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先日渡した花束は、大層喜んで貰えたようだ。
長年務めた業界を引退するという事もあってか、感情が溢れていたのかもしれないが、それにしてもあの花束はとても美しかったとメンバーにも高評だった。
そして俺の中では、その度に何度も彼女の顔が頭に思い浮かんでいた。
また、会いたい。
だけどそう何度も花屋に用があるはずなんてないし。
花を買いに行くにも、この間のように何か理由がないと恥ずかしくて行ける気もしない。
店の前を通り過ぎるフリをしてこっそり覗くか?
…いやいや、それこそストーカーだ。
通報でもされたらどうするんだ。
「あっ、雨宮さん」
「ん?なんだ?」
廊下ですれ違った雨宮につい声をかけてしまった。
「あ……えっと…その…
また…花を買いに行く用とか…ないっすよね?」
「…?別にないが。なんだ?お前そんなに花が好きなのか?」
「へっ…?いや、そういう訳じゃないんすけど…」
思わず目を逸らす日晴の表情を不思議そうに見ている雨宮。
「いや、やっぱりいいっす!忘れてください!」
「あ、クラウディ」
「クラッ…?…わっ!!」
気がつくと背後にクラウディさんが立っていた。
190センチとこんなデカい図体なのに、どうやって気づかれずに俺の後ろに来たんだ?
ふと彼は廊下の向こう側を指差す。
あそこにいるのは、忙しそうに仕事の電話をしているマネージャーの五十嵐さんだ。
「五十嵐さん……。あ、そうだ」
その姿を見て思い出したように雨宮が口を開く。
「そういえばあの人、今日は奥さんとの結婚記念日だからプレゼントを買いに行かなければと言っていたな」
「そ、そうなんすか」
「それが毎年毎年言ってるんだがな。この忙しさだろう、いつも忘れて帰って叱られるのが定番になっているらしい。
響介、代わりにフラワーアレンジメントでも買っといてやったらどうだ?」
「へ?俺がですか?」
雨宮は腕を組んでくすっと笑う。
「あの調子だと絶対に頭の中から抜け落ちてるだろう。たとえ思い出して自ら何か買ってきたとしても、花であれば綺麗だし部屋に飾っておいて無駄にはならない。
それに、花屋に用がないか探してたんだろう?」
「えと……まぁ、それもそうっすけど…」
隣でクラウディさんも笑っている。
さすが…隙がないというか、よく気づく人だ。
「じゃぁ決まりだな。代金は僕が立て替えてやるから、おつかい頼んだぞ」
「はっ…はい!」
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