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「いらっしゃいませ!日晴さん!」
「………っす」
あれから数日。
俺はほぼ週に2回。この花屋へ通うようになっていた。
多分今はマネージャーより俺の方が来店している。
頻繁に来るようになったためか、藤原さんも裏ではなく表で仕事をして俺を出迎えてくれる日が多くなった。
「本日はどうされますか?」
「えっと……今日は玄関に飾る花を…」
「承知しました!」
何故か最近俺が来店すると、他スタッフの気配がなくなっている。
気を使われているのか…少し恥ずかしい。
藤原さんは俺に似合ったような明るい綺麗な花を選んでくれる。
「あと一種類くらいあった方がいいですね。日晴さん、何か自分の好きな花を選んでください」
「えっ?俺がっすか?…そんな俺、センスないし」
「自分のお部屋に飾るお花ですよ。一種類くらい自分の大好きな花がないと寂しいじゃないですか」
「……っ」
確かにそうだなと心の中で納得して、周りの綺麗な花々を見渡してみる。
どれも魅力的だが…正直どういう花なのかよくわから……っ…
ふと1つのよく見知った花が目に止まり、近づいてみた。
「こ、これがいいっす///」
日晴が指さしたのは、他の花よりは少し大きめの向日葵だ。
「向日葵ですか!いいですね!」
「俺…花って言ったらヒマワリとチューリップくらいしか知らないので…」
「いいんですよ。この花、日晴さんにとても似合ってると思います!」
商品カゴの向日葵を一本取り、茎を切ってアレンジメントの中に入れて形を整えていく。
まるでこの花が主役のように目立つ。
「出来ました!いかがですか?」
「はっ…はい!凄く良い感じっす!」
「ありがとうございます。ではお会計をさせて頂きますね」
いつものように会計を済ませ、商品を受け取って店の前まで進む。
今日はまだ明るい時間だし、さすがに一緒に帰ろうと誘うのは無理があるか…
店を出て、見送りに来てくれた彼女と向かい合った。
「いつもありがとうございます!」
「こちらこそ、藤原さんの花…いつも綺麗なんで」
「…っ…///」
「?」
なんだろう。なんとなく彼女の顔が赤い。
「あ、あの…えっと…」
「なんっすか?」
「僕の事…これから下の名前で呼んでくれませんか?」
思わぬ提案に瞳孔がガッと開く。
「す、すみません////友達やここのスタッフからはいつも『鈴』と呼ばれているので…藤原って呼ばれ慣れてなくて…。日晴さんからもそう呼ばれたら…嬉しいなと思って///」
「………」
「い、嫌だったらそのままでいいんで…」
「呼びます!!!!!!!!!」
何このデジャヴ感。
そう思ったのは声を出し切った後だった。
「えっ…いいんですか?」
「は、はい!むしろ…ずっとそう呼びたいと思っていました!!!」
言われた後の彼女の頬が赤い。
この火照り具合は、きっと俺も同じくらい赤い。
「…そ、うなんですか…よかったです。嫌だって言われたら…恥ずかしいと思って…」
「とんでもないっす!その…えっと…じゃぁ…
鈴ちゃんって呼んでもいいっすか?///
俺の事も君付けでいいので///」
「…っ////もちろんです!」
何このピュアな会話…
こんな少女漫画にありそうなベタベタなピュアな会話に…キュンキュンする男子高校生(18)
恥ずかしさと嬉しさで本当はニヤニヤ発狂したい所だが、グッと堪えて大した事のないように「じゃ…」と歩き出そうとする。
「ありがとうございました!日晴君!」
「………っ!!!!!!」
ふふふふふふ、振り向けない!!!!
絶対にこの顔を見られたらドンビキされる!!!
ここは…走らない程度の全力の速歩きだ!!!
「ふふ。競歩の選手かな」
この日俺は、まだ付き合えてもいないのに自室のカレンダーにハートマークを付けた。
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