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案の定、五十嵐さんは夜まで結婚記念日を忘れており、予め用意しておいたフラワーアレンジメントに大感激。

それを持ち帰り奥さんにプレゼントした所、予想以上に喜んで貰えたと後日雨宮さんから聞いた。

あれも凄く綺麗なデザインだったからなー。

花に詳しくない俺でも、あの藤原さんに花選びやまとめ方の才能がある事は納得が出来る。


でも…さすがにもう花を買いに行く理由はないな…


休憩中、事務所のテーブルに座ってため息をついた。



可愛かったなぁ…あの笑顔…

また見たいなぁ…



いつの間にか俺の頭の中は毎日あの人でいっぱいで、最近の例の悩みなんてとうに忘れていた。

帰り道も遠回りになるのに、わざとその店の前を通る。

藤原さんは裏方の仕事が多いのか、表に出てきている日が少ない気がする。


音合わせを終えて事務所を出て、今日も望みを胸に秘めて何食わぬ顔で店の前に近づく。


今日は遅くなったし、店もそろそろ閉まる時間帯…


「あ…っ…」

「…っ?あ、日晴さん」





神様、貴方は本当にいらっしゃったのですね。


心の中で天に感謝の言葉を伝えた。


丁度店の看板をしまおうと、彼女が外に出てきたのだ。


「お久しぶりです!今帰りですか?」

「あぁ……と、はい。たまたま…」


ヤバい、顔が赤くなってる事がバレる。

確信的にこの道を選んで歩いてたなんて知られると恥ずかしいし、あえて偶然を装わなければ。


「そうなんですね。遅くまでお疲れ様です!」

「あ、…はい。藤原さんは?」

「僕も今日はもう上がりですよ。お店も閉店ですし」

「そ、そうっすか」




これは一世一代の…一緒に帰れるチャンスでは!?

うっ…自分から女性を誘うなんて、過去に経験もないしとてつもなく恥ずかしいが…

彼女だって着替えたり準備もあるだろうし、そもそも他の人と一緒に帰る約束をしている可能性だって…




「…あの…もしよかったら、途中まで一緒に帰りませんか?」

「へっ!?////」


自分が言うか言うまいか考えていた台詞。

それは目の前の彼女の口から先に出てきた。


「あっ………すみません、僕また芸能人の方にっ…。えっと…もし何も予定がなく、ご迷惑でなけ」



「帰ります!!!!!!!!」

「っ…!?」


あ、ヤバ。


思わず大きな声を出してしまった。

彼女もびっくりしている。


「あ、ごめんなさいっす、つい…」

「いえ、えっ…と…。いいんですか?」

「はい!藤原さんの帰る準備が出来るまでここで待ってます!」

「……っ。わかりました、すぐに準備してきますね」



そう言って頭を下げ、彼女は店内へ戻った。




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