待ち下さいね!」


女性店員はニッコリ笑って一旦その場を離れる。

はぁ。

気分が落ち込んでいたけど、こうやって花に囲まれた空間にいると少しだけ落ち着くなぁ。

こんな事言える見た目じゃないけどさ。


店内も淡いクリーム色と白で統一されたようなスッキリした綺麗な空間。

商品として売られている花も、まるで部屋を彩る飾り物のようだ。




「鈴(りん)ちゃーん」


裏口に入り、先程の女性店員が誰かを呼ぶ声が聞こえた。


そして少しして、その人は出てきて





「……っ」


横に飾ってあった名前もわからない花から視線を戻した瞬間。





俺は無意識に息を呑んだ。






「お待たせしました!プレゼント用の花束をご希望ですか?」







俺の目の前に現れたのは、高校生くらいのアルバイトの女の子だった。



肩くらいまで伸ばした栗色の細い髪。

それの髪を束ねるサイドのリボン。

ブラウンの瞳。

華奢な体と白い肌。




「……………。」


「どうかされましたか?」

「あ”っ、い…や何も!!”」



思わず変な声が漏れてしまった。









か………





可愛い………






とんでもなく可愛い。




今まで悩んでいた事が、一瞬で全て吹き飛んでしまう程の衝撃だった。



世の中にこんな綺麗な人がいるのか?


職業柄、今まで女優さんとはたくさん会ってきたが


そんな人達とは比べ物にならない程だった。


単純に俺の好みど真ん中の女性なのか…



「では、お花を選んでいきますね!お世話になった方へのプレゼントであれば、今までの感謝の気持ちをこめて明るい色のお花がいいと思います。
例えば…」


俺の頭の中の方が完全にお花畑になっている中で、彼女はテキパキと花を選んでいく。


「このアネモネは良いと思います!!白のアネモネの花言葉は「希望」。ぴったりだと思いませんか?」


声や話し方まで可愛い。

そんな子がこんな背景に花を浮かべて、こんなに綺麗な花を持ってるんだ。

俺には絵画のように見える。


「あ、あと僕このお花も好きなんですよね。香りも良いですし」


自分の事を「僕」と言っているんだ。

いわゆる僕っ子ってやつか。

そういうのも……有りだな////


楽しそうに花を選ぶ彼女に、俺の視線は釘付けになっていた。











「出来ました!いかがでしょうか?」

「わぁ…」


すっかり彼女任せにしてしまっていたが、改めて完成した花束を見てみると、色や大きさのバランスがとても良い。

それに話によると、縁起の良い花言葉の花もたくさん入っているらしい。

こんな所にまで気を配れて綺麗にまとめられるなんて、さっきのスタッフさんが言っていた通り、この子はこういうデザイン的な技術があるんだ。


「凄く……良いと思うっす」

「ありがとうございます!喜んで頂けて嬉しいです!ではお会計の準備をしますので、少しお待ち下さいね」


ふと気になって彼女の付けている名札を見てみた。



『藤原』



そう書かれていた。


彼女の名前は「藤原 鈴(ふじわら りん)」


絶対に忘れられない名前になる。


そう確信した。




手早く会計を済ませる彼女に対し、もう帰らなければならないのかと名残惜しくなってしまう。



「ありがとうございました!また是非お越しくださいね!」

「は、はいっ…ありがとうございました」



結局最後まで口数少なく気の利いた言葉も出てこず、花束を受け取って店を出てしまった。



ドクッ…ドクッ…


まだ心臓の鼓動が早い。

花束から漂う優しい香りを鼻に感じながら、


俺は何度も店を振り返り、事務所へと戻る。



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